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猛牛、襲来
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昭和17年3月30日
ウェーキ島沖。
「いいか!キルザジャップだ!奴等にあの悪夢の100倍返しをする。
その第一歩と思えッ!」
空母エンタープライズの艦上で、ウィリアム・F・ハルゼー提督は直接パイロット達を叱咤する。
「Sir Yes Sir!!」
パイロット達の士気も高い。
真珠湾の陸軍航空隊との違いを見せてやる。
その想いはハルゼーも一緒だった。
戦略目標は勿論、ウェーキ島の敵航空兵力撃滅。
無論政治家どもの、アメリカ内外への日本に対する反撃アピールという目標もあろう。
そして、今回動くはエンタープライズとヨークタウン2隻とは言え、艦隊に残す直掩戦闘機を25機にまで削り、作戦機は2隻合わせて175機の戦爆連合部隊である。
情報を総合すれば、敵基地の部隊は数十機止まり。だが決して気を抜くなと念を押す。
「よし、最初の猿肉解体ショーだ、気合い入れて行けい!」
次々と、復讐の炎を纏い、アメリカ海軍の鷲達は飛びたって往く。
よし。
そもそも我が機動部隊の接近自体、ジャップに察知された形跡も無い。
ささやかだが先ずは、奇襲で返してやる。
いずれは貴様らの本土の母港を、紅蓮に染め上げてやろうぞ。
ハルゼーは獰猛な笑みを浮かべた。
一方…日本海軍ウェーキ島北東沖、120キロ地点。
居た、ハルゼーが動いたか!
索敵していたのは、なんと台南空の坂井三郎一飛曹。
精鋭パイロットの中でも頭抜けた視力を買われて「この任務」についたのである。
(こともあろうに、戦闘機である零戦を、偵察機に使うとはな。しかもこの俺を…。)
もちろん、敵襲来の一報と詳細はきっちりと打電する。
まぁ、こいつの航続力を考えれば、最低限の通信能力が有れば偵察哨戒に使うというのもアリか…。
そう思いつつ、増槽を落とし、長居は無用とばかり全速力で離脱する坂井機。
後はとにかく、待機している50機強の仲間に託すしかない。
そして…。
「いいアングルだな…。」
戦闘機隊隊長、ビリーズ・ヘリントン大尉は呟く。
全機高度を3000mまで下げている。
そして、たった今、総隊長から攻撃命令。
それに呼応して、艦上爆撃機SBDドーントレスの群れが、敵基地に殺到する。
恐らくは奇襲成功だが…。
「ヘイ、護衛戦闘機隊は全周警戒…。」
次の瞬間、無線から悲鳴まじりの声。
「上だ!敵戦闘機隊、かぶってきます!!」
「ああん!?」
台南空と第一航空艦隊からより抜きの腕利きを集めた、今回の邀撃作戦限りの特別編成の零戦52機が、一気にF4Fの群れに襲いかかる。
いや、正確には半分弱はドーントレスの部隊に向かう。
次々と翼を、コクピットを砕かれ墜ちていく僚機達。
クッ!奴らが20ミリクラスの砲を持っているという噂はマジだったか!
「出来るだけ散開しつつ、各機敵をなるべく引きつけろ!爆撃機隊を守れ!」
しかし、各機は日本の新鋭機に、それぞれ格闘戦に持ち込まれ、バタバタと墜とされていく。
しかも、ドーントレス隊も。
何ということだ。
数以外では全てにおいて圧倒されている。
機体性能も、パイロットの腕も…。
ヘリントン程のベテランでも、こうなっては逃げるのが精一杯。
が、一機に張り付かれる。
喰われる…!
翼に大穴!
しかし燃料タンク等の重要部分はかわした…
畜生…。
無我夢中で、雲の中に逃げ込む。
あのパイロット、中々の腕だな。
岩本徹之飛曹長は内心で呟きつつ、深追いを避け反転した。
…最終的にアメリカ側航空隊は、152機を失うという甚大なる被害を被る。
日本側の損害わずか2機。
ハルゼーはその報にマグカップを叩きつけて怒り狂ったが、もはやどうしようもない。
機体以上に貴重なパイロット達の未帰還があまりにも…。
脱出した連中がいれば救出に向かおうとも思ったが、味方機収容次第直ちに反転離脱せよと言う、新たなる太平洋艦隊司令長官 チェスター・ニミッツ提督の厳命には従わざるを得ない。
ジャップめ、この借りはいずれ千倍に…。
ウェーキ島沖。
「いいか!キルザジャップだ!奴等にあの悪夢の100倍返しをする。
その第一歩と思えッ!」
空母エンタープライズの艦上で、ウィリアム・F・ハルゼー提督は直接パイロット達を叱咤する。
「Sir Yes Sir!!」
パイロット達の士気も高い。
真珠湾の陸軍航空隊との違いを見せてやる。
その想いはハルゼーも一緒だった。
戦略目標は勿論、ウェーキ島の敵航空兵力撃滅。
無論政治家どもの、アメリカ内外への日本に対する反撃アピールという目標もあろう。
そして、今回動くはエンタープライズとヨークタウン2隻とは言え、艦隊に残す直掩戦闘機を25機にまで削り、作戦機は2隻合わせて175機の戦爆連合部隊である。
情報を総合すれば、敵基地の部隊は数十機止まり。だが決して気を抜くなと念を押す。
「よし、最初の猿肉解体ショーだ、気合い入れて行けい!」
次々と、復讐の炎を纏い、アメリカ海軍の鷲達は飛びたって往く。
よし。
そもそも我が機動部隊の接近自体、ジャップに察知された形跡も無い。
ささやかだが先ずは、奇襲で返してやる。
いずれは貴様らの本土の母港を、紅蓮に染め上げてやろうぞ。
ハルゼーは獰猛な笑みを浮かべた。
一方…日本海軍ウェーキ島北東沖、120キロ地点。
居た、ハルゼーが動いたか!
索敵していたのは、なんと台南空の坂井三郎一飛曹。
精鋭パイロットの中でも頭抜けた視力を買われて「この任務」についたのである。
(こともあろうに、戦闘機である零戦を、偵察機に使うとはな。しかもこの俺を…。)
もちろん、敵襲来の一報と詳細はきっちりと打電する。
まぁ、こいつの航続力を考えれば、最低限の通信能力が有れば偵察哨戒に使うというのもアリか…。
そう思いつつ、増槽を落とし、長居は無用とばかり全速力で離脱する坂井機。
後はとにかく、待機している50機強の仲間に託すしかない。
そして…。
「いいアングルだな…。」
戦闘機隊隊長、ビリーズ・ヘリントン大尉は呟く。
全機高度を3000mまで下げている。
そして、たった今、総隊長から攻撃命令。
それに呼応して、艦上爆撃機SBDドーントレスの群れが、敵基地に殺到する。
恐らくは奇襲成功だが…。
「ヘイ、護衛戦闘機隊は全周警戒…。」
次の瞬間、無線から悲鳴まじりの声。
「上だ!敵戦闘機隊、かぶってきます!!」
「ああん!?」
台南空と第一航空艦隊からより抜きの腕利きを集めた、今回の邀撃作戦限りの特別編成の零戦52機が、一気にF4Fの群れに襲いかかる。
いや、正確には半分弱はドーントレスの部隊に向かう。
次々と翼を、コクピットを砕かれ墜ちていく僚機達。
クッ!奴らが20ミリクラスの砲を持っているという噂はマジだったか!
「出来るだけ散開しつつ、各機敵をなるべく引きつけろ!爆撃機隊を守れ!」
しかし、各機は日本の新鋭機に、それぞれ格闘戦に持ち込まれ、バタバタと墜とされていく。
しかも、ドーントレス隊も。
何ということだ。
数以外では全てにおいて圧倒されている。
機体性能も、パイロットの腕も…。
ヘリントン程のベテランでも、こうなっては逃げるのが精一杯。
が、一機に張り付かれる。
喰われる…!
翼に大穴!
しかし燃料タンク等の重要部分はかわした…
畜生…。
無我夢中で、雲の中に逃げ込む。
あのパイロット、中々の腕だな。
岩本徹之飛曹長は内心で呟きつつ、深追いを避け反転した。
…最終的にアメリカ側航空隊は、152機を失うという甚大なる被害を被る。
日本側の損害わずか2機。
ハルゼーはその報にマグカップを叩きつけて怒り狂ったが、もはやどうしようもない。
機体以上に貴重なパイロット達の未帰還があまりにも…。
脱出した連中がいれば救出に向かおうとも思ったが、味方機収容次第直ちに反転離脱せよと言う、新たなる太平洋艦隊司令長官 チェスター・ニミッツ提督の厳命には従わざるを得ない。
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