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いざ、艦隊決戦へ。

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アメリカ第58任務部隊。
ミッチャーも当然、徒労感と失望をないまぜにした様な状態である。
まさか大和への攻撃隊が200機を切る状態で、駆逐艦2隻撃沈のみ、肝心の大和は小破どまり、それがやっとでボロボロになって帰投してくるとは…
一旦、地上支援に出していた連中と再統合し、再度攻撃をかけるか…?
一応スプルーアンスに伺いを立てる。が、却下された。
「すぐに補充が入るとは言え、航空支援体制に穴を開ける訳にはいかない。
貴官はカミカゼ迎撃に専念されたし。」
「…御意。」
何かを叩きつけたい衝動に駆られるが、致し方ない。
実際マルチタスクの上にカミカゼと日本艦隊に振り回された我が任務部隊はパイロットも艦のクルーも疲弊し切っていた。
明日以降の増援も練度の上では若干既存メンバーに劣る。
そう、先は長い。最速で沖縄攻略が上手くいっても、我が海軍航空兵力はあと数週間は航空支援と対カミカゼに忙殺されるのだ。
スプルーアンス提督の判断に従い、戦艦部隊が数と正確な射撃、チームワークの優位を活かし、敵の怪物戦艦を葬ってくれると信じるしか無い…。

そして、第5艦隊の主たる戦艦部隊を基幹とした、スプルーアンス直率の艦隊。
分派してなお、戦艦ニュージャージー、アイオワ、ウィスコンシンの新鋭クラスに、ノースラロライナ、ワシントン、アラバマ、インディアナ。
合計7隻。
残りの旧式戦艦4隻は引き続き対地攻撃支援に貼り付ける。
それに巡洋艦8隻。
駆逐艦25隻。
スプルーアンスなりに選りすぐった艦隊決戦のバトルオーダーであった。
互いの有効射程に入るのは1時間後…。

「いよいよですな。」
「うむ。」
森下参謀長の言葉に、伊藤整一第二艦隊司令は頷く。
「速度は25ノットは出せます。
長門もほぼ同じ。
向こうも逃げ回ることはないでしょうし、主砲群は全て健在ですから、思う存分戦えましょう。」
有賀艦長はそう言って、2人や他の幕僚、艦橋スタッフ達を勇気づける。

一方、沖縄本島首里北東方面。
「どれもこれも中途半端ではないか!」
アメリカ地上軍総司令官バックナー中将は怒りを隠さない。
艦砲射撃も、海軍航空隊らの支援爆撃も断続的で中途半端。
確かにそもそも向こうも絶え間ないカミカゼ攻撃に往生させられ、こちらに集中できないのは理解しているが…。
遠方で負傷者が次々後送されてくるのが見える。
堅固なトーチカからの高発射速度の敵機関銃。(99式軽機関銃)や、断続的に撃っては退避を繰り返してくる擲弾筒がかなり痛撃となっている。
頼みの艦砲射撃も、殆どの敵陣地はその堅固さで凌いでしまう。
もっと海空一体で徹底した火力を集中して欲しいものだが。
とりあえず沖合の、敵海軍残党との海戦ごっこをさっさと終わらせてくれよな…。
バックナーはそんな思いを抱きつつ、側近の進言に従い後方の司令部に下がることとした。

そして時刻は1530、日没までにはたっぷり間がある。
「敵戦艦部隊を視認。既にこちらの進路に対して直交…T字の体勢…。距離23500!」
大和艦内に一層の緊張が走る。
「了解した。
距離22000で転舵!
同航戦に持ち込む。」
森下信衛第二艦隊参謀長が指令を下す。
「3隻は確実にアイオワ級ですな。」
有賀の言葉に、伊藤長官と森下は頷く。
2対7か…。
無論互いの補助艦を含めれば圧倒的不利ではあるが。
だがこの超弩級戦艦、帝国海軍の悲願がついに叶ったのだ。
神仏照覧!
大和を先頭に全艦隊が転舵、互いに一列の単縦陣での同航戦となる。

一方アメリカ第5艦隊。
「何だあのデカさ!?」
そんな水兵達の驚きの声がそこかしこで上がる。
スプルーアンスも驚きを隠せない。
わがアイオワ級(満載排水量6万トン弱)より一回り程度大きいとは思っていたが…。
あれは下手すれば7万トン級…。
「デイヨー提督。砲戦指揮を。必中エリアには少し早いが。」
「御意!全艦砲戦用意!まずは大和に集中…。」
戦艦部隊を実質指揮する男が指示した瞬間。
嫌な金属音の直後に、スプルーアンス座上の臨時旗艦、戦艦ニュージャージーの周囲に多数の水柱!
「何っ!?初弾から…至近弾!?」
「あの水柱の高さ…まさか…」
16じゃない、18インチ(口径46センチ)砲搭載だと!?
しかも…。
「左舷中央に破孔!」
「ダメコン班急げ!浸水止めろ!」
「傾斜5度!」
至近弾でこれか!?
アイオワには長門の砲撃。
命中はしなかったものの、外れ弾が艦を挟む形で着弾する夾叉。
クッ、正確な腕だ…。
「間髪入れるな!撃ち続けろ、発射速度、手数ではこちらが多く早い!」
デイヨーが叱咤し、3斉射目で長門に命中弾。

「長門、第一副砲塔全損!」
「下部弾薬庫の誘爆はなし!」
「消火急いでおります!」
森下は頷く。
そして…。
「ウィスコンシン被弾!」
より破局的な悲鳴は、アメリカ側から上がった。
何だと!?
第2主砲塔に被弾、そこまではいい。
だが、爆風が第一主砲塔の弾薬庫までを巻き込み、艦体前部の半分を消し飛ばし大火災を引き起こすとは!
スプルーアンス、デイヨー以下、大和の予測の遥か天井をゆく破壊力に、アメリカ艦隊将兵は震え上がる。
直後に集中、直撃させたこちらの主砲弾数発も、大和の各部装甲を抜くことが出来ない。
無論、互いの戦力は戦艦、巡洋艦だけではない。
より数的優位を活かせる駆逐艦群が魚雷を放つ、が、大和、長門付近に集中した30数発のうち、命中は各1本づつであった。
「こちらの操艦技術を舐めてもらっては困るな。」
ニヤリと長門艦長渋谷大佐は笑みを浮かべてみせる。
その間に長門の41センチ砲が、敵戦艦ワシントンに2発命中。中破の憂き目に合わせる。
そして駆逐艦群。たった9隻ではあるが。不可思議な艦隊運動を始める。
鉄の拳の殴り合いは尚続く…。
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