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第二章
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しおりを挟むJは十八歳になると自治体警察に入った。
その宣言を受けた日はJが久しぶりに家にいて、ジャックの隣に座って腕を組んでいた。
丁度双子の誕生日の前日だった。
私は学習を終えてジャックの横を陣取るように床に座り、海洋図鑑を流し見していた。
「自治体警察の隊長になるよ。」
Jが椅子を傾けてふんぞり返った姿勢で言った。
「―自治体警察、Jが?警察、州警察じゃなくて?」
ジャックは元々聞いていたようで驚く様子は見受けられなかったが私は大いに驚いた。
しかしJは私に顔を向け真面目な顔で頷いた。
Jは私の横にきて床に座り、私が知る州警察と自治体警察についてより詳しく説明をしてくれた。
「各州警察はかなり仲が悪い、そして州警察と自治体警察も仲が悪い、これは周知の事実だ。
海上都市の三つの州ごとにある州警察は組織の造りも違えば各トップもそれぞれ別の人物だ。
現場を練り歩くというよりかは如何に犯罪を増やさないか、どういった警備体制を採用すべきかといった事柄を考える為の戦略的警察組織というほうが正しいな。
各州のトップはエリート中のエリート、その下にいる人物たちいずれも皆エリート思想のエリート出身と思ってくれていい。
州警察は州を超えての犯罪者追跡を禁止している。
『警備体制を崩すから』というのが理由だそうだ。
そこで自治体警察の出番となる。
自治体警察は三州全てを一つの機関で警備し、州のどこだろうと関係なく駆けつけられる。
つまり国全体を一つとして考え守る機関になる。
荒事は多いが州警察よりも国民に頼りにされている機関でもあるな。
組織としては二人のトップがいて、その下に三人の隊長、隊長直下に十人から二十人で形成された隊がある。組織全体を見ると隊員数は百人超えれば良いほうだ。
州警察に比べると規模が小さい。ただ規模が小さい分かなり動きやすい。
そこに俺は入る。で、隊長になる。」
「危なくないの?…それ」
Jは身体能力が高いが、犯罪者を捕まえるという行為はそれだけで務まるものではないだろう。
危険だと誰もが想像できる。Jが怪我をするのは嫌だなと思った。
「危なくても大丈夫だろ。」
何の根拠もなくあっけらかんと言うJを見て「ああ、こういう人だったな」と、昔のJを思い出した。
「基本家から通うし、何かあれば言ってくれていいから。」
そういってJは部屋を出て行った。
ジャックは「相変わらずだねえ」と楽しそうに机に向かいながら笑っていて、私も呆れた顔をしながら笑った。
翌日、Jは宣言通り自治体警察に入り、隊から支給されたという詰襟の紺色でまとめられた隊服姿を見せてくれた。
双子は母に進路について話していたらしく、その日初めて四人で食事をした。
双子が十八歳になり針路を定めたお祝いだった。
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