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赤竜の城塞
舞い降りるは純白 (2)
しおりを挟む「いくぞ」
足元に転がっていた水撃銃を拾って、ケントは後ろを振り返る。ワンボックスに転がっていた武器でそれぞれ武装した老兵達が、肘を小さく畳んだ海兵式の敬礼を返してよこした。
「おい、ミルドレッドがおらんぞ?」
「お嬢ちゃん、金髪のスカしたやつを見なかったか?」
どこかやられたのか、片膝をついているクリスにケントは駆け寄った。
「すみません、油断を……首魁を取り逃がしてしまいました」
「いいさ、どうせ行き先は決まっている」
武装を整えたケント達がクリスの援護に駆けつけたときには、八割がた勝負はついていた。車外で四人、車内で一人の営業部員がのびている。ケントに肩を撃たれ、車内でのたうち回っている一人を除く四人はクリスの手柄だ。
「大丈夫か?」
メイド服のエプロンに丸い焦げ穴を見つけて、ケントはクリスの肩に手を伸ばした。
「左上腕の出力調整にもう二十秒ください、火薬式の銃なんて想定外で……申し訳ありません」
そう言ってクリスがごそごそと胸元に手をやると、ひしゃげたホローポイント弾をつまみだす。クリスの手のひらで転がる鉛玉を見ながら、ケントはギリと奥歯を噛みしめた。
「すまない」
「どうしてマツオカ様が謝るんです?」
「いや、だがすまなかった」
程なくしてエレベーターに電力が戻ると、数万クレジット分の生野菜サラダと共にケントたちは港湾区域に到着した。
「集光ライフルとエネパックが二本づつ、ちょっと頼りないですねえ」
「贅沢言うな、遅いとお嬢にどやされる」
「まあコレに頼るような事態になっていれば、こっちに勝ち目はないだろう」
「言うなよタナカ、我慢しとったのに」
ケントが運転するワンボックスの後部座席で、総務部の老兵がタバコ片手に作戦会議と言う名の雑談を楽しそうに繰り広げている。
「マツオカさま、これをスカーレット様からお預かりしております」
助手席でロングスカートの腿をたくし上げたクリスが、スカーレットの愛銃をホルスターごと外してケントに差し出した。
「通信機は?」
バカでかい熱線銃を受け取りながら、ケントはクリスに尋ねる。
「お主の宝物と交換してやるゆえ、さっさと助けにまいれ。と、伝言も承っております」
「そうか」
その軽口を伝言できるくらいなら、スカーレットは負ける気がないと言うことだ。
「俺の場所はどうやって?」
「どうやって? マツオカさまのお腹の中の発振器を追いかけました、その後、倉庫でハッキングしたカメラでお姿を確認して……」
そう言ってクリスがポケットからハンカチを出すと、ケントの額の傷口に手を伸ばす。
「大丈夫だ、ありがとう」
右手を上げて押し留め、ケントは小さく笑ってみせる。
「ノエルが大層怒っておりました、マスターに酷いことをした人の顔は不揮発領域に記録したから、絶対に許さないとかなんとか」
「まあ、俺から言っておく、あいつは代わりに前歯がなくなったからおあいこだ」
ノエルの事だ、あの見張りの若者の入院先で、医療マシンをハッキングして凄くひどい目に合わせるくらい朝飯前だ、やられた方はたまったもんじゃないだろうが。
「ノエルは?」
「もうそろそろ、お父様が組み上げる頃合いかと」
「そうか」
事務所まであと五分というところで、ケント達は乗ってきたワンボックスを止め、無人トラックに乗り換えた。
非常運転モードを立ち上げると、コンソールボックスからハンドルが生えてくる。スペックはノエルの方が上だというが、ドアノブに手をかけた途端にトラックをハッキングする姉の方も大したものだ。
「すごいな、お嬢ちゃん」
「ありがとうございます、褒めてもなんにもでませんよ?」
「いてて、まったまった、降参。タンマタンマ」
「踊り子にはお手を触れないでくださいまし?」
クリスの尻をなでたグエンが義手を乗っ取られ、自分に自分でアイアンクローをキメるのを見て皆が爆笑する。
「じゃあ、手はず通りに頼む」
「ああ、任せたまえ」
事務所までのカメラを片っ端からハッキングしたクリスが、運転席には誰も乗っていないという情報と映像を送り込む。
もし見張りがいても直接見えない位置で、荷台からケントとクリスが降りると、事務所に向かって歩きだした。
「さて、行こうか」
密閉式のプレハブ造りの事務所の前に二人、見張りが立っているのが見える。一人がこちらを見つけて指をさすのをみながらケントは小さくつぶやいた。
「たのむぜ、爺さんたち」
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