4 / 8
最も幸せで最も虚無な日
しおりを挟む11月30日に誕生日を迎えた私だが、
気持ち的にはそこそこ浮かれていた。
一年に一度の自分が主役の日。
ハロウィンやクリスマスなんかの、誰もが主役の日ではなく、自分が中心になれる日というのは一般的に生きている中でそうそうない。
SNSやメールでお祝いをたくさんの人から貰い、
道行く中で知り合いに会うと直接言葉を貰い、
何人かからはプレゼントまで貰った。
その時、最高に幸せを感じるのだ。
しかし、
弄れた私はそれと同時に虚無を覚える。
祝われるとはどういうことなのかと。
その人にとって私が祝ってあげられるような人なのかどうか、その人の中で私がどれだけ大切な人の位置付けであるのか、すぐに考えてしまう。
全員から好かれたい欲望はあるが、
万人受けする性格や容姿はもっていないのだから、それは無理だと分かっている。
ならば、その祝ってくれた人々には私は好かれていると認知してもいいのか、否か。
いや、きっと社交辞令なのではないかとよく考える。
自分もこの人からお祝いメッセージを貰ったのだから、とりあえずお返しに、と。そういった社交辞令は【好いている】に含まれるのか否か。
私は自分に対する〔好意的な言葉〕を
如何せん真っ直ぐに受け止められない。
SNSも含めて、
今まで生きてきた中で
本当にたくさんの人から祝われた。
本当にたくさんの幸せを貰った。
そして、
本当にたくさんの虚無が訪れた。
祝ってくれた人の数の分だけ、
虚無が訪れる仕様の思考をしていたものだから、
最高に幸せで最高に虚無を感じた。
そんな、21歳の誕生日だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
美人官能小説家・赤崎火凛の食レポ
赤崎火凛(吉田定理)
エッセイ・ノンフィクション
美人の官能小説家・赤崎火凛(あかざき かりん・24歳)が食レポするだけ。絶頂しません。たぶん絶対しません。
*店名は出しませんが実際に食べた料理です。
*外食したときに不定期で更新する予定です。
*代表作はR18のほうなので、18歳以上の方はぜひそちらも。
徒然なるままに
猫田けだま
エッセイ・ノンフィクション
わたしが体験した、ちょっと心に残った出来事です。エッセイ風だったり、物語風だったり、ブログだったり、形式にとらわれず、書きたいことを書きたいままに描いた日記。
ジョルジュ・シムノン著「七人の娘の家」を、無理やりミステリーとして読んでみる
H・カザーン
エッセイ・ノンフィクション
メグレ警視シリーズでおなじみの作家ジョルジュ・シムノンによる中編小説「七人の娘の家」を読みながら、なぜこういう構成になっているのかを考えました。
ミステリーではありませんが、フランスのノルマンディーを舞台とした家族劇を楽しく解析してみましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる