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第十八章 用意周到な魔塔主と腹が立つ弟子
425.アスシオからの説明
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陛下は俺たちの様子を見ながら、静かに言葉を続ける。
「今回はディートリッヒが私の側に残ってくれるのでな。戦力的には申し分ない。魔塔ともいつでも連携が取れるように今まで準備もしてきたそうなのでな」
「陛下の仰る通りです。団長はこの日のために全て準備をしてきました。ですので、国の守りの面は全く問題ありません。聖女様のご協力も取り付けてあります」
ウルガーもきっぱりと言い切るということは、今回のことは俺の知らないところで入念に準備されてきたことなのだろう。
陛下の命であることもそうだけど、ウルガーやディートリッヒ様の思いが伝わってくる。
そして、聖女様も……みんな俺のことを気にしてくれているのが痛いほど分かるからこそ俺も決意しなくてはならない。
「畏まりました。必ずや魔塔主テオドール・バダンテールをアレーシュに連れて帰ります」
「ああ。頼んだぞ、レイヴン。そして、ウルガー。出発は準備を終えてすぐ頼む。数少ない手がかりだが、目撃情報が出た場所への行き方はアスシオから説明させよう」
「はい、お任せください」
今度はアスシオ様が目的地についてお話を始めた。
テオのことはアレーシュでも陛下が秘密裏に人を派遣して探させていたことは知っていた。
ただ、有力な情報は俺の耳には入ってこなかったので今まで何もないのだと思っていたのだけど……ついに情報を掴んだということだ。
「テオドールが目撃されたという場所は、ここから遠い地にあると言われるギルディアという都市だ。都市とは言えど幾つもの街が入るくらいの大型都市で、ギルドと呼ばれる組織が議会によって都市を治めているらしい」
「王が治めている国ではなく、あくまで都市なのですね。確かにこの辺りでは聞いたことがない名前です」
「我が国から旅立ったとして、船を乗り継いでいってもひと月程度はかかるだろう。陛下に聞いて集められる情報は全て集めたが、それでも十分とは言えない」
俺が小さな頃いた場所でさえ、アレーシュから一週間程度だ。
ひと月だなんて、どれくらいの距離なのか検討もつかない。
「本来は現地まで見に行ければ良かったのですが、陛下の手の者をその距離まで行かせる訳にはいきません。遠出できるだけの実力と信頼を兼ね備えた者に行ってもらう必要があるという判断です」
「団長も最初は自分が行くつもりだったようですが、やはり二強の一人が欠けた今その事実を他の国へ広める訳にはいかないと判断したようです」
「周辺諸国が現在静かであっても、テオドールの存在は大きい。テオドールの存在だけで周辺諸国は我が国へ手出しができないのだ。故に国外へディートリッヒを出すわけにもいかなくてな」
陛下の言うことはもっともだ。テオとディートリッヒ様は戦争で顔も知られている人たちだ。
大きく動くことは、周辺諸国との関係悪化につながる可能性がある。
「路銀や装備などは準備済みです。旅の支度を整えたらすぐに出発を。魔塔と騎士団にもすでに二人の出立は伝えてありますので」
「私はほぼ完了しているので、後はレイヴンの支度を待てば出発できます」
アスシオ様の言葉に二人で顔を見合わせて頷く。
ウルガーはそのつもりで準備していたのだから、もういつでも出られるのだろう。
俺も自身の装備の見直しをして、一応魔塔に顔を出さないとな。
「では、二人とも。頼んだぞ」
「はっ!」
「必ずや」
俺たち二人で最敬礼を取り、テオを連れ帰ることを誓って、中庭を後にする。
暫くは無言で歩いていたけど、緊張がほどけたらしくウルガーがこっちを見て苦笑いする。
「しっかし、レイヴンは顔色一つ変えないのな。やっぱり無理してるよな」
「そんなつもりはないけど。陛下の命なら余計に果たさないと、アレーシュにとっても損失だし」
俺が言ってのけると、盛大なため息が聞こえてくる。
そして、いきなり額を指ではじかれた。
「今回はディートリッヒが私の側に残ってくれるのでな。戦力的には申し分ない。魔塔ともいつでも連携が取れるように今まで準備もしてきたそうなのでな」
「陛下の仰る通りです。団長はこの日のために全て準備をしてきました。ですので、国の守りの面は全く問題ありません。聖女様のご協力も取り付けてあります」
ウルガーもきっぱりと言い切るということは、今回のことは俺の知らないところで入念に準備されてきたことなのだろう。
陛下の命であることもそうだけど、ウルガーやディートリッヒ様の思いが伝わってくる。
そして、聖女様も……みんな俺のことを気にしてくれているのが痛いほど分かるからこそ俺も決意しなくてはならない。
「畏まりました。必ずや魔塔主テオドール・バダンテールをアレーシュに連れて帰ります」
「ああ。頼んだぞ、レイヴン。そして、ウルガー。出発は準備を終えてすぐ頼む。数少ない手がかりだが、目撃情報が出た場所への行き方はアスシオから説明させよう」
「はい、お任せください」
今度はアスシオ様が目的地についてお話を始めた。
テオのことはアレーシュでも陛下が秘密裏に人を派遣して探させていたことは知っていた。
ただ、有力な情報は俺の耳には入ってこなかったので今まで何もないのだと思っていたのだけど……ついに情報を掴んだということだ。
「テオドールが目撃されたという場所は、ここから遠い地にあると言われるギルディアという都市だ。都市とは言えど幾つもの街が入るくらいの大型都市で、ギルドと呼ばれる組織が議会によって都市を治めているらしい」
「王が治めている国ではなく、あくまで都市なのですね。確かにこの辺りでは聞いたことがない名前です」
「我が国から旅立ったとして、船を乗り継いでいってもひと月程度はかかるだろう。陛下に聞いて集められる情報は全て集めたが、それでも十分とは言えない」
俺が小さな頃いた場所でさえ、アレーシュから一週間程度だ。
ひと月だなんて、どれくらいの距離なのか検討もつかない。
「本来は現地まで見に行ければ良かったのですが、陛下の手の者をその距離まで行かせる訳にはいきません。遠出できるだけの実力と信頼を兼ね備えた者に行ってもらう必要があるという判断です」
「団長も最初は自分が行くつもりだったようですが、やはり二強の一人が欠けた今その事実を他の国へ広める訳にはいかないと判断したようです」
「周辺諸国が現在静かであっても、テオドールの存在は大きい。テオドールの存在だけで周辺諸国は我が国へ手出しができないのだ。故に国外へディートリッヒを出すわけにもいかなくてな」
陛下の言うことはもっともだ。テオとディートリッヒ様は戦争で顔も知られている人たちだ。
大きく動くことは、周辺諸国との関係悪化につながる可能性がある。
「路銀や装備などは準備済みです。旅の支度を整えたらすぐに出発を。魔塔と騎士団にもすでに二人の出立は伝えてありますので」
「私はほぼ完了しているので、後はレイヴンの支度を待てば出発できます」
アスシオ様の言葉に二人で顔を見合わせて頷く。
ウルガーはそのつもりで準備していたのだから、もういつでも出られるのだろう。
俺も自身の装備の見直しをして、一応魔塔に顔を出さないとな。
「では、二人とも。頼んだぞ」
「はっ!」
「必ずや」
俺たち二人で最敬礼を取り、テオを連れ帰ることを誓って、中庭を後にする。
暫くは無言で歩いていたけど、緊張がほどけたらしくウルガーがこっちを見て苦笑いする。
「しっかし、レイヴンは顔色一つ変えないのな。やっぱり無理してるよな」
「そんなつもりはないけど。陛下の命なら余計に果たさないと、アレーシュにとっても損失だし」
俺が言ってのけると、盛大なため息が聞こえてくる。
そして、いきなり額を指ではじかれた。
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