啓蟄のアヴァ

藤井咲

文字の大きさ
上 下
17 / 23
第二章

(3)

しおりを挟む

 Jは十八歳になると自治体警察に入った。

 その宣言を受けた日はJが久しぶりに家にいて、ジャックの隣に座って腕を組んでいた。
丁度双子の誕生日の前日だった。
私は学習を終えてジャックの横を陣取るように床に座り、海洋図鑑を流し見していた。

「自治体警察の隊長になるよ。」

Jが椅子を傾けてふんぞり返った姿勢で言った。

「―自治体警察、Jが?警察、州警察じゃなくて?」

ジャックは元々聞いていたようで驚く様子は見受けられなかったが私は大いに驚いた。
しかしJは私に顔を向け真面目な顔で頷いた。
Jは私の横にきて床に座り、私が知る州警察と自治体警察についてより詳しく説明をしてくれた。

 「各州警察はかなり仲が悪い、そして州警察と自治体警察も仲が悪い、これは周知の事実だ。
海上都市の三つの州ごとにある州警察は組織の造りも違えば各トップもそれぞれ別の人物だ。
現場を練り歩くというよりかは如何に犯罪を増やさないか、どういった警備体制を採用すべきかといった事柄を考える為の戦略的警察組織というほうが正しいな。
各州のトップはエリート中のエリート、その下にいる人物たちいずれも皆エリート思想のエリート出身と思ってくれていい。
州警察は州を超えての犯罪者追跡を禁止している。
『警備体制を崩すから』というのが理由だそうだ。
そこで自治体警察の出番となる。
自治体警察は三州全てを一つの機関で警備し、州のどこだろうと関係なく駆けつけられる。
つまり国全体を一つとして考え守る機関になる。
荒事は多いが州警察よりも国民に頼りにされている機関でもあるな。
組織としては二人のトップがいて、その下に三人の隊長、隊長直下に十人から二十人で形成された隊がある。組織全体を見ると隊員数は百人超えれば良いほうだ。
州警察に比べると規模が小さい。ただ規模が小さい分かなり動きやすい。
そこに俺は入る。で、隊長になる。」

「危なくないの?…それ」

 Jは身体能力が高いが、犯罪者を捕まえるという行為はそれだけで務まるものではないだろう。
危険だと誰もが想像できる。Jが怪我をするのは嫌だなと思った。

「危なくても大丈夫だろ。」

何の根拠もなくあっけらかんと言うJを見て「ああ、こういう人だったな」と、昔のJを思い出した。

「基本家から通うし、何かあれば言ってくれていいから。」

そういってJは部屋を出て行った。
ジャックは「相変わらずだねえ」と楽しそうに机に向かいながら笑っていて、私も呆れた顔をしながら笑った。

 翌日、Jは宣言通り自治体警察に入り、隊から支給されたという詰襟の紺色でまとめられた隊服姿を見せてくれた。
双子は母に進路について話していたらしく、その日初めて四人で食事をした。
双子が十八歳になり針路を定めたお祝いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

名前を棄てた賞金首

天樹 一翔
SF
鋼鉄でできた生物が現れ始め、改良された武器で戦うのが当たり前となった世の中。 しかし、パーカッション式シングルアクションのコルトのみで戦う、変わった旅人ウォーカー。 鋼鉄生物との戦闘中、政府公認の賞金稼ぎ、セシリアが出会う。 二人は理由が違えど目的地は同じミネラルだった。 そこで二人を待っていた事件とは――? カクヨムにて公開中の作品となります。

ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~

テツみン
SF
東京、大手町の地下に突如現れたダンジョン。通称、『ちょいダン』。そこは、仕事帰りに『ちょい』と冒険を楽しむ場所。 大手町周辺の企業で働く若手サラリーマンたちが『ダンジョン』という娯楽を手に入れ、新たなライフスタイルを生み出していく―― これは、そんな日々を綴った物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

『星屑の狭間で』(チャレンジ・ミッション編)

トーマス・ライカー
SF
 政・官・財・民・公・軍に拠って構成された複合巨大組織『運営推進委員会』が、超大規模なバーチャル体感サバイバル仮想空間・艦対戦ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』を企画・企図(きと)し、準備して開催(かいさい)に及んだ。  そのゲーム大会の1部を『運営推進委員会』にて一席を占める、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』として、順次(じゅんじ)に公開している。  アドル・エルクを含む20人は艦長役として選ばれ、それぞれがスタッフ・クルーを男女の芸能人の中から選抜して、軽巡宙艦に搭乗(とうじょう)して操り、ゲーム大会で奮闘する模様を撮影されて、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』の中で出演者のコメント付きで紹介されている。  『運営推進本部』は、1ヶ月に1〜2回の頻度(ひんど)でチャレンジ・ミッションを発表し、それへの参加を強く推奨(すいしょう)している。  【『ディファイアント』共闘同盟】は基本方針として、総てのチャレンジ・ミッションには参加すると定めている。  本作はチャレンジ・ミッションに参加し、ミッションクリアを目指して奮闘(ふんとう)する彼らを描く…スピンオフ・オムニバス・シリーズです。  『特別解説…1…』  この物語は三人称一元視点で綴られます。一元視点は主人公アドル・エルクのものであるが、主人公のいない場面に於いては、それぞれの場面に登場する人物の視点に遷移(せんい)します。 まず主人公アドル・エルクは一般人のサラリーマンであるが、本人も自覚しない優れた先見性・強い洞察(どうさつ)力・強い先読みの力・素晴らしい集中力・暖かい包容力を持ち、それによって確信した事案に於ける行動は早く・速く、的確で適切です。本人にも聴こえているあだ名は『先読みのアドル・エルク』と言う。 追記  以下に列挙しますものらの基本原則動作原理に付きましては『ゲーム内一般技術基本原則動作原理設定』と言う事で、ブラックボックスとさせて頂きます。 ご了承下さい。 インパルス・パワードライブ パッシブセンサー アクティブセンサー 光学迷彩 アンチ・センサージェル ミラージュ・コロイド ディフレクター・シールド フォース・フィールド では、これより物語は始まります。

魔力は最強だが魔法が使えぬ残念王子の転生者、宇宙船を得てスペオペ世界で個人事業主になる。

なつきコイン
SF
剣と魔法と宇宙船 ~ファンタジーな世界に転生したと思っていたが、実はスペースオペラな世界だった~ 第三王子のセイヤは、引きこもりの転生者である。 転生ボーナスを魔力に極振りしたら、魔力が高過ぎて魔法が制御できず、残念王子と呼ばれ、ショックでそのまま、前世と同じように引きこもりになってしまった。 ある時、業を煮やした国王の命令で、セイヤは宝物庫の整理に行き、そこで、謎の球体をみつける。 試しに、それに魔力を込めると、宇宙に連れ出されてしまい、宇宙船を手に入れることになる。 セイヤの高過ぎる魔力は、宇宙船を動かすのにはぴったりだった。 連れて行かれたドックで、アシスタントのチハルを買うために、借金をしたセイヤは、個人事業主として宇宙船を使って仕事を始めることにする。 一方、セイヤの婚約者であるリリスは、飛んでいったセイヤを探して奔走する。 第三部完結

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第二部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。 宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。 そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。 どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。 そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。 しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。 この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。 これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。 そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。 そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。 SFお仕事ギャグロマン小説。

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

処理中です...