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番外短編 不可思議な廃城
11.全てが終わって
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聖女様の凛とした声が、暗闇の空間に響き渡る。
その声と同時に、光の波紋が空間いっぱいに広がっていく。
「ミネルファリア様の御力を――聖なる救済を!」
溢れる光が杖から溢れだす。その光は俺とテオにとっては暖かなものだけど、悪しき者にとっては自分の存在を消し去る恐ろしいものでしかない。
光は容赦なく廃城全体を包み込むように、辺り一帯広がっていく――
「やめろ、やめろ……あ、アァァァ……――」
この空間全てが光に包まれると、吸血鬼は跡形もなく消えてしまった。
「はー……えげつねぇ。砂も残らねぇとか」
「……ふぅ。残ったら蘇るでしょう? これでこの廃城も大丈夫でしょう。ミネルファリア様の慈悲のおかげね」
「ミネルファリア様に感謝を――でも、終わって良かったですよね。一時はどうなることかと思いましたけど」
俺と聖女様はこの世界を創造したと言われている女神ミネルファリアへの感謝を捧げ、お互いに微笑みあう。
テオは俺と聖女様を見ながら舌打ちして、俺と聖女様の間に割って入ってわざとらしく引き離してきた。
「何よ、もう。本当に気持ち悪いわね」
「気持ち悪いのは聖女サマのほうだろう? さっきみたいに野郎の時の方がまだマシなんだよ」
「師匠……今回は師匠が油断しきっていたのが原因なんですから! 反省してくださいね?」
「全部俺のせいかよ」
不服そうなテオには反省するように何度も注意するしかない。
俺が聞いてますか? とテオに向かって言い放つと、本当に仲良しよねと聖女様に笑われてしまった。
それでも失礼なテオの態度を改めさせようと強く注意していると、聖女様がそこまでよと軽く手を叩かれた。
テオに物申したいことは山ほどあるけど、無事に地下を脱出して三人でゆっくりと廃城を後にした。
+++
聖女からの依頼を終えた数日後――
魔塔主執務室に一つの荷物が届く。
その荷物をニヤニヤと楽しそうに抱えるテオを見ていると、とてつもない嫌な予感がする。
俺は無理矢理に荷物を奪って、安全確認の為です! と中身を確認する。
「でも、おかしいな……聖女様からの贈り物ならば問題ありませんよ……ね?」
神官が運んできた聖女様からの贈り物なのに、テオの様子がおかしいのが気になっていたんだけど……箱の中身を見て理解する。
「こ、これは……」
「なんだよ、驚かせてやろうと思ったのに。アイツ、服の趣味だけはいいよな。レイちゃんに似合ってたもんな」
「似合うって……これ、あの時の!」
俺が箱の中から拾い上げたのは、ふわふわとした羽の飾りだ。
天使を模したこの衣装は以前、女神を称える祭りで俺が身につけていたものだった。
「それと、新しいのも一緒にな?」
テオが楽しげに違う衣装も箱の中から拾い上げる。
こちらも上質な絹で作られているみたいで、丈は長い素材だけど羽織るだけのガウンっぽく見えるのに何故か透けている。
キラキラと反射が美しいのに、一枚で着用すると身体全体が透けて見えてしまうような衣装だった。
「綺麗ですけど……それ、一枚だけで着るものではないですよね?」
「これを着る時なんて限られているに決まってるだろ? 俺の前だけ、な」
テオがわざわざ俺の耳元に顔を寄せていうので、俺でも理解できる。
このスケスケ衣装をきて、恥ずかしいことでもさせるつもりなんだろう。
自然と顔を赤らめてしまうけど、そのうち怒りでワナワナと身体が震えてきた。
「だから大人しく引き受けたとでも言うつもりですか? この、変態魔法使いは!」
「んなこと言って、着てくれるんだろ? 絶対似合うってレイちゃんに」
「着心地は良さそうですけど、そんなスケスケなもの着られる訳ないでしょう! 眠る時にだって着ませんよ!」
「あー……やっぱり夜か? 楽しみだなァ?」
「人の話を聞いてます? 聞いてませんよね? じゃあ、この服は申し訳ありませんが……」
全身スケスケの目に毒な衣装、さっさと破いてしまった方がいい。
俺がテオの手から服を奪って本気で破ろうとすると、テオがおいおい! と慌てて俺からスケスケ服を取り上げる。
この服を着る時が来るのかどうかは……絶対に来ないけど、また別のお話。
<Fin>
その声と同時に、光の波紋が空間いっぱいに広がっていく。
「ミネルファリア様の御力を――聖なる救済を!」
溢れる光が杖から溢れだす。その光は俺とテオにとっては暖かなものだけど、悪しき者にとっては自分の存在を消し去る恐ろしいものでしかない。
光は容赦なく廃城全体を包み込むように、辺り一帯広がっていく――
「やめろ、やめろ……あ、アァァァ……――」
この空間全てが光に包まれると、吸血鬼は跡形もなく消えてしまった。
「はー……えげつねぇ。砂も残らねぇとか」
「……ふぅ。残ったら蘇るでしょう? これでこの廃城も大丈夫でしょう。ミネルファリア様の慈悲のおかげね」
「ミネルファリア様に感謝を――でも、終わって良かったですよね。一時はどうなることかと思いましたけど」
俺と聖女様はこの世界を創造したと言われている女神ミネルファリアへの感謝を捧げ、お互いに微笑みあう。
テオは俺と聖女様を見ながら舌打ちして、俺と聖女様の間に割って入ってわざとらしく引き離してきた。
「何よ、もう。本当に気持ち悪いわね」
「気持ち悪いのは聖女サマのほうだろう? さっきみたいに野郎の時の方がまだマシなんだよ」
「師匠……今回は師匠が油断しきっていたのが原因なんですから! 反省してくださいね?」
「全部俺のせいかよ」
不服そうなテオには反省するように何度も注意するしかない。
俺が聞いてますか? とテオに向かって言い放つと、本当に仲良しよねと聖女様に笑われてしまった。
それでも失礼なテオの態度を改めさせようと強く注意していると、聖女様がそこまでよと軽く手を叩かれた。
テオに物申したいことは山ほどあるけど、無事に地下を脱出して三人でゆっくりと廃城を後にした。
+++
聖女からの依頼を終えた数日後――
魔塔主執務室に一つの荷物が届く。
その荷物をニヤニヤと楽しそうに抱えるテオを見ていると、とてつもない嫌な予感がする。
俺は無理矢理に荷物を奪って、安全確認の為です! と中身を確認する。
「でも、おかしいな……聖女様からの贈り物ならば問題ありませんよ……ね?」
神官が運んできた聖女様からの贈り物なのに、テオの様子がおかしいのが気になっていたんだけど……箱の中身を見て理解する。
「こ、これは……」
「なんだよ、驚かせてやろうと思ったのに。アイツ、服の趣味だけはいいよな。レイちゃんに似合ってたもんな」
「似合うって……これ、あの時の!」
俺が箱の中から拾い上げたのは、ふわふわとした羽の飾りだ。
天使を模したこの衣装は以前、女神を称える祭りで俺が身につけていたものだった。
「それと、新しいのも一緒にな?」
テオが楽しげに違う衣装も箱の中から拾い上げる。
こちらも上質な絹で作られているみたいで、丈は長い素材だけど羽織るだけのガウンっぽく見えるのに何故か透けている。
キラキラと反射が美しいのに、一枚で着用すると身体全体が透けて見えてしまうような衣装だった。
「綺麗ですけど……それ、一枚だけで着るものではないですよね?」
「これを着る時なんて限られているに決まってるだろ? 俺の前だけ、な」
テオがわざわざ俺の耳元に顔を寄せていうので、俺でも理解できる。
このスケスケ衣装をきて、恥ずかしいことでもさせるつもりなんだろう。
自然と顔を赤らめてしまうけど、そのうち怒りでワナワナと身体が震えてきた。
「だから大人しく引き受けたとでも言うつもりですか? この、変態魔法使いは!」
「んなこと言って、着てくれるんだろ? 絶対似合うってレイちゃんに」
「着心地は良さそうですけど、そんなスケスケなもの着られる訳ないでしょう! 眠る時にだって着ませんよ!」
「あー……やっぱり夜か? 楽しみだなァ?」
「人の話を聞いてます? 聞いてませんよね? じゃあ、この服は申し訳ありませんが……」
全身スケスケの目に毒な衣装、さっさと破いてしまった方がいい。
俺がテオの手から服を奪って本気で破ろうとすると、テオがおいおい! と慌てて俺からスケスケ服を取り上げる。
この服を着る時が来るのかどうかは……絶対に来ないけど、また別のお話。
<Fin>
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いつもお読みいただき、本当にありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)
楽しく読んでいただけるのが一番嬉しいです!
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りすさんには、本当にたくさんの応援パワーをいただいております!💪
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と言ってあげて下さいね。
麗さん、鋭いツッコミ!ありがとうございます!(笑)
ホントだよ!と、私も自分を棚上げしてツッコミを入れたいオチでした(*´艸`)
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今後もテオへの(作者でしょうか?笑)ツッコミをお待ちしております(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)