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昼、民家の攻防戦7、救助隊、夜の始め
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外は、ゾンビが這い回っていた。屋根の上も、外の壁も、見るのもいやになるくらい這い回っていた。
屋根の太陽光パネルは、すべて取り外し、家の中に入れた。これで、ゾンビが太陽光パネルを踏んづけて爆発する心配はなくなった。取り外すときにあけた屋根の穴は、木の板で埋めなおした。
その間、家全体の守りがうすくなり、一階部分はすべてゾンビに占拠されてしまった。そのため、二階に上がることのできる階段部分を、洋服ダンスとうの家具を落とし封鎖した。
窓という窓は、木材で封鎖し、ベランダだけは定期的にゾンビを排除している。ベランダの雨戸を壊されると、容易に二階に侵入することができるようになるためだ。そうなると終わりだ。
「いよいよ、厳しくなってきたな」
堀田が言った。全員疲れ切っていた。安全な場所は、二階の三部屋と屋根裏だけになった。
「でもまぁ、そうそう中には入りこめんだろう」
野口が言った。
「そうだな、一階は階段を封鎖すれば、のぼって来られないし、二階の窓だって、簡単には、入ってこられない。太陽光パネルも取り外したし、ベランダの守りさえしっかりしてれば、まず大丈夫だろう」
「ですよね。あとは救助を待てば良いですよね」
里山がいった。
「でもよう、どうしようも無いことなんだけどよ。一応いっとくぜ。太陽光パネルは、この家だけじゃなくて、あっちこっちの屋根にのっかてるからよ。そこで、なんかあったら、どかんってなって、ついでに、ここらも火の海になるぞ」
栗山が言った。
「おう、本当にどうしようも無いな。そこはもう、あきらめるしか無いんじゃないか。さすがに、よその家の太陽光パネルまで手は回らない」
「そんなことできるんだったら、脱出できるわね」
「そうだな。それは考えても仕方ないな」
「そうだな」
「まぁ、なんだかんだいって、当分は大丈夫だろう」
「なんか変な音がしたな」
野口が上を見上げた。
「漆喰が落ちたんじゃないの」
屋根の上にも、ゾンビは、いる。
「まただ。なんか、かたかた、いってるな」
屋根の上を硬質な何かが滑り落ちるような音がして、下の方で割れるような音がした。
「瓦だな。瓦が落ちた音だ」
「瓦がずれて下に落ちたのか」
また音がした。
「違うな。剥がしてやがるな。やつら、瓦を剥がして下に落としてやがる」
「何のためだ」
「そりゃあ、瓦を剥がして、下に侵入できるところがないか探してんじゃないのか。ほら、俺らだって、屋根裏から、屋根に出入りしていただろ。それ見て、瓦剥がせば、出入り口があるんじゃ無いかって、思ったんじゃないか」
「まずいんじゃないか」
「まずいねぇ。屋根に穴開けたところ、一応、板貼って補強はしているが、他よりは、もろい。屋根の下地の板も、かてぇもんじゃねぇし、がんばりゃ壊せるかも知れなぇなぁ」
栗山は困った顔をした。
「どうすりゃ、いいんだ」
誰も答える者はいなかった。
救助隊
小久保は、何度か交代と休憩を挟みながら、ゾンビを排除した。
七十体程度のゾンビを殺したが、どこから沸いてくるのか、救助者のいる民家には未だ近づけなかった。
夕方になり、救助活動をやめ、拠点のコンビニで休むことにした。
夜
「さて、今日は何をしようかな」
夜になり目が覚めた山本権造は、いつもの地下室から外に出た。
星空は明るく、雲一つなかった。ただ、静かな夜というわけにはいかなかった。
「ずいぶんと、騒がしいな」
耳を澄ませると、遠くで、物を壊すような音がした。たくさんのうなり声がする。
「ゾンビか。梅柄台の団地の方か。あの辺、ゾンビが隠れ住んでたから、春になって出てきたのかな。ちょっといってみるか」
権造は大八車に鉄パイプを乗せ向かった。
民家
屋根にあけた穴がゾンビに破られ、その穴にゾンビが一匹詰まっていた。穴から侵入しようとしたが、ガス肥大した腹部が穴に詰まってしまったようだ。ゾンビは屋根裏で足を、ばたつかせていた。
「どうするよ。頭が見えねぇから、殺すこともできないぞ」
堀田が懐中電灯で照らしながら言った。腹の辺りで詰まっているため、上半身は屋根の上にある。
「おしりを押して、いっぺん外に出してみたらどうかしら、それから、もう一度、頭から出るようにすれば良いんじゃない」
輪子がいった。
「逆子を取り上げる産婆じゃあるまいし。そんな器用なまねできるかよ」
「じゃあ、ほっとけば良いんじゃない。そのうちガスが抜けて、落ちてくるわ。その時に、矢で射ころせば良いのよ」
「だが、穴がどんどん大きくなるぜ」
穴に詰まったゾンビは足をばたつかせ、暴れていた。木くずがぼろぼろと落ちてきていた。
屋根の太陽光パネルは、すべて取り外し、家の中に入れた。これで、ゾンビが太陽光パネルを踏んづけて爆発する心配はなくなった。取り外すときにあけた屋根の穴は、木の板で埋めなおした。
その間、家全体の守りがうすくなり、一階部分はすべてゾンビに占拠されてしまった。そのため、二階に上がることのできる階段部分を、洋服ダンスとうの家具を落とし封鎖した。
窓という窓は、木材で封鎖し、ベランダだけは定期的にゾンビを排除している。ベランダの雨戸を壊されると、容易に二階に侵入することができるようになるためだ。そうなると終わりだ。
「いよいよ、厳しくなってきたな」
堀田が言った。全員疲れ切っていた。安全な場所は、二階の三部屋と屋根裏だけになった。
「でもまぁ、そうそう中には入りこめんだろう」
野口が言った。
「そうだな、一階は階段を封鎖すれば、のぼって来られないし、二階の窓だって、簡単には、入ってこられない。太陽光パネルも取り外したし、ベランダの守りさえしっかりしてれば、まず大丈夫だろう」
「ですよね。あとは救助を待てば良いですよね」
里山がいった。
「でもよう、どうしようも無いことなんだけどよ。一応いっとくぜ。太陽光パネルは、この家だけじゃなくて、あっちこっちの屋根にのっかてるからよ。そこで、なんかあったら、どかんってなって、ついでに、ここらも火の海になるぞ」
栗山が言った。
「おう、本当にどうしようも無いな。そこはもう、あきらめるしか無いんじゃないか。さすがに、よその家の太陽光パネルまで手は回らない」
「そんなことできるんだったら、脱出できるわね」
「そうだな。それは考えても仕方ないな」
「そうだな」
「まぁ、なんだかんだいって、当分は大丈夫だろう」
「なんか変な音がしたな」
野口が上を見上げた。
「漆喰が落ちたんじゃないの」
屋根の上にも、ゾンビは、いる。
「まただ。なんか、かたかた、いってるな」
屋根の上を硬質な何かが滑り落ちるような音がして、下の方で割れるような音がした。
「瓦だな。瓦が落ちた音だ」
「瓦がずれて下に落ちたのか」
また音がした。
「違うな。剥がしてやがるな。やつら、瓦を剥がして下に落としてやがる」
「何のためだ」
「そりゃあ、瓦を剥がして、下に侵入できるところがないか探してんじゃないのか。ほら、俺らだって、屋根裏から、屋根に出入りしていただろ。それ見て、瓦剥がせば、出入り口があるんじゃ無いかって、思ったんじゃないか」
「まずいんじゃないか」
「まずいねぇ。屋根に穴開けたところ、一応、板貼って補強はしているが、他よりは、もろい。屋根の下地の板も、かてぇもんじゃねぇし、がんばりゃ壊せるかも知れなぇなぁ」
栗山は困った顔をした。
「どうすりゃ、いいんだ」
誰も答える者はいなかった。
救助隊
小久保は、何度か交代と休憩を挟みながら、ゾンビを排除した。
七十体程度のゾンビを殺したが、どこから沸いてくるのか、救助者のいる民家には未だ近づけなかった。
夕方になり、救助活動をやめ、拠点のコンビニで休むことにした。
夜
「さて、今日は何をしようかな」
夜になり目が覚めた山本権造は、いつもの地下室から外に出た。
星空は明るく、雲一つなかった。ただ、静かな夜というわけにはいかなかった。
「ずいぶんと、騒がしいな」
耳を澄ませると、遠くで、物を壊すような音がした。たくさんのうなり声がする。
「ゾンビか。梅柄台の団地の方か。あの辺、ゾンビが隠れ住んでたから、春になって出てきたのかな。ちょっといってみるか」
権造は大八車に鉄パイプを乗せ向かった。
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堀田が懐中電灯で照らしながら言った。腹の辺りで詰まっているため、上半身は屋根の上にある。
「おしりを押して、いっぺん外に出してみたらどうかしら、それから、もう一度、頭から出るようにすれば良いんじゃない」
輪子がいった。
「逆子を取り上げる産婆じゃあるまいし。そんな器用なまねできるかよ」
「じゃあ、ほっとけば良いんじゃない。そのうちガスが抜けて、落ちてくるわ。その時に、矢で射ころせば良いのよ」
「だが、穴がどんどん大きくなるぜ」
穴に詰まったゾンビは足をばたつかせ、暴れていた。木くずがぼろぼろと落ちてきていた。
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