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箱の中.2
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「え、あの、あなたは誰…ですか?」
どもりながらもなんとか言葉をひねり出すことができた。
「あの、私はツバキ…カノウ ツバキと言います!お願いします、ここから出してください!」
「カノウさん…ね。わかりました」
俺は力いっぱい握りしめていたであろう包丁から若干力を抜き、段ボールの蓋部分の隙間に刃先を立てる。
が、刺した刃をすぐに抜く。
すぐに助けてあげようという気持ちもあるが、まだ相手がどういう状況なのかはしっかりとわかってはいない。
感染してしまっている可能性があってここに押し込まれたのか、はたまた何か悪事を働き閉じ込められているのか。
開けてしまってもいいのだろうか。
もしかしたら開けた瞬間にとびかかってくるかもしれない。
開けるのなら何か身を守る対策をしてからの方がいいのではないか。
そんなことを考えていると、箱の中からカノウさんが問いかけてくる。
「どうかしましたか?外は開けられない状況なんですか?」
どう答えたものか。
自身の身の安全を最優先にするならば、ここで置き去りにすることが一番であることは確かだ。
襲われる心配もないし、今後背負うであろういろいろなリスクもすべて回避できる。
しかし、そこまで自身が冷徹になることもできずにいる。
というか他人の心配というよりも、これからずっと人一人を置き去りにして見捨てたという事への罪悪感を背負いたくはなかった。
ある意味、未来の自分の精神安定のための投資とでもいう感じだろうか。
そこまで考えると、もう開けるという選択肢しかない。
開ける。
そう決めたが、いくつか開けるにあたっての条件は付けさせてもらわないといけない。
まずは未来より今の安心と安全が優先だ。
そこまで考えてようやく口を開く。
「いえ、特にそういった状況ではないです。ただ、開けるにあたって3つのお願いというか条件があります。それを飲んでもらうことができるなら開けたいと思いますがそれでもいいですか?」
できる限り優しく言い諭すように言ったつもりだがどうだろうか。
カノウさんは、俺の言った言葉をしっかりと受け止めたのであろう、一拍置いてからしっかりとした口調で「はい」と答えた。
「私にできることならなんでもします。それくらいは当然のことだと思いますので」
俺はそれを聞いて少しだけ緊張を緩める。
良かった…見殺しにするなんてできないからな。
内心で息を軽く吐き、話を続ける。
どもりながらもなんとか言葉をひねり出すことができた。
「あの、私はツバキ…カノウ ツバキと言います!お願いします、ここから出してください!」
「カノウさん…ね。わかりました」
俺は力いっぱい握りしめていたであろう包丁から若干力を抜き、段ボールの蓋部分の隙間に刃先を立てる。
が、刺した刃をすぐに抜く。
すぐに助けてあげようという気持ちもあるが、まだ相手がどういう状況なのかはしっかりとわかってはいない。
感染してしまっている可能性があってここに押し込まれたのか、はたまた何か悪事を働き閉じ込められているのか。
開けてしまってもいいのだろうか。
もしかしたら開けた瞬間にとびかかってくるかもしれない。
開けるのなら何か身を守る対策をしてからの方がいいのではないか。
そんなことを考えていると、箱の中からカノウさんが問いかけてくる。
「どうかしましたか?外は開けられない状況なんですか?」
どう答えたものか。
自身の身の安全を最優先にするならば、ここで置き去りにすることが一番であることは確かだ。
襲われる心配もないし、今後背負うであろういろいろなリスクもすべて回避できる。
しかし、そこまで自身が冷徹になることもできずにいる。
というか他人の心配というよりも、これからずっと人一人を置き去りにして見捨てたという事への罪悪感を背負いたくはなかった。
ある意味、未来の自分の精神安定のための投資とでもいう感じだろうか。
そこまで考えると、もう開けるという選択肢しかない。
開ける。
そう決めたが、いくつか開けるにあたっての条件は付けさせてもらわないといけない。
まずは未来より今の安心と安全が優先だ。
そこまで考えてようやく口を開く。
「いえ、特にそういった状況ではないです。ただ、開けるにあたって3つのお願いというか条件があります。それを飲んでもらうことができるなら開けたいと思いますがそれでもいいですか?」
できる限り優しく言い諭すように言ったつもりだがどうだろうか。
カノウさんは、俺の言った言葉をしっかりと受け止めたのであろう、一拍置いてからしっかりとした口調で「はい」と答えた。
「私にできることならなんでもします。それくらいは当然のことだと思いますので」
俺はそれを聞いて少しだけ緊張を緩める。
良かった…見殺しにするなんてできないからな。
内心で息を軽く吐き、話を続ける。
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