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8)ノーリス王立学園の大階段へ
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フィンリーと一緒にローレンス家の馬車に揺られ学園に向かった。
馬車を降りて並んで歩いていたら多くの人が驚いた顔をするのが分かる。
エレノア自身もこの状況にまだ慣れていなくてドキドキしている。
でもエレノアの姿であるフィンリーがまっすぐ前を向いて歩いていたので、
こちらもフィンリーとしてなるべく胸を張って歩いた。
もっとも杖をついているので「胸を張って」は少し無理もある。
今日はフィンリーと一緒にいることで、また誰かから聞こえよがしに何か言われるかもしれない。
エレノアにとってはフィンリーと一緒に歩くことより、何か言われることのほうがまだ慣れているが、フィンリーはそのことをずっと気にしていた。
「もしも何か聞こえたら……今、自分の耳には綿毛が詰まっている。そう想像して乗り切ってほしい」
そんなふうに小声で言われた。
エレノアは言われたとおりに、キルトを縫うときに布と布の間に入れる綿を今の自分の耳に想像の中で入れてみた。
ふわふわしている綿がフィンリーの耳からはみ出ているところを思い浮かべてしまい、思わず肩を揺らす。
──今のわたくしはフィンリーさまのお姿だから、余計におかしいわ。
「……少々笑い過ぎてはいるが、それでいい。ありがとう」
フィンリーが意外なほど上機嫌に見えて胸が速くなる。
「エレノアさま! ひっ……フィンリーさま⁉……おはようございます!」
「おはようございます」
やってきたブランシュが一緒に歩いている二人を見て、驚きすぎて口をポカンと開けたままになった。
そしてクラリスの手を取って早歩きで行ってしまう。
ブランシュとクラリスに何か言いたくてもフィンリーの姿で何か言えるわけもなく、エレノアはただ二人の後ろ姿を黙って見送った。
教室ではフィンリーに言われたとおり、廊下側の一番後ろの席に座る。
一人二人が朝の挨拶をしてきたが、ほとんどの生徒からは遠巻きにされていた。
話し掛けられて会話が始まると怪しまれるかもしれず、これはこれでよかった。
堂々とする、というのはエレノアには少し難しい。
フィンリーのようにさらりと言葉を返すことさえ、いつもエレノアは苦戦しているのだった。
一日の授業が終わり、フィンリーのところにエレノアは向かった。
フィンリーが事前に教室に迎えに来て欲しいと言っていたのだ。
『本当は自分が行きたいが……姿が入れ替わっているのはいろいろややこしいな』とフィンリーは馬車の中でつぶやいていた。
教室の外から中の様子を窺うと、エレノア姿のフィンリーがクラリスとブランシュと何か話している。
エレノアと違い、フィンリーはエレノアを真似るのがうまいのかもしれない。
なんとなく疎外感を感じたが、上手にエレノアを演じてくれているフィンリーには感謝ばかりだ。
これから図書室に向かい、いろいろな書物をあたって入れ替わりについて何か書かれていないか探すことになっている。
入れ替わる直前のことをエレノアは覚えていない。
図書室にいたことはぼんやり記憶にあるものの、何の本を読んでいたのかは思い出せなかった。
「この国について書かれている書物から探してみよう。僕はノーリス王国紀を一巻から目を通してみる」
「ではわたくしは学園の歴史について書かれた本を読んでみます」
それから閉館時間まで、二人は黙って本を調べ続けた。
フィンリーは持ち込んだノートに何かを書き写していた。
何か大きな収穫を得るということはなかった。
調べ物の初日は、夕食前にエレノアの部屋でそれぞれが調べた本のタイトルをひとつのノートに互いが記入しただけで終わった。
相手が同じ本を調べなくてもいいようにとのフィンリー言葉に、エレノアが気づかないこともフィンリーは当たり前のように進めていく。
そうしたフィンリーのことがとても頼もしく眩しかった。
一緒に登園する日々が十日も過ぎると、学園でフィンリーとエレノアが一緒にいても誰も何も言わなくなった。
その日の放課後も、エレノアは本をどんどん読み進めていった。
読むといってもざっくりとした斜め読みで、気になる単語があればその周辺を慎重に読むということを繰り返していく。
ふと気になる箇所を見つけ、メモを取りながら丹念に読む。
そしてフィンリーに声を掛けた。
「この学園の敷地ですが、元は民が集う広場だったようです。そしてその広場は、罪人の処刑場としても使われたとあります……」
「処刑場……? この学園の敷地に、そんなものがあったというのは初めて聞いた。もっと詳しく読んでみよう」
フィンリーは読んでいた本を置いて隣に座ってきた。
エレノアの本を一緒にのぞき込むフィンリーがその息遣いを感じられるほど近く、エレノアは顔が熱くなるのを感じた。
でも今はそれを気にしている場合ではない。
「なるほど……その頃の罪人の処刑は、民衆のある種の娯楽でもあったと何かで聞いたことがあるな。
民をギリギリと絞めて吸い上げた金を、自身の享楽や宝飾品、または賄賂の資金につぎ込んだ貴族の処刑とあれば、何百何千という民が見物に押し寄せたと」
「それからこちらなのですが、ノーリス王立学園の地図と学園が建設される前に広場のあったあたりの古い地図とを比べてみてください……」
「ええと、方角はこれでいいな……こうして合わせて……。
なんということだ……処刑場があった丘がちょうど大階段の最上段の場所と重なる……」
エレノアは寒気を感じ、思わず両腕を抱きしめる。
学園の大階段を昇りきったところに処刑台が置かれていたとは……。
「よし、ここで処刑された人物とその事件の内容について書かれた書物をあたってみるか」
エレノアは学園の地図を丁寧に書き写して、どの場所にかつて何があったかを書き込んで昔の地図を作り上げていく。
そして二人で処刑された人物が起こした事件について調べた。
最後に処刑があった事件からどんどん過去へ遡っていくことにした。
最後の処刑は、ある辺境伯の嫡子だった。
領地から王都にやってきた際に酒場で働く女性に軽い毒を盛り、手籠めにしたのち意識の無い女性を領地に戻る馬車に乗せ、途中に投げ捨てて放置するという酷い事件だ。
被害に遭って死亡した女性が十数人にも及んでいる。
取り調べや調査に時間を掛け、最後には嫡子本人の自白もあって処刑が決まった。
しかしこの話にはとんでもない続きがあった。
辺境伯は地下牢に繋がれて処刑の日を待つ嫡子を、あろうことかその地下牢に続くすべての見張りや番人にそれぞれ金を握らせ、嫡子と辺境伯邸で働く下男とを入れ替えたという。
処刑の日に断頭台で命を散らしたのは、何の罪もない下男だった。
入れ替わった辺境伯の嫡子がその後どうなったかは、何も記述がない。
フィンリーはいくつかの書物に書かれているものを統合して、学園の大階段の場所にあった処刑台の最後の事件を以上のようにまとめた。
「なんという陰惨で悲しい話だろう……。僕とエレノアが入れ替わってしまった場所でこんな酷い入れ替わりがあったとは……」
フィンリーが本を閉じて片付け、エレノアの手元にあった本も素早く本棚に戻していった。
そして今日はここまでにしようとエレノアをうながして図書室を出た。
外は天気がよく心地よい風が吹いている。
エレノアは一連の事件の話を思いながら、自分の足元がぐらつくような気分に陥った。
見慣れた景色、澄んだ空がいつものようにそこにあることに少しホッとする。
「なんとなく、今はあの大階段を降りたいと思わないね」
エレノアもフィンリーの意見に賛成だった。
先ほどの話を知ったあとでは階段に近づきたくないし、杖をついていると階段をゆっくり上ることはできても下るのはまだ怖い。
二人は大階段を降りるのを避けて、外の小径を通って遠回りをして大階段の下までやってきた。
どちらともなく立ち止まって階段を見上げる。
ここから人々は、階段を昇りきったあたりの処刑台を見ていたのだ。
処刑は庶民の娯楽だった。
具のないスープと硬いパンだけで、一日中働いてもラクにならない生活。
恵まれた家に生まれながらさらに甘い汁を啜った貴族が、声にならない叫びを上げながら首を刎ねられるなんていい気味だ。
そんな民衆のざわめきがエレノアの足元で渦巻いている。
エレノアは首のあたりにゾクゾクと冷たい感覚を覚え、誰かに足首を掴まれたような気がした。
耳の中に水を流し込まれたように音が遠のき、無意識にフィンリーの腕を掴んだ。
カラン……と、杖が地面に転がった。
「エレノア、どうした大丈夫か!? エレノア!」
フィンリーの声が遠くに聞こえ、エレノアはあの日のように目の前が真っ暗になった。
馬車を降りて並んで歩いていたら多くの人が驚いた顔をするのが分かる。
エレノア自身もこの状況にまだ慣れていなくてドキドキしている。
でもエレノアの姿であるフィンリーがまっすぐ前を向いて歩いていたので、
こちらもフィンリーとしてなるべく胸を張って歩いた。
もっとも杖をついているので「胸を張って」は少し無理もある。
今日はフィンリーと一緒にいることで、また誰かから聞こえよがしに何か言われるかもしれない。
エレノアにとってはフィンリーと一緒に歩くことより、何か言われることのほうがまだ慣れているが、フィンリーはそのことをずっと気にしていた。
「もしも何か聞こえたら……今、自分の耳には綿毛が詰まっている。そう想像して乗り切ってほしい」
そんなふうに小声で言われた。
エレノアは言われたとおりに、キルトを縫うときに布と布の間に入れる綿を今の自分の耳に想像の中で入れてみた。
ふわふわしている綿がフィンリーの耳からはみ出ているところを思い浮かべてしまい、思わず肩を揺らす。
──今のわたくしはフィンリーさまのお姿だから、余計におかしいわ。
「……少々笑い過ぎてはいるが、それでいい。ありがとう」
フィンリーが意外なほど上機嫌に見えて胸が速くなる。
「エレノアさま! ひっ……フィンリーさま⁉……おはようございます!」
「おはようございます」
やってきたブランシュが一緒に歩いている二人を見て、驚きすぎて口をポカンと開けたままになった。
そしてクラリスの手を取って早歩きで行ってしまう。
ブランシュとクラリスに何か言いたくてもフィンリーの姿で何か言えるわけもなく、エレノアはただ二人の後ろ姿を黙って見送った。
教室ではフィンリーに言われたとおり、廊下側の一番後ろの席に座る。
一人二人が朝の挨拶をしてきたが、ほとんどの生徒からは遠巻きにされていた。
話し掛けられて会話が始まると怪しまれるかもしれず、これはこれでよかった。
堂々とする、というのはエレノアには少し難しい。
フィンリーのようにさらりと言葉を返すことさえ、いつもエレノアは苦戦しているのだった。
一日の授業が終わり、フィンリーのところにエレノアは向かった。
フィンリーが事前に教室に迎えに来て欲しいと言っていたのだ。
『本当は自分が行きたいが……姿が入れ替わっているのはいろいろややこしいな』とフィンリーは馬車の中でつぶやいていた。
教室の外から中の様子を窺うと、エレノア姿のフィンリーがクラリスとブランシュと何か話している。
エレノアと違い、フィンリーはエレノアを真似るのがうまいのかもしれない。
なんとなく疎外感を感じたが、上手にエレノアを演じてくれているフィンリーには感謝ばかりだ。
これから図書室に向かい、いろいろな書物をあたって入れ替わりについて何か書かれていないか探すことになっている。
入れ替わる直前のことをエレノアは覚えていない。
図書室にいたことはぼんやり記憶にあるものの、何の本を読んでいたのかは思い出せなかった。
「この国について書かれている書物から探してみよう。僕はノーリス王国紀を一巻から目を通してみる」
「ではわたくしは学園の歴史について書かれた本を読んでみます」
それから閉館時間まで、二人は黙って本を調べ続けた。
フィンリーは持ち込んだノートに何かを書き写していた。
何か大きな収穫を得るということはなかった。
調べ物の初日は、夕食前にエレノアの部屋でそれぞれが調べた本のタイトルをひとつのノートに互いが記入しただけで終わった。
相手が同じ本を調べなくてもいいようにとのフィンリー言葉に、エレノアが気づかないこともフィンリーは当たり前のように進めていく。
そうしたフィンリーのことがとても頼もしく眩しかった。
一緒に登園する日々が十日も過ぎると、学園でフィンリーとエレノアが一緒にいても誰も何も言わなくなった。
その日の放課後も、エレノアは本をどんどん読み進めていった。
読むといってもざっくりとした斜め読みで、気になる単語があればその周辺を慎重に読むということを繰り返していく。
ふと気になる箇所を見つけ、メモを取りながら丹念に読む。
そしてフィンリーに声を掛けた。
「この学園の敷地ですが、元は民が集う広場だったようです。そしてその広場は、罪人の処刑場としても使われたとあります……」
「処刑場……? この学園の敷地に、そんなものがあったというのは初めて聞いた。もっと詳しく読んでみよう」
フィンリーは読んでいた本を置いて隣に座ってきた。
エレノアの本を一緒にのぞき込むフィンリーがその息遣いを感じられるほど近く、エレノアは顔が熱くなるのを感じた。
でも今はそれを気にしている場合ではない。
「なるほど……その頃の罪人の処刑は、民衆のある種の娯楽でもあったと何かで聞いたことがあるな。
民をギリギリと絞めて吸い上げた金を、自身の享楽や宝飾品、または賄賂の資金につぎ込んだ貴族の処刑とあれば、何百何千という民が見物に押し寄せたと」
「それからこちらなのですが、ノーリス王立学園の地図と学園が建設される前に広場のあったあたりの古い地図とを比べてみてください……」
「ええと、方角はこれでいいな……こうして合わせて……。
なんということだ……処刑場があった丘がちょうど大階段の最上段の場所と重なる……」
エレノアは寒気を感じ、思わず両腕を抱きしめる。
学園の大階段を昇りきったところに処刑台が置かれていたとは……。
「よし、ここで処刑された人物とその事件の内容について書かれた書物をあたってみるか」
エレノアは学園の地図を丁寧に書き写して、どの場所にかつて何があったかを書き込んで昔の地図を作り上げていく。
そして二人で処刑された人物が起こした事件について調べた。
最後に処刑があった事件からどんどん過去へ遡っていくことにした。
最後の処刑は、ある辺境伯の嫡子だった。
領地から王都にやってきた際に酒場で働く女性に軽い毒を盛り、手籠めにしたのち意識の無い女性を領地に戻る馬車に乗せ、途中に投げ捨てて放置するという酷い事件だ。
被害に遭って死亡した女性が十数人にも及んでいる。
取り調べや調査に時間を掛け、最後には嫡子本人の自白もあって処刑が決まった。
しかしこの話にはとんでもない続きがあった。
辺境伯は地下牢に繋がれて処刑の日を待つ嫡子を、あろうことかその地下牢に続くすべての見張りや番人にそれぞれ金を握らせ、嫡子と辺境伯邸で働く下男とを入れ替えたという。
処刑の日に断頭台で命を散らしたのは、何の罪もない下男だった。
入れ替わった辺境伯の嫡子がその後どうなったかは、何も記述がない。
フィンリーはいくつかの書物に書かれているものを統合して、学園の大階段の場所にあった処刑台の最後の事件を以上のようにまとめた。
「なんという陰惨で悲しい話だろう……。僕とエレノアが入れ替わってしまった場所でこんな酷い入れ替わりがあったとは……」
フィンリーが本を閉じて片付け、エレノアの手元にあった本も素早く本棚に戻していった。
そして今日はここまでにしようとエレノアをうながして図書室を出た。
外は天気がよく心地よい風が吹いている。
エレノアは一連の事件の話を思いながら、自分の足元がぐらつくような気分に陥った。
見慣れた景色、澄んだ空がいつものようにそこにあることに少しホッとする。
「なんとなく、今はあの大階段を降りたいと思わないね」
エレノアもフィンリーの意見に賛成だった。
先ほどの話を知ったあとでは階段に近づきたくないし、杖をついていると階段をゆっくり上ることはできても下るのはまだ怖い。
二人は大階段を降りるのを避けて、外の小径を通って遠回りをして大階段の下までやってきた。
どちらともなく立ち止まって階段を見上げる。
ここから人々は、階段を昇りきったあたりの処刑台を見ていたのだ。
処刑は庶民の娯楽だった。
具のないスープと硬いパンだけで、一日中働いてもラクにならない生活。
恵まれた家に生まれながらさらに甘い汁を啜った貴族が、声にならない叫びを上げながら首を刎ねられるなんていい気味だ。
そんな民衆のざわめきがエレノアの足元で渦巻いている。
エレノアは首のあたりにゾクゾクと冷たい感覚を覚え、誰かに足首を掴まれたような気がした。
耳の中に水を流し込まれたように音が遠のき、無意識にフィンリーの腕を掴んだ。
カラン……と、杖が地面に転がった。
「エレノア、どうした大丈夫か!? エレノア!」
フィンリーの声が遠くに聞こえ、エレノアはあの日のように目の前が真っ暗になった。
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