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昼、民家の防衛戦2
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「署長、大変です」
副署長の大森浩介がノックもせず署長室のドアを開けた。
「何があった」
署長の田志沢栄太郎は書類仕事の手を止めて言った。
「民家の太陽光パネルの調達にいった六人が、ゾンビに囲まれて、身動きがとれなくなっています」
「確か、梅柄台だったか」
田志沢は地図を広げた。梅柄台は元々は緩やかな斜面の土地で、昔は梅が植えられていた。今は住宅地が立てられおり、その名残はほとんどなかった。
「ええ、堀田の班が四名、護衛についています」
「堀田か。うちの署の者だな。それで状況は」
堀田は野勝署の警察官である。
「無線で連絡があったんですが、作業開始後二時間ほどしたところで、ゾンビが周辺に集まってきたそうです。警戒をしていたそうですが、徐々に増えてきて、現在五十体ほどのゾンビに囲まれているそうです」
「そんなにたくさん、どこにいたんだ」
「近くの団地に隠れていた奴らが出てきたそうです。市役所に連れてくるのを恐れて避難が遅れたみたいです」
「車を出すか」
「道が入り組んでるうえ、結構細い道が多いですよ」
「梅柄台小学校前の大通りなら通れるだろう」
「ですがそこだと、団地方面に近づくことになるので、さらにゾンビを呼び寄せることになりかねません」
「電気自動車ならどうだ」
「パワーがちょっと、いざというときは、リスクを負ってでも突破できないと、それにすでに団地周辺では、ゾンビがうろついている可能性があります。音が出にくいとは言ってもそれなりに出ますから、二次被害が出る可能性があります。あまりお勧めはできません」
「とすると、三波町の国道か。遠いな」
「ええ、ちょっと遠いです」
「そこまで移動できるんだったら、普通に歩いて逃げられるよな」
「ええ、そうです」
「困ったね」
田志沢は地図を見つめた。
民家
ゾンビの数はますます増えていた。
「東の道路に二十、西に四十、てとこですかね」
周辺を監視していた里山が言った。
「隣の家はどうだ」
警察官の堀田が言った。
北と南は民家に挟まれており、東西は道路になっている。
「隣も入り込んでますね。幸い、木が邪魔してて、なかなかこちらには来られなさそうです」
隣の敷地に生えていた樹木が大きく伸び広がっており、ゾンビの進入を妨げていた。
「何で集まってくるんだろうな」
「よくわかんないですけど、集まってくるときがあるみたいですよ。何らかの形で意思の疎通をしているんじゃないかって、言われてますけどね」
「行列のできる店みたいなもんだろうな」
「行列があったら、並びたくなるってことですか」
「ああ、食べ物につられてな」
「笑えないっすね」
里山は苦笑いした。
「それで、署長はなんていってきたの」
姫路輪子は言った。矢の消耗を考え、ゾンビを射るのはやめていた。
「考え中って、とこだろうな。三波町のコンビニに脱出用のガソリン車を用意してくれるそうだが、そこまでいくのがなあ」
車と爆発するゾンビは相性が悪い。そのため道幅の狭い道をゾンビを轢きながら、この家の近くまで来ることは難しかった。
「この近辺に止まっている車を一か八か動かすって手もあるんじゃないか」
野口が言った。
「車の鍵を見つけ、バッテリーを充電して、ガソリンがあって、故障してなければ可能だな」
長期間、動かしていない車が動く保証はない。
「見える範囲では、車はなかったわ。事故車両は何台か見たけど」
「どこにあるか、動くかわからん車を探すのは、リスクが多すぎる。外に出たら一瞬で囲まれるぜ」
「電線を伝って、移動すれば良いだろ。もう電気は通ってないんだし、跨いでも感電せんぞ」
太陽光パネルの取り外しのために来ていた作業員の栗山が言った。
「電線ですか」
里山はいやそうな顔をした。
「恐いのか」
「そりゃあ、まぁ恐いですよ。下はゾンビだし、あいつら飛んでくるし、五階建てのマンションの壁をよじ登っているところを見たことありますから、屋根ぐらいの高さだと安心できないですよ。できれば避けたいです」
「そうか、野口はどうだ」
「俺は、消防士だからな、高いのだけだったら平気だ。ただ、このゾンビは、ちょっと浮いてるからな」
「私は、苦手かも。電線の上なんて、歩くのは無理かも」
輪子は顔をこわばらせた。
「堀田さん、あんたは、どうなんだ」
「俺も、高いところはちょっとな」
堀田は目をそらしながらいった。
「なさけねぇな」
栗山はしかめ面をした。
「じゃあ、このまま立てこもるか」
「それも悪くはない。食糧は十分にある。水もあるから、一週間は食いつなぐことができる」
「その間、ここが持ちますかね」
「幸い大きい窓には鎧戸があるからな。ゾンビに火さえつかなければ、なんとかなるんじゃないか」
「その後は、どうなります」
「一週間もあれば、ゾンビもどこかに散るだろうし、署長も何とかしてくれるはずだ。いよいよだめそうだったら、電線を使おう。これでどうだ」
「そう、ですね。そんな感じで、いいんじゃないですか」
里山がいった。
副署長の大森浩介がノックもせず署長室のドアを開けた。
「何があった」
署長の田志沢栄太郎は書類仕事の手を止めて言った。
「民家の太陽光パネルの調達にいった六人が、ゾンビに囲まれて、身動きがとれなくなっています」
「確か、梅柄台だったか」
田志沢は地図を広げた。梅柄台は元々は緩やかな斜面の土地で、昔は梅が植えられていた。今は住宅地が立てられおり、その名残はほとんどなかった。
「ええ、堀田の班が四名、護衛についています」
「堀田か。うちの署の者だな。それで状況は」
堀田は野勝署の警察官である。
「無線で連絡があったんですが、作業開始後二時間ほどしたところで、ゾンビが周辺に集まってきたそうです。警戒をしていたそうですが、徐々に増えてきて、現在五十体ほどのゾンビに囲まれているそうです」
「そんなにたくさん、どこにいたんだ」
「近くの団地に隠れていた奴らが出てきたそうです。市役所に連れてくるのを恐れて避難が遅れたみたいです」
「車を出すか」
「道が入り組んでるうえ、結構細い道が多いですよ」
「梅柄台小学校前の大通りなら通れるだろう」
「ですがそこだと、団地方面に近づくことになるので、さらにゾンビを呼び寄せることになりかねません」
「電気自動車ならどうだ」
「パワーがちょっと、いざというときは、リスクを負ってでも突破できないと、それにすでに団地周辺では、ゾンビがうろついている可能性があります。音が出にくいとは言ってもそれなりに出ますから、二次被害が出る可能性があります。あまりお勧めはできません」
「とすると、三波町の国道か。遠いな」
「ええ、ちょっと遠いです」
「そこまで移動できるんだったら、普通に歩いて逃げられるよな」
「ええ、そうです」
「困ったね」
田志沢は地図を見つめた。
民家
ゾンビの数はますます増えていた。
「東の道路に二十、西に四十、てとこですかね」
周辺を監視していた里山が言った。
「隣の家はどうだ」
警察官の堀田が言った。
北と南は民家に挟まれており、東西は道路になっている。
「隣も入り込んでますね。幸い、木が邪魔してて、なかなかこちらには来られなさそうです」
隣の敷地に生えていた樹木が大きく伸び広がっており、ゾンビの進入を妨げていた。
「何で集まってくるんだろうな」
「よくわかんないですけど、集まってくるときがあるみたいですよ。何らかの形で意思の疎通をしているんじゃないかって、言われてますけどね」
「行列のできる店みたいなもんだろうな」
「行列があったら、並びたくなるってことですか」
「ああ、食べ物につられてな」
「笑えないっすね」
里山は苦笑いした。
「それで、署長はなんていってきたの」
姫路輪子は言った。矢の消耗を考え、ゾンビを射るのはやめていた。
「考え中って、とこだろうな。三波町のコンビニに脱出用のガソリン車を用意してくれるそうだが、そこまでいくのがなあ」
車と爆発するゾンビは相性が悪い。そのため道幅の狭い道をゾンビを轢きながら、この家の近くまで来ることは難しかった。
「この近辺に止まっている車を一か八か動かすって手もあるんじゃないか」
野口が言った。
「車の鍵を見つけ、バッテリーを充電して、ガソリンがあって、故障してなければ可能だな」
長期間、動かしていない車が動く保証はない。
「見える範囲では、車はなかったわ。事故車両は何台か見たけど」
「どこにあるか、動くかわからん車を探すのは、リスクが多すぎる。外に出たら一瞬で囲まれるぜ」
「電線を伝って、移動すれば良いだろ。もう電気は通ってないんだし、跨いでも感電せんぞ」
太陽光パネルの取り外しのために来ていた作業員の栗山が言った。
「電線ですか」
里山はいやそうな顔をした。
「恐いのか」
「そりゃあ、まぁ恐いですよ。下はゾンビだし、あいつら飛んでくるし、五階建てのマンションの壁をよじ登っているところを見たことありますから、屋根ぐらいの高さだと安心できないですよ。できれば避けたいです」
「そうか、野口はどうだ」
「俺は、消防士だからな、高いのだけだったら平気だ。ただ、このゾンビは、ちょっと浮いてるからな」
「私は、苦手かも。電線の上なんて、歩くのは無理かも」
輪子は顔をこわばらせた。
「堀田さん、あんたは、どうなんだ」
「俺も、高いところはちょっとな」
堀田は目をそらしながらいった。
「なさけねぇな」
栗山はしかめ面をした。
「じゃあ、このまま立てこもるか」
「それも悪くはない。食糧は十分にある。水もあるから、一週間は食いつなぐことができる」
「その間、ここが持ちますかね」
「幸い大きい窓には鎧戸があるからな。ゾンビに火さえつかなければ、なんとかなるんじゃないか」
「その後は、どうなります」
「一週間もあれば、ゾンビもどこかに散るだろうし、署長も何とかしてくれるはずだ。いよいよだめそうだったら、電線を使おう。これでどうだ」
「そう、ですね。そんな感じで、いいんじゃないですか」
里山がいった。
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