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第十九章 旅に出る弟子と騎士
442.小休止
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ドワーフの隠れ里を出てからの旅は想像以上に順調で、途中魔物に出会うこともなく予定していたティールン村へ辿り着くことができた。
小さな村だけど、港町リオスカールまでの中間地点として休む人が多いらしい。
俺たちも元々この村で休むと決めていた。
「旅のお方、宿ならウチで休んでってくださいよ」
村とは言っても、港町リオスカールへ向かう旅人たちにとってちょうどいい位置にあるせいか宿の件数もいくつかあるらしい。
宿屋の前で客引きをしている姿が目立つ。
「別にこだわりがあるって訳じゃないんだけど、どうする?」
「ゆっくりと眠ることができればどこでも構わないんだけど……」
俺たちも何人かに声をかけられたが、まだどこの宿にするかは決めかねていた。
通りを進んでいくと、規模は小さいが直感的に安全だと分かる建物が見えてきた。
普通に見ればなんてことはない木造二階建ての建物なんだけど、この宿屋には間違いなく良い結界が張られているのが分かる。
「ウルガー、この宿にしよう」
「俺は別にどこでも構わないけど、レイヴンの言い方だと何かあるってことか?」
「この宿、結界が張られてる。魔法使いがかけたものだろうけど、とても精密な魔力を感じる」
「へえー? 優秀な魔法使いってことか?」
結界と簡単に言うけど、その丈夫さや精密さは術者に大きく影響される。
師匠も色々な結界をさっと作っていたけど、あの人の結界も実は精密でとても頑丈なものだ。
いいかげんな性格とは違って、簡単に破ることはできない綿密さを兼ね備えていた。
「師匠……いや、それ以上かもしれない。だから、この宿に泊まると安全性が高い」
「じゃあ、お値段も高いのかな?」
どれどれとウルガーが俺の指定した宿へ近づいていく。
宿の前には、十歳くらいの可愛らしい女の子が立っていた。
「こんにちは。部屋は空いているかな?」
「いらっしゃいませ! 二名様ですか? お部屋は空いてますよ。どうぞ」
女の子はにこやかに笑って中へ案内してくれる。
宿の中も小綺麗にはしてあるけど、別に新しい宿という訳でもない。
なのに、とても澄んだ空気が流れていた。
「お兄ちゃん、お客様だよ」
「ありがとう、リリヤル」
リリヤルと呼ばれた女の子はにこやかに笑って俺たちをカウンターまで案内してくれた。
彼女は赤茶の髪を肩の辺りで切り揃えた女の子で、にこやかに笑っているけど……もしかして?
「リリヤルは目が不自由で、見えるのですがぼんやりとしか見えないんです。僕はリリヤルの兄のルルドルです」
挨拶をしてくれた二人は、兄妹らしい。
ご両親が見当たらないから、もしかしたら戦争孤児なのかもしれない。
お兄さんは赤茶の髪を結んで垂らしていて、身に着けているエプロンがところどころ汚れていた。
「ご兄妹だけでこの宿を?」
「はい。ご不安かもしれませんが……」
「いや、そんなことないよ。妹さんも可愛いしさ。二部屋お願いします」
ウルガーがお願いすると、兄と妹は顔を合わせて微笑みながら俺たちを案内してくれた。
+++
「うん、室内もキレイだ。これで流行ってないのはもったいない気がするな」
今日は休むだけだと決めたので、室内にいるのは俺だけだ。
結界が強ければ、夜も安全に休むことができるのでありがたい。
何もないはずだけど、眠っている間に室内に入られて襲われないってだけでゆっくりと休める。
小さな村だけど、港町リオスカールまでの中間地点として休む人が多いらしい。
俺たちも元々この村で休むと決めていた。
「旅のお方、宿ならウチで休んでってくださいよ」
村とは言っても、港町リオスカールへ向かう旅人たちにとってちょうどいい位置にあるせいか宿の件数もいくつかあるらしい。
宿屋の前で客引きをしている姿が目立つ。
「別にこだわりがあるって訳じゃないんだけど、どうする?」
「ゆっくりと眠ることができればどこでも構わないんだけど……」
俺たちも何人かに声をかけられたが、まだどこの宿にするかは決めかねていた。
通りを進んでいくと、規模は小さいが直感的に安全だと分かる建物が見えてきた。
普通に見ればなんてことはない木造二階建ての建物なんだけど、この宿屋には間違いなく良い結界が張られているのが分かる。
「ウルガー、この宿にしよう」
「俺は別にどこでも構わないけど、レイヴンの言い方だと何かあるってことか?」
「この宿、結界が張られてる。魔法使いがかけたものだろうけど、とても精密な魔力を感じる」
「へえー? 優秀な魔法使いってことか?」
結界と簡単に言うけど、その丈夫さや精密さは術者に大きく影響される。
師匠も色々な結界をさっと作っていたけど、あの人の結界も実は精密でとても頑丈なものだ。
いいかげんな性格とは違って、簡単に破ることはできない綿密さを兼ね備えていた。
「師匠……いや、それ以上かもしれない。だから、この宿に泊まると安全性が高い」
「じゃあ、お値段も高いのかな?」
どれどれとウルガーが俺の指定した宿へ近づいていく。
宿の前には、十歳くらいの可愛らしい女の子が立っていた。
「こんにちは。部屋は空いているかな?」
「いらっしゃいませ! 二名様ですか? お部屋は空いてますよ。どうぞ」
女の子はにこやかに笑って中へ案内してくれる。
宿の中も小綺麗にはしてあるけど、別に新しい宿という訳でもない。
なのに、とても澄んだ空気が流れていた。
「お兄ちゃん、お客様だよ」
「ありがとう、リリヤル」
リリヤルと呼ばれた女の子はにこやかに笑って俺たちをカウンターまで案内してくれた。
彼女は赤茶の髪を肩の辺りで切り揃えた女の子で、にこやかに笑っているけど……もしかして?
「リリヤルは目が不自由で、見えるのですがぼんやりとしか見えないんです。僕はリリヤルの兄のルルドルです」
挨拶をしてくれた二人は、兄妹らしい。
ご両親が見当たらないから、もしかしたら戦争孤児なのかもしれない。
お兄さんは赤茶の髪を結んで垂らしていて、身に着けているエプロンがところどころ汚れていた。
「ご兄妹だけでこの宿を?」
「はい。ご不安かもしれませんが……」
「いや、そんなことないよ。妹さんも可愛いしさ。二部屋お願いします」
ウルガーがお願いすると、兄と妹は顔を合わせて微笑みながら俺たちを案内してくれた。
+++
「うん、室内もキレイだ。これで流行ってないのはもったいない気がするな」
今日は休むだけだと決めたので、室内にいるのは俺だけだ。
結界が強ければ、夜も安全に休むことができるのでありがたい。
何もないはずだけど、眠っている間に室内に入られて襲われないってだけでゆっくりと休める。
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