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瞬間、交わり合って。
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同日、ラバウル基地隊舎内に当てがわれた部屋にて…。
太平洋全域の地図を机に広げ、腕組みをする久保拓也。
今は9月。
情報を総合すると、早ければ11月頭には、アメリカは巨大空母を基幹とした機動部隊を押し出してくる。
少なくとも一気に5隻。いや、10を超えても驚かない。
それだけの底力がある国だ。
しかも英国に航空戦力を増派し、ソ連への支援を再開する一方で、だ。
(ただ、アフリカ戦線の支援は間に合わず、ロンメル将軍のドイツアフリカ軍団に要衝・エルアライメンを抜かれてしまったのであるが。)
対する我が方は…。
大和級戦艦2番艦、武蔵が就役。
正規空母としては、日本初の装甲空母
大鳳、旭鳳が来月正式に就役する。
これで第一航空艦隊、正規空母7隻体制か…。
おそらくは次の空母決戦はこの駒で行くしかないか…。
しかも、大和級三番艦の空母変更案も軍令部に却下されてしまった。
幸いなのは6月の南太平洋沖海戦で、アメリカ新鋭戦艦ノースカロライナ、サウスダコタを長門級2隻、金剛級4隻で敵巡洋艦クラス5隻共々屠ったことであるか。
「大和を出せとは言いませんが、ここは兵力を逐次投入せず、敵に倍する戦艦、水雷戦隊で臨むべきです。」
個人的見解として、山本五十六長官に進言したのが功を奏した。
「元のラバウル」方面からのガダルカナル島への長躯補給も、日本の誇る巨大飛行艇「二式大艇」を45機投入。
零戦21型の護衛の元、敵潜水艦が跋扈する海路を尻目に連日交代でピストン輸送していた。
後年アメリカ側に「東京特急」と呼ばれることとなる。
…ただ、今は現場レベルの工夫敢闘でなんとかなってはいるとは言っても、我が帝国陸海軍の補給線全体が限界を超えているのは明らかだ。
手元で得られる情報だけでも、ここ3ヶ月の輸送船消耗率が4割に迫っていた。
海上護衛総隊に水雷戦隊を貸し出してもこれである…。
想像以上に、敵海軍のガトー級潜水艦が多数送り込まれ、各方面で活発に動いている。
恐らく、一年経たずして、初手の真珠湾で得た優位は失われ、後は総力戦研究所のシナリオ通りになるだろう。
すなわち、日本は動脈を絶たれ、衰弱した上に莫大な物量に押され叩きのめされ、最終的には本土空襲の嵐。
昭和20年春から夏頃には、我が帝国は焦土となり…詰みである。
その流れに呑み込まれるはるか前に、戦略的、戦術的、政治的に決定的な勝利を収め、講和に持っていかねばならない。
だが…どうやって…?
コトン。
よく冷えたサイダーが、唐突に手元に置かれる。
振り向くと…ホルテンブルグ大尉…カリンであった。
「あ、カリン、ありがとう。」
フンと鼻を鳴らされる。
「あんたさ、ちゃんと寝てる?」
「ん…まぁ毎日3~4時間くらいは。」
「明らかに疲れてるでしょ。疲れてることが分かんないくらい。
倒れられたら困るのよ。
いや、私はどうでもいいけど、山本長官が事あるごとに頼るくらい、この国の海軍にとってはあんたは重要みたいだから。」
「ご、ご心配ありがとう、もう少ししたら…。」
次の瞬間、視界が半ば塞がる。
カリンがいきなり抱きつき、唇を久保のそれに重ねる。
反射的に久保も抱き返してしまった。
不思議だ。
何か穏やかな気持ちに…。
そして、軍人として鍛え抜きつつも女性的な柔らかさも備えたカリンの肢体に、久保はもうどれだけ忘れていたかも分からない衝動を放つことになる。
太平洋全域の地図を机に広げ、腕組みをする久保拓也。
今は9月。
情報を総合すると、早ければ11月頭には、アメリカは巨大空母を基幹とした機動部隊を押し出してくる。
少なくとも一気に5隻。いや、10を超えても驚かない。
それだけの底力がある国だ。
しかも英国に航空戦力を増派し、ソ連への支援を再開する一方で、だ。
(ただ、アフリカ戦線の支援は間に合わず、ロンメル将軍のドイツアフリカ軍団に要衝・エルアライメンを抜かれてしまったのであるが。)
対する我が方は…。
大和級戦艦2番艦、武蔵が就役。
正規空母としては、日本初の装甲空母
大鳳、旭鳳が来月正式に就役する。
これで第一航空艦隊、正規空母7隻体制か…。
おそらくは次の空母決戦はこの駒で行くしかないか…。
しかも、大和級三番艦の空母変更案も軍令部に却下されてしまった。
幸いなのは6月の南太平洋沖海戦で、アメリカ新鋭戦艦ノースカロライナ、サウスダコタを長門級2隻、金剛級4隻で敵巡洋艦クラス5隻共々屠ったことであるか。
「大和を出せとは言いませんが、ここは兵力を逐次投入せず、敵に倍する戦艦、水雷戦隊で臨むべきです。」
個人的見解として、山本五十六長官に進言したのが功を奏した。
「元のラバウル」方面からのガダルカナル島への長躯補給も、日本の誇る巨大飛行艇「二式大艇」を45機投入。
零戦21型の護衛の元、敵潜水艦が跋扈する海路を尻目に連日交代でピストン輸送していた。
後年アメリカ側に「東京特急」と呼ばれることとなる。
…ただ、今は現場レベルの工夫敢闘でなんとかなってはいるとは言っても、我が帝国陸海軍の補給線全体が限界を超えているのは明らかだ。
手元で得られる情報だけでも、ここ3ヶ月の輸送船消耗率が4割に迫っていた。
海上護衛総隊に水雷戦隊を貸し出してもこれである…。
想像以上に、敵海軍のガトー級潜水艦が多数送り込まれ、各方面で活発に動いている。
恐らく、一年経たずして、初手の真珠湾で得た優位は失われ、後は総力戦研究所のシナリオ通りになるだろう。
すなわち、日本は動脈を絶たれ、衰弱した上に莫大な物量に押され叩きのめされ、最終的には本土空襲の嵐。
昭和20年春から夏頃には、我が帝国は焦土となり…詰みである。
その流れに呑み込まれるはるか前に、戦略的、戦術的、政治的に決定的な勝利を収め、講和に持っていかねばならない。
だが…どうやって…?
コトン。
よく冷えたサイダーが、唐突に手元に置かれる。
振り向くと…ホルテンブルグ大尉…カリンであった。
「あ、カリン、ありがとう。」
フンと鼻を鳴らされる。
「あんたさ、ちゃんと寝てる?」
「ん…まぁ毎日3~4時間くらいは。」
「明らかに疲れてるでしょ。疲れてることが分かんないくらい。
倒れられたら困るのよ。
いや、私はどうでもいいけど、山本長官が事あるごとに頼るくらい、この国の海軍にとってはあんたは重要みたいだから。」
「ご、ご心配ありがとう、もう少ししたら…。」
次の瞬間、視界が半ば塞がる。
カリンがいきなり抱きつき、唇を久保のそれに重ねる。
反射的に久保も抱き返してしまった。
不思議だ。
何か穏やかな気持ちに…。
そして、軍人として鍛え抜きつつも女性的な柔らかさも備えたカリンの肢体に、久保はもうどれだけ忘れていたかも分からない衝動を放つことになる。
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