吸血鬼VS風船ゾンビ

畑山

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夜、吸血鬼、五月

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 吸血鬼

 五月に入った。
 早生のタマネギが収穫時期に入り、エンドウやソラマメなども、少しだが、とれるようになっていた。タマネギや豆を収穫しバス停の無人販売所に並べると、飛ぶように売れた。一度、子供が書いたお礼の手紙が料金箱に入っており、権造は、うれしい気分になった。

 山の集落での農作業も忙しくなり、ビニールハウスで育苗していたナスやトマトの苗も、そろそろ植え時だった。ジャガイモも大きくなり、ジャガイモに光が当たらないように土寄せをした。
 近くのため池から引いた水を田に流した。用水路の泥が少したまっていたので、鍬で掻き出した。用水路周辺の雑草は、手を付ける気が起こらないほど、はびこっていた。畑や田んぼ周辺の草取りは行っているが、他はあきらめていた。どの家も草に覆われ、その姿は半分ほど覆い隠されていた。
 この集落に人が住み、勝手に食糧を生産してくれるのが一番いいのだが、ここでは、ゾンビが来たときに対処しきれない。周辺に猪よけのフェンスが立てられているが、ゾンビ相手では、まるで役に立たない。もっと頑丈な柵を作ろうと思えば作れるのだが、人間が住むかどうかわからない集落にゾンビよけの柵を建設する気にはなれなかった。
 食糧の生産も大事なことなのだが、ゾンビの駆除も考えなければならなかった。春先に民家にゾンビが集まってきたことがあったが、団地に生息していたゾンビが、人間に反応し集まってきたことが原因だ。
 ゾンビはなぜか、マンションや団地といった構造物が重なったような場所を好む。特に人が生活していたような空間を好むようで、入り込んで、じっとしていたり、周回していたりする。
 万が一の火災を恐れ、今まで、放置をしていたが、少しずつ駆除を進めていくことにした。

 山本権造は、いつもの大八車と鉄パイプを手に梅柄台の団地に向かった。
 火災と爆発により、焼け焦げ、所々壊れている。そんなところにゾンビ達はいた。
 ゾンビには、ゆっくりとだが、再生能力がある。多少燃えたぐらいでは、時間をかけると復活する。頸椎か脳を破壊しない限り、腐敗と再生を繰り返しながら、ガスで膨張していく。
 やけどの跡がある膨れあがったゾンビが団地の駐車場でうろうろとしていた。権造は背後から近づいて、首筋に鉄パイプを打ち込んだ。それを繰り返していく。
 三十分もすると、大八車いっぱいに動かなくなったゾンビが積み上がった。
「こりゃ、大変だぞ」
 権造は、団地を見渡しながら、うんざりとした気分になった。  








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