新訳 零戦戦記 選ばれしセカイ

俊也

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アメリカ海軍最悪の日

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ハワイ、アメリカ太平洋艦隊司令部。
フレッチャー、スプルーアンス率いる両任務部隊とも、虎の子の正規空母3隻撃沈、1隻大破…。
司令長官ニミッツは机に突っ伏したくなるのを辛うじて堪える。
一筋の光明は、敵正規空母1隻を撃沈したことであるが…。
しかし、どの道敵にミッドウェイを奪われることは阻止できまい…。
ところが…。

「閣下、日本の動きが妙です。」
情報参謀の1人からの報告。
「どうしたね?」
「敵戦艦5ないし6隻による艦砲射撃が、ミッドウェイ基地施設を執拗に破壊、それは先刻のご報告通りですが…。
それきり、日本の全艦隊が反転し、こちらの勢力圏を離脱しつつあるのです。」
「何!?
上陸部隊を乗せた輸送船もか…。」
ニミッツは腕を組む。
「はっ。こうなると、上陸部隊を装った一種のダミーかと考えざるを得ません。」
「ううむ。」

敵はそもそも、ミッドウェイ占領など眼中になく、基地の無力化…でもなく、わが残存空母機動部隊の誘致撃滅を第一に考えていたのではないか!?
となると、AFで真水不足云々のやりとりも…すべて彼等は読み切った上で…。
罠にハメたつもりが、ハメられていた!?
こちらの太平洋の残存機動航空戦力を誘致撃滅する為の…全ては…。

クッ!!
デスクを殴りつけたい衝動を、辛うじて堪える。
あるいは、スプルーアンスの進言通りにしていたのが良かったのかもしれない。
敵機動部隊の殊に戦闘機隊の戦力を考えれば、一斉攻撃でなく、犠牲は出るが波状攻撃を長時間かけて、索敵、通信、相互連携に劣る敵の防空の綻びにつけ込むべきでは…。

と言う…。
正直自分も迷ったが、ミッドウェイ島基地への増派が思ったより多かったのと、フレッチャーに加え海軍中央からのプッシュもあり、一斉攻撃案を取ってしまった…。
いずれにせよ、ホワイトハウスも含めた本国には、ありのままを報告するしかあるまい。

今後の戦略は、各島嶼の基地航空隊の拠点防御。及びそれへの絶え間ないバックアップ。
そして唯一強化されつつある潜水艦部隊による教科書通りの補給線破壊で、じわじわと日本の足腰を弱らせるしかない。
緒戦の大勝利に浮かれ、各方面に急進撃を重ねる日本には、必ず破綻が訪れる。
その時に回復強化された戦力で猛反撃出来るよう、今は耐え抜くしかない。

世に言う、ミッドウェイ海戦の顛末は、日本ではいわばハレハレで
「我が海の荒鷲、空前の完勝」
アメリカ側では「アメリカ海軍史上最悪の日」と報じた。
実際、太平洋戦線に稼働可能なアメリカ正規空母が、一隻も居なくなってしまったのであるから事実である。

(とは言え、到底埋め合わせには足りないものの、ビッグEことエンタープライズの奇跡の生還。
日本正規空母の初撃沈。これらも全力でヒロイックに喧伝された)

そして…ルーズベルト、チャーチルの耳に、5月22日更なる凶報が入る事となる。


ナチスドイツ ソ連首都モスクワを制圧…
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