蟠-ワダカマル-

常盤

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最も幸せで最も虚無な日

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11月30日に誕生日を迎えた私だが、
気持ち的にはそこそこ浮かれていた。

一年に一度の自分が主役の日。

ハロウィンやクリスマスなんかの、誰もが主役の日ではなく、自分が中心になれる日というのは一般的に生きている中でそうそうない。

SNSやメールでお祝いをたくさんの人から貰い、
道行く中で知り合いに会うと直接言葉を貰い、
何人かからはプレゼントまで貰った。


その時、最高に幸せを感じるのだ。



しかし、
弄れた私はそれと同時に虚無を覚える。

祝われるとはどういうことなのかと。

その人にとって私が祝ってあげられるような人なのかどうか、その人の中で私がどれだけ大切な人の位置付けであるのか、すぐに考えてしまう。

全員から好かれたい欲望はあるが、
万人受けする性格や容姿はもっていないのだから、それは無理だと分かっている。
ならば、その祝ってくれた人々には私は好かれていると認知してもいいのか、否か。

いや、きっと社交辞令なのではないかとよく考える。

自分もこの人からお祝いメッセージを貰ったのだから、とりあえずお返しに、と。そういった社交辞令は【好いている】に含まれるのか否か。




私は自分に対する〔好意的な言葉〕を
如何せん真っ直ぐに受け止められない。




SNSも含めて、
今まで生きてきた中で
本当にたくさんの人から祝われた。
本当にたくさんの幸せを貰った。
そして、
本当にたくさんの虚無が訪れた。


祝ってくれた人の数の分だけ、
虚無が訪れる仕様の思考をしていたものだから、





最高に幸せで最高に虚無を感じた。







そんな、21歳の誕生日だった。


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