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追撃と反撃と
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「確かに貴方から頂いた資料を精査しても、私は母国に帰るなり粛清されることとなる。
いかに母国の為に命がけで諜報活動しても。」
「男」は、戦艦大和の久保拓也海軍大佐の私室でコーヒーを啜る。
「おっしゃる通りです。さらに言えば、現在のソビエト連邦の指導体制では、正直あなたやこの国のあなたの同志の望む理想とは程遠い国となります。あなた方の思想は今敢えて全否定はしませんが。」
「うむ…。」
どこか哀しげな顔で、男は頷いた。
「ですが、ナチスドイツもまた、まあここだけの話ですが、世界を牛耳るべき勢力ではない。今回は彼らを利する工作をしましたが、どの道彼らはソ連本土のどこかで息切れし、崩壊します。
何故こうしたかというと、要するに米国の強大なポテンシャルが最速最短で日本一国に的確に向かぬよう、彼らの国家戦略を混乱させるためです。」
もっと言えばナチスと、米英ソが極限まで潰し合う展開にしたい。という本音は久保は口にしなかったが。
「さて今後の、あなたの日本における同志と、あなた自身の処遇でありますが。」
男は姿勢を正す。
「日本の同志…尾崎氏を始めとする方々は、わが海軍の方で事実上某所に軟禁させて頂きます。
やはり『日本軍』としては放置する訳には参りませんので。
ただ同時に保護であるともご理解ください。
特高警察に捕まれば最悪秘密裏に殺される可能性がありますので。
あなたの内縁の奥様に関しても、同様に…。」
「…わかった、致し方ない。」
「そして貴方ご自身に関しては、我が国の為、いや大袈裟に言えば、世界人民の将来の為に、一仕事して頂きたい。」
「…アメリカか。」
「はい。2日後に、我が海軍の潜水艦がドイツに向け技術交換の為に出港します。
それに乗ってもらい、帰路イギリス近海で貴方をリリースします。
アメリカに亡命を希望する、反ナチス運動家、リヒャルト・ゾルゲとして。」
一方、アメリカ・サンディエゴ海軍工廠
眼前には進水したばかりの巨大なる…
正規空母。
「こいつは最高にクールだぜ!
なあ、レイ!」
「猛牛」ハルゼーは盟友レイモンド・スプルーアンスの肩を叩く。
スプルーアンスも深々と頷く。
「ああ、これが一気に6隻、10月には就役…やはり合衆国は偉大だ!」
「おかわりもあるぞ、来春にはプラス4隻だ。俺とお前で、こいつを駆り立てて、ジャップを木端微塵にしてやろうぜ!」
スプルーアンスが何か言いかけた時、上空を高速で通過する戦闘機の編隊。
「おう、あれもだ。
グラマンF6Fヘルキャット。
あの忌々しいゼロの倍のパワー。
火力装甲もダンチ。当然、こいつの艦載機として大量配備される。」
「なるほど、あれもまた、見るからに頼もしいな。」
現在日本軍はガダルカナルとか言う聞いた事もない南方の島を制圧。
我が方の新造戦艦を基幹とした艦隊が動いているが、まだ完全な優位は築けず、奪回には程遠い。
オーストラリア政府もかなりプレッシャーを感じ、日本との単独講和を唱える声すら上がっていると聞くが…。
しかし、これだけの戦力を危機に際し迅速に備えられる我が国が負ける訳がない。
ハルゼーもスプルーアンスも、信仰に近い想いを抱いていた。
いかに母国の為に命がけで諜報活動しても。」
「男」は、戦艦大和の久保拓也海軍大佐の私室でコーヒーを啜る。
「おっしゃる通りです。さらに言えば、現在のソビエト連邦の指導体制では、正直あなたやこの国のあなたの同志の望む理想とは程遠い国となります。あなた方の思想は今敢えて全否定はしませんが。」
「うむ…。」
どこか哀しげな顔で、男は頷いた。
「ですが、ナチスドイツもまた、まあここだけの話ですが、世界を牛耳るべき勢力ではない。今回は彼らを利する工作をしましたが、どの道彼らはソ連本土のどこかで息切れし、崩壊します。
何故こうしたかというと、要するに米国の強大なポテンシャルが最速最短で日本一国に的確に向かぬよう、彼らの国家戦略を混乱させるためです。」
もっと言えばナチスと、米英ソが極限まで潰し合う展開にしたい。という本音は久保は口にしなかったが。
「さて今後の、あなたの日本における同志と、あなた自身の処遇でありますが。」
男は姿勢を正す。
「日本の同志…尾崎氏を始めとする方々は、わが海軍の方で事実上某所に軟禁させて頂きます。
やはり『日本軍』としては放置する訳には参りませんので。
ただ同時に保護であるともご理解ください。
特高警察に捕まれば最悪秘密裏に殺される可能性がありますので。
あなたの内縁の奥様に関しても、同様に…。」
「…わかった、致し方ない。」
「そして貴方ご自身に関しては、我が国の為、いや大袈裟に言えば、世界人民の将来の為に、一仕事して頂きたい。」
「…アメリカか。」
「はい。2日後に、我が海軍の潜水艦がドイツに向け技術交換の為に出港します。
それに乗ってもらい、帰路イギリス近海で貴方をリリースします。
アメリカに亡命を希望する、反ナチス運動家、リヒャルト・ゾルゲとして。」
一方、アメリカ・サンディエゴ海軍工廠
眼前には進水したばかりの巨大なる…
正規空母。
「こいつは最高にクールだぜ!
なあ、レイ!」
「猛牛」ハルゼーは盟友レイモンド・スプルーアンスの肩を叩く。
スプルーアンスも深々と頷く。
「ああ、これが一気に6隻、10月には就役…やはり合衆国は偉大だ!」
「おかわりもあるぞ、来春にはプラス4隻だ。俺とお前で、こいつを駆り立てて、ジャップを木端微塵にしてやろうぜ!」
スプルーアンスが何か言いかけた時、上空を高速で通過する戦闘機の編隊。
「おう、あれもだ。
グラマンF6Fヘルキャット。
あの忌々しいゼロの倍のパワー。
火力装甲もダンチ。当然、こいつの艦載機として大量配備される。」
「なるほど、あれもまた、見るからに頼もしいな。」
現在日本軍はガダルカナルとか言う聞いた事もない南方の島を制圧。
我が方の新造戦艦を基幹とした艦隊が動いているが、まだ完全な優位は築けず、奪回には程遠い。
オーストラリア政府もかなりプレッシャーを感じ、日本との単独講和を唱える声すら上がっていると聞くが…。
しかし、これだけの戦力を危機に際し迅速に備えられる我が国が負ける訳がない。
ハルゼーもスプルーアンスも、信仰に近い想いを抱いていた。
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