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更なる進化を

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(さて、いち早く『次』を完成させねばならん訳だが。)
三菱重工の本社で、いくつかの概略図を書きながら、久保は時折り腕組みをして考えこむ。
(我が零戦は確かに向こうの予想を遥かに超えた優位を示した。
だが、そんな流れとは関係無く、アメリカはいずれ強力な…一気に性能を飛躍させた2000馬力級の戦闘機を大量投入してくる。
装甲、強度、火力速力全てで卓絶した本物の重戦闘機を、だ。)

対して我が方は…エンジンだな…やはり。
無論日本国とて開発を進めている、次世代の2000馬力級エンジンは。
我が?三菱も、中島飛行機さんも。
で、現在は中島さんの方が先んじている。
ハー45
のちに海軍では「誉」と呼ばれることになる野心的なコンセプトで作られし、エンジン。
現在の1000馬力級エンジンと殆ど変わらない直径の2000馬力級の逸品。
もし実用化にこぎつければ、単純に空気抵抗が抑えられる分、空力的には最強の戦闘機が完成する筈。
理論上は…。
それこそいずれは…。
だが、なにか引っかかるものが、発動機…エンジンに関しては門外漢だが…どうしても感じてしまう。
どの道今、それは当てにできない。
漏れ聞く話では、それを搭載した機の実戦投入は昭和19年にずれ込みかねない。
俺の新たなるゼロの、発動機は既に決め、軍部も了承している。
三菱で作られしそれは、仮称でA8と呼ばれている。
出力はハー45に劣るが、この方がより早く、確実に堅実に…。

荒々しいノックの音。
誰だ?源田さんなら一言あるはず。
どうぞと言う間も無く扉が開く。
え?パイロット?

「あんたが久保拓也?」
思ったより高い声?少年!?
ずいずいと無遠慮に歩み寄って来る。
ちょっ、待てよ。
無意識のうちに伸ばした右手が、少年航空兵?の胸に触れてしまう。

柔らかい…だと!?

次の瞬間、忖度なしの右ストレートパンチが久保の顔面に!
「オウふっ!」
そのまま卓上に仰向けになってしまう久保。
「あー、もうやめたやめた。
無理に隠して男のフリとか限界!
やっぱこれからは堂々と女として乗ろう。」
そう言って飛行帽を脱ぐと、ふぁさっと、いい匂いを放ちながら、長く豪奢な金髪が…。
女…。というか少女!?
しかも白人の。
「あんたの設計したゼロ、中々日本人にしては出来がいいじゃない。
我がドイツのフォッケには及ばないけどね。
一応私がわざわざ礼を言いに来たんだから感謝なさい。」

ぶん殴った上に見下ろして言う台詞じゃないだろう。
そう思いつつも、久保は口に出しては、ありがとう、とは言った。
「その、日本語が、流暢だね。
貴女はもしかして日本の血も…?」
「そそ、ママムッターが日本人。
…今はもう居ないけど。
自己紹介がまだだったわね。
私はカーテローゼ・伊集院・ホルテンブルグ、ドイツ空軍中尉。
宜しくね。」
「く、久保拓也、日本海軍技術少佐です…。」
なんか色々おかしいよな、と思いつつ、敬礼を交わす。
「おう、驚かせてすまんな久保。」
源田実中佐も入室してきた。
「このホルテンブルグ中尉は、元々ドイツ空軍フォッケウルフの我が国での機体性能実演の為に来日していたのだが…。
途中でこういった状況になったので、本人のたっての希望により台南空に所属している。
で。今日はたまたま内地で休養中なのを俺が声をかけてな。」
「は、はぁ…」
「向こう帰っても、プロパガンダがどうとか言って来て気持ち悪いゲッベルスが居るしぃ。」
「…ま、今日の本題は、そろそろ長官と、貴様を引き合わせようとしてな…。」
成る程、そういうことならば…。









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