14 / 166
鉄槌、パールハーバー
しおりを挟む
まず最初に狙われたアメリカ大型艦は、ようやく湾外退避の為主機を起動した、戦艦アリゾナであった。
800kg徹甲爆弾の水平投下をもろに第一砲塔に受け、直下の弾薬庫誘爆、真っ二つに艦体が折れ轟沈!
この光景はアメリカ将兵に開幕から甚大な精神的ダメージを与えた。
そして、最初に湾外に逃れようとしていた戦艦ネバダ。
「危ねえ、逃すわけにはいかねえな!」
村田重治少佐率いる97式艦上攻撃機、6機の編隊が海面を這い、浅深度用の特注魚雷を叩き込む。
6本の内4本がネバダの左舷に命中。
内一本は計ったように舵とスクリューを破壊し、傾斜も相まってネバダはよりによって湾口を塞ぐ位置で立ち往生してしまった。
「よおし、これで湾外には逃げられない。
貴様ら気張れよー。食い放題だ!」
カルフォルニア、ウエストバージニア…。
偉大なるアメリカ太平洋艦隊の中核を成す戦艦群が、次々と日本海軍雷爆撃隊の猛攻に、なすすべもなく蹂躙されていく。
おかしい、こんなことは許されない。
太平洋艦隊司令部の窓から、キンメルは呆然と立ち尽くし、眼前の地獄絵図を眺めていた。
「各島の航空基地が襲撃を受け、迎撃担当のPー40が離陸前に破壊されつつあります!」
そんな報告も頭の中で虚ろに響くのみ。
我々は日本艦隊の接近を察知していたのだ。
そして万全の体制で迎撃を…。
だのに、想定より1時間早く、ありえない飛行距離からの攻撃。
あらゆる要素で最悪のタイミングで…。
どこで間違えた…?
その時、目の前を低空で通過する…味方陸軍のPー40戦闘機。
それに後方から食いついていくのは…。
あれだ。
敵の新型戦闘機!
戦闘機にはあり得ない航続距離。
それで全ての計算が狂った。
勝手に我が海軍のF4Fより上回ることはないと高をくくり、それ基準で攻撃時刻を予想して…決めつけてしまっていた。
艦隊の湾外退避が遅れてしまったのも、こちらの防空能力を過信したのに加え、あまり早朝から大掛かりな艦隊行動を起こすと地元住民が動揺するのではと余計な気を回してしまった事が原因…。
そして、あの戦闘機の性能。
翼を折られて墜ちるPー40。
航続距離だけではない。純粋な空戦性能も…下手すればドイツのメッサーシュミットより上では?
甘かった…舐めていた。
日本海軍…いや日本人を。
いつから我々は思い込んでいた。
日本人の作る飛行機など所詮欧米の猿真似。
パイロットの腕も二流三流。
大嘘ではないか!
あの戦闘機だけではない。
艦爆も艦攻も、針の穴を通すような技量で爆弾、魚雷を目標に叩きつけていく。
勇猛さも含め…。
我が海軍のパイロット達に、あんな真似が出来るか…。
終わったな…。
私の海軍軍人キャリアも、そしてもしかしたらアメリカ海軍の栄光も…。
800kg徹甲爆弾の水平投下をもろに第一砲塔に受け、直下の弾薬庫誘爆、真っ二つに艦体が折れ轟沈!
この光景はアメリカ将兵に開幕から甚大な精神的ダメージを与えた。
そして、最初に湾外に逃れようとしていた戦艦ネバダ。
「危ねえ、逃すわけにはいかねえな!」
村田重治少佐率いる97式艦上攻撃機、6機の編隊が海面を這い、浅深度用の特注魚雷を叩き込む。
6本の内4本がネバダの左舷に命中。
内一本は計ったように舵とスクリューを破壊し、傾斜も相まってネバダはよりによって湾口を塞ぐ位置で立ち往生してしまった。
「よおし、これで湾外には逃げられない。
貴様ら気張れよー。食い放題だ!」
カルフォルニア、ウエストバージニア…。
偉大なるアメリカ太平洋艦隊の中核を成す戦艦群が、次々と日本海軍雷爆撃隊の猛攻に、なすすべもなく蹂躙されていく。
おかしい、こんなことは許されない。
太平洋艦隊司令部の窓から、キンメルは呆然と立ち尽くし、眼前の地獄絵図を眺めていた。
「各島の航空基地が襲撃を受け、迎撃担当のPー40が離陸前に破壊されつつあります!」
そんな報告も頭の中で虚ろに響くのみ。
我々は日本艦隊の接近を察知していたのだ。
そして万全の体制で迎撃を…。
だのに、想定より1時間早く、ありえない飛行距離からの攻撃。
あらゆる要素で最悪のタイミングで…。
どこで間違えた…?
その時、目の前を低空で通過する…味方陸軍のPー40戦闘機。
それに後方から食いついていくのは…。
あれだ。
敵の新型戦闘機!
戦闘機にはあり得ない航続距離。
それで全ての計算が狂った。
勝手に我が海軍のF4Fより上回ることはないと高をくくり、それ基準で攻撃時刻を予想して…決めつけてしまっていた。
艦隊の湾外退避が遅れてしまったのも、こちらの防空能力を過信したのに加え、あまり早朝から大掛かりな艦隊行動を起こすと地元住民が動揺するのではと余計な気を回してしまった事が原因…。
そして、あの戦闘機の性能。
翼を折られて墜ちるPー40。
航続距離だけではない。純粋な空戦性能も…下手すればドイツのメッサーシュミットより上では?
甘かった…舐めていた。
日本海軍…いや日本人を。
いつから我々は思い込んでいた。
日本人の作る飛行機など所詮欧米の猿真似。
パイロットの腕も二流三流。
大嘘ではないか!
あの戦闘機だけではない。
艦爆も艦攻も、針の穴を通すような技量で爆弾、魚雷を目標に叩きつけていく。
勇猛さも含め…。
我が海軍のパイロット達に、あんな真似が出来るか…。
終わったな…。
私の海軍軍人キャリアも、そしてもしかしたらアメリカ海軍の栄光も…。
20
お気に入りに追加
441
あなたにおすすめの小説
蒼雷の艦隊
和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。
よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。
一九四二年、三月二日。
スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。
雷艦長、その名は「工藤俊作」。
身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。
これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。
これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
江戸時代改装計画
華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。
「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」
頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。
ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。
(何故だ、どうしてこうなった……!!)
自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。
トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。
・アメリカ合衆国は満州国を承認
・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲
・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認
・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い
・アメリカ合衆国の軍備縮小
・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃
・アメリカ合衆国の移民法の撤廃
・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと
確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
皇国の栄光
ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。
日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。
激動の昭和時代。
皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか?
それとも47の星が照らす夜だろうか?
趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。
こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる