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兆候
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ガダルカナル
仮称ラバウル基地南方空域。
「ロッテ(4機体制)編隊を崩すな!
今日の課題は各機の連携の向上だ!」
カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルグ大尉は、大幅にクリアになった隊内無線電話をフル活用し、オーストラリア方面からの「定期便」を迎え撃つ。
米英混成、数的には常に向こうが優位。
Pー51初期型等、質的にも侮れない。
そう言った敵が、日々襲来する中、カリンは全隊員の半分を占めるジャク…などと言ってもほとんど彼女より歳上だが…を実戦をもって教育していた。
他のベテランパイロット達も同様である。
半分の台南空や第一航空艦隊のベテラン達は、内地に一旦引き上げ、新米達を実戦に出られる水準にまで鍛えるという手順だ。
まぁ、現在のところ訓練にまつわる機材も燃料も潤沢であるので、ここに来る頃には皆一定の空戦機動や、編隊飛行はこなせるようにはなっている…
とは言え、当然、実戦でなくば身につかないものがある。
実際、頭に血が上り、編隊を離れ敵機に食いつこうとした1機が、Pー51C 数機にたかられ火だるまとなる。
「バカが…。」
形の良い眉を歪めるカリン。
「全機編隊を崩すな!緩降下で加速すれば敵戦は振り切れる、無視しろ!
2時方向のBー17群を狩る!」
距離350を切った!
「撃てっ!」
Bー17の苛烈な防御砲火をも上回る零式機関砲のいわば戦闘機版弾幕射撃。
胴体、主翼を撃ち抜かれて次々と墜ち、あるいは落伍していくBー17の群。
すっごい貫通力!
同じ20ミリでもモノが違う!
我がドイツのマウザーやラインメタル製にも匹敵…
!!?
しまった、太陽を背に…被られた。
スピットファイアの一梯団。
「やむを得ん、全機散開!」
私1人なら単機で百機の相手でもあしらえるが、あいつらは…。
ジャクの方に向かうスピット。
それがいきなり翼やエンジンに強かな一撃を喰らう。
「大尉、すまん、一部見逃してた!」
笹井醇一少佐。総隊長であった。
「ありがとう御座います!」
「お互いもう一息だ、全機墜とすつもりでいくぞ!」
「了解!」
この日も零戦54型の群れは、圧倒的なキルレシオを見せつけることになる。
(後はレーダーよね。今の日本人のレベルだと、ざっくりどの方向から敵が来たか位しかわかんないから…。
拓也の言う、『決戦』までに間に合えば…。)
樺太沖。
潜水艦イ86の甲板上に、久保拓也はいた。
もう少しだ…。
「後洋上で止まっていられるのも15分が…。」
潜水艦の艦長の言を、片手を上げて制する。
あれだ。
巨大な3機の影。翼には日の丸。
特殊長距離仕様で、北極海ルートでドイツに飛ばした二式大艇3機が、完璧に任務をこなして会合地点に辿り着いたのである!
よくぞ…やってくれた。
着水した3機から、ドイツからの積み荷を特設ハッチから入れる。
因みに…これだけの数の二式大艇が太平洋全域で大挙活躍出来るのも、製造元の川西飛行機が、試作に入っていた某水上戦闘機の開発を中止し、一部中島飛行機の工場も使い、大艇の量産にリソースを極力集中させたからであった。
もう3機の燃料はカラに近い。乗員も収容。
大艇は一旦放置、機体は余裕があれば回収する。勿体ないことになるやも知れんが…。
しかし、それ以上に価値のある、いくつかの「現物」を手に入れた!
決戦に、最低一種は間に合わせる。
「急速潜航ーっ!!」
仮称ラバウル基地南方空域。
「ロッテ(4機体制)編隊を崩すな!
今日の課題は各機の連携の向上だ!」
カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルグ大尉は、大幅にクリアになった隊内無線電話をフル活用し、オーストラリア方面からの「定期便」を迎え撃つ。
米英混成、数的には常に向こうが優位。
Pー51初期型等、質的にも侮れない。
そう言った敵が、日々襲来する中、カリンは全隊員の半分を占めるジャク…などと言ってもほとんど彼女より歳上だが…を実戦をもって教育していた。
他のベテランパイロット達も同様である。
半分の台南空や第一航空艦隊のベテラン達は、内地に一旦引き上げ、新米達を実戦に出られる水準にまで鍛えるという手順だ。
まぁ、現在のところ訓練にまつわる機材も燃料も潤沢であるので、ここに来る頃には皆一定の空戦機動や、編隊飛行はこなせるようにはなっている…
とは言え、当然、実戦でなくば身につかないものがある。
実際、頭に血が上り、編隊を離れ敵機に食いつこうとした1機が、Pー51C 数機にたかられ火だるまとなる。
「バカが…。」
形の良い眉を歪めるカリン。
「全機編隊を崩すな!緩降下で加速すれば敵戦は振り切れる、無視しろ!
2時方向のBー17群を狩る!」
距離350を切った!
「撃てっ!」
Bー17の苛烈な防御砲火をも上回る零式機関砲のいわば戦闘機版弾幕射撃。
胴体、主翼を撃ち抜かれて次々と墜ち、あるいは落伍していくBー17の群。
すっごい貫通力!
同じ20ミリでもモノが違う!
我がドイツのマウザーやラインメタル製にも匹敵…
!!?
しまった、太陽を背に…被られた。
スピットファイアの一梯団。
「やむを得ん、全機散開!」
私1人なら単機で百機の相手でもあしらえるが、あいつらは…。
ジャクの方に向かうスピット。
それがいきなり翼やエンジンに強かな一撃を喰らう。
「大尉、すまん、一部見逃してた!」
笹井醇一少佐。総隊長であった。
「ありがとう御座います!」
「お互いもう一息だ、全機墜とすつもりでいくぞ!」
「了解!」
この日も零戦54型の群れは、圧倒的なキルレシオを見せつけることになる。
(後はレーダーよね。今の日本人のレベルだと、ざっくりどの方向から敵が来たか位しかわかんないから…。
拓也の言う、『決戦』までに間に合えば…。)
樺太沖。
潜水艦イ86の甲板上に、久保拓也はいた。
もう少しだ…。
「後洋上で止まっていられるのも15分が…。」
潜水艦の艦長の言を、片手を上げて制する。
あれだ。
巨大な3機の影。翼には日の丸。
特殊長距離仕様で、北極海ルートでドイツに飛ばした二式大艇3機が、完璧に任務をこなして会合地点に辿り着いたのである!
よくぞ…やってくれた。
着水した3機から、ドイツからの積み荷を特設ハッチから入れる。
因みに…これだけの数の二式大艇が太平洋全域で大挙活躍出来るのも、製造元の川西飛行機が、試作に入っていた某水上戦闘機の開発を中止し、一部中島飛行機の工場も使い、大艇の量産にリソースを極力集中させたからであった。
もう3機の燃料はカラに近い。乗員も収容。
大艇は一旦放置、機体は余裕があれば回収する。勿体ないことになるやも知れんが…。
しかし、それ以上に価値のある、いくつかの「現物」を手に入れた!
決戦に、最低一種は間に合わせる。
「急速潜航ーっ!!」
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