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第十九章 旅に出る弟子と騎士
434.召喚に応じたのは
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暫く森の中を進んでいたけれど、急に景色の開けた場所へ出る。
パッと見は何もないように見えるけど、開けた道をこのまま進めば結界にぶつかるのが分かる。
よく見れば視界の先の空間が揺らいでいるんだけど、魔力がないと分かりづらいだろうな。
しかも、かなり精密な結界だからこうして意識しないと見逃してしまいそうになる。
「レイヴンさんは気づかれたようですが、あとは真っすぐ進めばドワーフの隠れ里があります。人間が結界へ触れると警戒されてしまうので、精霊魔法で精霊を呼び出してください」
「なるほど。精霊魔法を使えるのはエルフだけ。ウルガーがいたとしても何とかなるかもしれません」
「俺は……そうだな。敵意はありませんよー? ただの旅人ですよーって両手でもあげときますか」
ウルガーが両腕を頭の後ろへ組んで、俺へお任せするとでも言うように視線で訴えかけてくる。
俺とレクシェルさんもその様子を見て笑いあう。
「私はここで失礼させていただきます。少しの間でしたが、お二人とご一緒できて嬉しかったです」
「こちらこそ、色々ありがとうございました」
「名残惜しいですけど、俺のレクシェルさんがドワーフのお嫁さんになるのは反対なんで。レクシェルさんもお気をつけて!」
ウルガーの軽口にも笑いながら、レクシェルさんは俺たちへ軽く頭を下げると微笑を残して去っていった。
最初から優しいお姉さんという雰囲気だったけど、その印象は今も変わらないな。
「どうせならもっと一緒に旅がしたかったなー。騎士団だと男連中ばっかりだろ? あんな美人なお姉さんと一緒に過ごせるなんて機会はないからな」
「ウルガーまで師匠みたいなこと言うなよ。おっさんくさい」
「ひどっ。俺とレイヴンじゃ年はたいして変わらないだろ? おっさんなのは団長とテオドール様だけで枠は埋まってるって」
「はいはい。軽口はその辺にしておいて。今から精霊を呼び出す」
俺はそういうと、意識を集中させる。
精霊力を使う時は、見た目も変わるから人前で堂々と使うことはできない。
使うのは俺の力のことを知っている人の前のみだけど、ドワーフの警戒心を解いて協力してもらうためだ。
今は出し惜しみをしている場合じゃない。
「いつ見ても、不思議だよな。テオドール様が惚れこむのも分かる気がする」
ウルガーがなんか恥ずかしいことを言っているけど、無視だ、無視。
俺の髪色は黒からブロンドへと変化し、左目が焦げ茶から父さんとお揃いのセルリアンブルーになる。
「力を貸して……!」
俺の願いと共に現れるのは、風の精霊である妖精さんの予定だったんだけど……妖精さんと共に、ふわりと浮かぶ少年が一緒に現れる。
「呼んだ?」
「え?」
「……え、あれ……シルフィード様?」
シルフィード様は肩口で揃えられた浅緑色の髪を持ち、ふわりとした絹のような白のローブと膝丈のパンツを身に着けた愛らしく美しい少年の姿で現れる。
その瞳はいつも悪戯っぽくヒスイのように輝いていて、時には悪戯な表情を見せるお方だ。
俺とウルガーが驚いている側で、妖精さんもふわふわと飛んでいる。
妖精さんも来たけど、シルフィード様も来てくれたってことかな?
「あの……シルフィード様がいるとレイヴンが大分消耗するのでは?」
「お、騎士君はレイヴンの心配をしてあげてるんだ? 優しいね。大丈夫、この子も成長したし僕を呼ぶ程度じゃそこまですぐに消耗しないよ」
「それはシルフィード様のおっしゃる通りですけど、どうしてこちらに?」
俺が質問すると、シルフィード様はクスクスと笑いながら妖精さんと一緒にスーッとドワーフの隠れ里の方向へ進んでいく。
俺とウルガーは困惑しながら、その後を追いかけていく。
「僕がいた方が分かりやすいだろうと思って。それに、サラマンダーにも改めて言いたいことがあるんだ」
「それは、ありがとうございます?」
「精霊王様がいいっていうならたぶんいいんじゃない? 俺にもさっぱりだけど」
ウルガーもお手上げと両手をあげるが、もう結界は目の前に迫ってきている。
先に到着したシルフィード様がスッと白い腕を伸ばして結界へ触れると、周囲の結界が小刻みに揺らぎだした。
パッと見は何もないように見えるけど、開けた道をこのまま進めば結界にぶつかるのが分かる。
よく見れば視界の先の空間が揺らいでいるんだけど、魔力がないと分かりづらいだろうな。
しかも、かなり精密な結界だからこうして意識しないと見逃してしまいそうになる。
「レイヴンさんは気づかれたようですが、あとは真っすぐ進めばドワーフの隠れ里があります。人間が結界へ触れると警戒されてしまうので、精霊魔法で精霊を呼び出してください」
「なるほど。精霊魔法を使えるのはエルフだけ。ウルガーがいたとしても何とかなるかもしれません」
「俺は……そうだな。敵意はありませんよー? ただの旅人ですよーって両手でもあげときますか」
ウルガーが両腕を頭の後ろへ組んで、俺へお任せするとでも言うように視線で訴えかけてくる。
俺とレクシェルさんもその様子を見て笑いあう。
「私はここで失礼させていただきます。少しの間でしたが、お二人とご一緒できて嬉しかったです」
「こちらこそ、色々ありがとうございました」
「名残惜しいですけど、俺のレクシェルさんがドワーフのお嫁さんになるのは反対なんで。レクシェルさんもお気をつけて!」
ウルガーの軽口にも笑いながら、レクシェルさんは俺たちへ軽く頭を下げると微笑を残して去っていった。
最初から優しいお姉さんという雰囲気だったけど、その印象は今も変わらないな。
「どうせならもっと一緒に旅がしたかったなー。騎士団だと男連中ばっかりだろ? あんな美人なお姉さんと一緒に過ごせるなんて機会はないからな」
「ウルガーまで師匠みたいなこと言うなよ。おっさんくさい」
「ひどっ。俺とレイヴンじゃ年はたいして変わらないだろ? おっさんなのは団長とテオドール様だけで枠は埋まってるって」
「はいはい。軽口はその辺にしておいて。今から精霊を呼び出す」
俺はそういうと、意識を集中させる。
精霊力を使う時は、見た目も変わるから人前で堂々と使うことはできない。
使うのは俺の力のことを知っている人の前のみだけど、ドワーフの警戒心を解いて協力してもらうためだ。
今は出し惜しみをしている場合じゃない。
「いつ見ても、不思議だよな。テオドール様が惚れこむのも分かる気がする」
ウルガーがなんか恥ずかしいことを言っているけど、無視だ、無視。
俺の髪色は黒からブロンドへと変化し、左目が焦げ茶から父さんとお揃いのセルリアンブルーになる。
「力を貸して……!」
俺の願いと共に現れるのは、風の精霊である妖精さんの予定だったんだけど……妖精さんと共に、ふわりと浮かぶ少年が一緒に現れる。
「呼んだ?」
「え?」
「……え、あれ……シルフィード様?」
シルフィード様は肩口で揃えられた浅緑色の髪を持ち、ふわりとした絹のような白のローブと膝丈のパンツを身に着けた愛らしく美しい少年の姿で現れる。
その瞳はいつも悪戯っぽくヒスイのように輝いていて、時には悪戯な表情を見せるお方だ。
俺とウルガーが驚いている側で、妖精さんもふわふわと飛んでいる。
妖精さんも来たけど、シルフィード様も来てくれたってことかな?
「あの……シルフィード様がいるとレイヴンが大分消耗するのでは?」
「お、騎士君はレイヴンの心配をしてあげてるんだ? 優しいね。大丈夫、この子も成長したし僕を呼ぶ程度じゃそこまですぐに消耗しないよ」
「それはシルフィード様のおっしゃる通りですけど、どうしてこちらに?」
俺が質問すると、シルフィード様はクスクスと笑いながら妖精さんと一緒にスーッとドワーフの隠れ里の方向へ進んでいく。
俺とウルガーは困惑しながら、その後を追いかけていく。
「僕がいた方が分かりやすいだろうと思って。それに、サラマンダーにも改めて言いたいことがあるんだ」
「それは、ありがとうございます?」
「精霊王様がいいっていうならたぶんいいんじゃない? 俺にもさっぱりだけど」
ウルガーもお手上げと両手をあげるが、もう結界は目の前に迫ってきている。
先に到着したシルフィード様がスッと白い腕を伸ばして結界へ触れると、周囲の結界が小刻みに揺らぎだした。
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