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決戦はいつなりや
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1942年12月10日
アメリカ、サンディエゴ軍港沖。
アルガード・コーディエ少尉は、自らの新しい愛機を必死に操作して、上官との模擬空戦に臨んでいた。
が…。
「ガガガガガガ!!
またお前は死んだぞ。
30秒以上、真っ直ぐ飛ぶなと言ったろう!
だらしねえな!?」
ヘリントン少佐…?
いつの間に、後ろに…。
「あー、まぁ、F6Fは後ろの視界がゼロより狭い。
だからこそコイツ独特の機動を活かせ。
まぁ、日本のサムライパイロット達と一騎討ちしないことが1番だがな。
わかったら編隊に戻ってそちらの訓練に戻れッ!」
「アイ・サー!」
はぁ…俺はこの戦争を生き延びられるのだろうか?
母艦に戻ったらアイス食べよう。
アメリカ、新生第38任務部隊
旗艦 エセックス
アメリカの総反攻作戦の切り札の一つ、エセックス級空母のネームシップであった。
そのブリッジ。
「どうだヘリントン、新人達の仕上がりは。」
「なかなか難しいですね。
基本日本のゼロシリーズとは一騎討ちさせるべきではないのは当然なので、レーダー誘導と数的優位を活かした編隊空戦を叩きこむしかないでしょう」
猛将ハルゼー提督の問いに、ヘリントン少佐はそう答える。
「認めたくはないが仕方ないね。
まぁ、どこをどう攻め、大規模空母決戦を行うかにもよるが。
俺はマリアナ諸島を一気に衝いて押さえれば勝手にジャップは自壊するとニミッツ提督に進言してんだがな。
キング(作戦部長)や他の中央の連中がどう決めるかだ。
…にしても、さっきの着艦は危なっかしかったな。おっ次が来たか。」
!!?
そのF6Fは主脚を出して進入してきたが…。
「いかん!角度がアーッ!」
ヘリントンが叫ぶ。
いかん、パイロットは頭も体も硬直している。
通信も信号員の誘導も…。
耳障りな金属音。
あちゃあ、と言う感じでハルゼーは右手で顔を覆い、ヘリントンは、救いは無いんですか?と天を仰ぐ。
…だが、当のF6Fヘルキャットは、結局脚部が折れただけで、機体構造に破損は無く、パイロットもほぼ無傷のようだ。
それが、「グラマン鉄鋼所」と異名を取るこの機体の強靭さを見せつけた格好である。
しかし、ハルゼーはしかめっ面。
「あのスカは誰だ?」
「はっ、コーディエ少尉かと。」
「奴はペナルティとして一日10回の着艦訓練。あと1週間アイスクリーム禁止だ。」
一方、ウルシー泊地 日本連合艦隊集結地。
とは言え、3分の1の機動部隊や水雷戦隊は、陸軍の南方、インド方面作戦の援護、あるいは輸送船護衛に回っている。
だが、主力戦艦部隊に現在のところ出番は無い。
無論、総旗艦 大和にも。
例によって久保拓也の私室である。
(現在確認されている、米正規空母の数は計8ないし9隻。
年明けは2、3隻加算されてもおかしくはない。
恐らくは2000馬力級の新鋭戦闘機にフルに更新されていることは間違いあるまい。
問題は総攻撃の時期と場所だ。
普通の手順で行けば、ガダルカナル、ニューギニアだが。
体制が整えば一気に長躯わが懐…。
マリアナ諸島やなんならフィリピンを衝くこととて可能だからな…。
幸いなのは、どうやらパイロットや空母乗組員の育成に時間がかかっている事。
それら勘案すれば、敵本格反攻は来春にずれ込む可能性はある。
そうすれば新鋭空母もう一隻。
更には「ドイツからの積み荷」を完全にモノにする時間が…。
ただ、長引けば良いと言うモノではない。
当然陸海空における敵戦力の強化。
そしてこちらの輸送路破壊、資源消耗…。
新たに源田閣下にお願いして、新鋭哨戒機「東海」を重点量産機に加えてもらったが、はてさてどの程度…。)
その時、荒っぽいノックの音。
アメリカ、サンディエゴ軍港沖。
アルガード・コーディエ少尉は、自らの新しい愛機を必死に操作して、上官との模擬空戦に臨んでいた。
が…。
「ガガガガガガ!!
またお前は死んだぞ。
30秒以上、真っ直ぐ飛ぶなと言ったろう!
だらしねえな!?」
ヘリントン少佐…?
いつの間に、後ろに…。
「あー、まぁ、F6Fは後ろの視界がゼロより狭い。
だからこそコイツ独特の機動を活かせ。
まぁ、日本のサムライパイロット達と一騎討ちしないことが1番だがな。
わかったら編隊に戻ってそちらの訓練に戻れッ!」
「アイ・サー!」
はぁ…俺はこの戦争を生き延びられるのだろうか?
母艦に戻ったらアイス食べよう。
アメリカ、新生第38任務部隊
旗艦 エセックス
アメリカの総反攻作戦の切り札の一つ、エセックス級空母のネームシップであった。
そのブリッジ。
「どうだヘリントン、新人達の仕上がりは。」
「なかなか難しいですね。
基本日本のゼロシリーズとは一騎討ちさせるべきではないのは当然なので、レーダー誘導と数的優位を活かした編隊空戦を叩きこむしかないでしょう」
猛将ハルゼー提督の問いに、ヘリントン少佐はそう答える。
「認めたくはないが仕方ないね。
まぁ、どこをどう攻め、大規模空母決戦を行うかにもよるが。
俺はマリアナ諸島を一気に衝いて押さえれば勝手にジャップは自壊するとニミッツ提督に進言してんだがな。
キング(作戦部長)や他の中央の連中がどう決めるかだ。
…にしても、さっきの着艦は危なっかしかったな。おっ次が来たか。」
!!?
そのF6Fは主脚を出して進入してきたが…。
「いかん!角度がアーッ!」
ヘリントンが叫ぶ。
いかん、パイロットは頭も体も硬直している。
通信も信号員の誘導も…。
耳障りな金属音。
あちゃあ、と言う感じでハルゼーは右手で顔を覆い、ヘリントンは、救いは無いんですか?と天を仰ぐ。
…だが、当のF6Fヘルキャットは、結局脚部が折れただけで、機体構造に破損は無く、パイロットもほぼ無傷のようだ。
それが、「グラマン鉄鋼所」と異名を取るこの機体の強靭さを見せつけた格好である。
しかし、ハルゼーはしかめっ面。
「あのスカは誰だ?」
「はっ、コーディエ少尉かと。」
「奴はペナルティとして一日10回の着艦訓練。あと1週間アイスクリーム禁止だ。」
一方、ウルシー泊地 日本連合艦隊集結地。
とは言え、3分の1の機動部隊や水雷戦隊は、陸軍の南方、インド方面作戦の援護、あるいは輸送船護衛に回っている。
だが、主力戦艦部隊に現在のところ出番は無い。
無論、総旗艦 大和にも。
例によって久保拓也の私室である。
(現在確認されている、米正規空母の数は計8ないし9隻。
年明けは2、3隻加算されてもおかしくはない。
恐らくは2000馬力級の新鋭戦闘機にフルに更新されていることは間違いあるまい。
問題は総攻撃の時期と場所だ。
普通の手順で行けば、ガダルカナル、ニューギニアだが。
体制が整えば一気に長躯わが懐…。
マリアナ諸島やなんならフィリピンを衝くこととて可能だからな…。
幸いなのは、どうやらパイロットや空母乗組員の育成に時間がかかっている事。
それら勘案すれば、敵本格反攻は来春にずれ込む可能性はある。
そうすれば新鋭空母もう一隻。
更には「ドイツからの積み荷」を完全にモノにする時間が…。
ただ、長引けば良いと言うモノではない。
当然陸海空における敵戦力の強化。
そしてこちらの輸送路破壊、資源消耗…。
新たに源田閣下にお願いして、新鋭哨戒機「東海」を重点量産機に加えてもらったが、はてさてどの程度…。)
その時、荒っぽいノックの音。
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