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番外短編 不可思議な廃城
5.一方、残された側は<テオドール視点>
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時間は少し巻き戻り――
レイヴンが消えてしまった直後。
残された二人は、必死にレイヴンの姿を探していた。
+++
さっきまで側にいたはずのレイヴンの姿は、あっという間に消えちまった。
俺としたことが……油断しちまった。
頭に来て舌打ちしようが、もう遅い。
「えぇっ! き、消えちゃった?」
「なんで気が付かなかった? クソ……」
苛立ちを隠せないまま、頭をかきむしる。
調べようとしている聖女の手をはたいて扉に触れてみるが、今度は何も起こらない。
一人だけ罠にかける魔法がかかってたとでも言うのか?
ってことは……単なる悪戯じゃすまねぇ。高度な魔法を使用する輩が仕組んだ出来事って訳だ。
俺のレイヴンに何かあったら……そうだ、レイヴンだ。
さっきから身体がほてってきやがるし、レイヴンのことで頭がいっぱいになってくる。
今すぐレイヴンの元へ行かねぇと。
「ちょっと、テオドール! あなた……」
聖女サマが声を荒らげてるみてぇだが、今はそれどころじゃねぇ。
今すぐにレイヴンに会わないと行けねぇ気がする。
煩い声は一切無視して、すぐにでも行かねぇと。
「気持ちは分かるけれど、今散り散りになるのはまずいわ!」
あー……耳障りな声だ。俺のレイヴンに近づこうとするヤツはただじゃおかねぇ。
こんなヤツいつでもヤれるが、今はレイヴンだ。
ぎゃんぎゃん喚く声は、俺の腕を掴んできやがるが無視だ。
身体の底から湧き上がってくる衝動に突き動かされる。
今すぐ、レイヴンが欲しくてたまらない。
レイヴンを俺のモノにして、一生閉じ込めて――永遠に可愛がり続けてやりたい。
あの白い肌も、俺の前で鳴く可愛いさえずりも。全て俺一人のものだ。
「テオドール……? ちょっと、テオドール!」
遠くで声が聞こえる。だが、そんなことはどうでもいい。
邪魔のものは全て振り払って、俺の可愛いレイの元へ行く。
俺に触れる邪魔者は思い切り振り払う。よろめいた何かが地べたに投げ出されると、その床が脆かったのか邪魔者が乗った瞬間に床が崩れていく。
「う、嘘でしょ! きゃあぁぁぁー――」
叫び声虚しく響かせ、邪魔者の身体は地下へ吸い込まれていった。
だが、そんなことはどうでもいい。
一刻も早く、レイヴンを手に入れないと。
熱さが身体を支配していき、衝動だけが俺の身体を突き動かす。
頭の中で謎の声が喚き散らし、俺のことをどうにか支配しようとしているらしい。
ま、この程度喚かれたところでどうってことはねぇが。
「声は邪魔臭いが、せいぜい利用させてもらうとするか。ちょいと刺激が強めだがな」
レイヴンと距離が離れていても、俺には何故かレイヴンの香りが分かる。
そりゃ、そうだろう。今から、俺だけの僕にしてやるつもりだしな。
って、また面白そうな考えに満たされてきてるじゃねぇか。
あー……なるほどな。でも、衝動に抗うよりも乗っかった方がイイな。
暫くは愉しませてもらわねぇと面白くねぇ。
「すぐに行ってやるからな。さて……どれだけ可愛がれるか見ものだな」
俺は自然と身体が欲するモノも理解してきた訳だが、おかげでこの城内で悪さをしているヤツの正体も分かってきたって訳だ。
ヤツの思い通りになるのは少し癪だが、折角のご厚意だ。
流されてやろうじゃねぇか。正直、俺にとっては得なことしかねぇからな。
「問題は……この飢餓状態だよな。うまく手加減できるといいんだが……ま、なんとかなるだろ」
想像しただけで、舌なめずりしちまう。レイヴンの味はさぞかし甘美なんだろうな。
ゆっくりじっくり堪能したいところだが、さて。どこまで遊べることやら。
レイヴンが消えてしまった直後。
残された二人は、必死にレイヴンの姿を探していた。
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さっきまで側にいたはずのレイヴンの姿は、あっという間に消えちまった。
俺としたことが……油断しちまった。
頭に来て舌打ちしようが、もう遅い。
「えぇっ! き、消えちゃった?」
「なんで気が付かなかった? クソ……」
苛立ちを隠せないまま、頭をかきむしる。
調べようとしている聖女の手をはたいて扉に触れてみるが、今度は何も起こらない。
一人だけ罠にかける魔法がかかってたとでも言うのか?
ってことは……単なる悪戯じゃすまねぇ。高度な魔法を使用する輩が仕組んだ出来事って訳だ。
俺のレイヴンに何かあったら……そうだ、レイヴンだ。
さっきから身体がほてってきやがるし、レイヴンのことで頭がいっぱいになってくる。
今すぐレイヴンの元へ行かねぇと。
「ちょっと、テオドール! あなた……」
聖女サマが声を荒らげてるみてぇだが、今はそれどころじゃねぇ。
今すぐにレイヴンに会わないと行けねぇ気がする。
煩い声は一切無視して、すぐにでも行かねぇと。
「気持ちは分かるけれど、今散り散りになるのはまずいわ!」
あー……耳障りな声だ。俺のレイヴンに近づこうとするヤツはただじゃおかねぇ。
こんなヤツいつでもヤれるが、今はレイヴンだ。
ぎゃんぎゃん喚く声は、俺の腕を掴んできやがるが無視だ。
身体の底から湧き上がってくる衝動に突き動かされる。
今すぐ、レイヴンが欲しくてたまらない。
レイヴンを俺のモノにして、一生閉じ込めて――永遠に可愛がり続けてやりたい。
あの白い肌も、俺の前で鳴く可愛いさえずりも。全て俺一人のものだ。
「テオドール……? ちょっと、テオドール!」
遠くで声が聞こえる。だが、そんなことはどうでもいい。
邪魔のものは全て振り払って、俺の可愛いレイの元へ行く。
俺に触れる邪魔者は思い切り振り払う。よろめいた何かが地べたに投げ出されると、その床が脆かったのか邪魔者が乗った瞬間に床が崩れていく。
「う、嘘でしょ! きゃあぁぁぁー――」
叫び声虚しく響かせ、邪魔者の身体は地下へ吸い込まれていった。
だが、そんなことはどうでもいい。
一刻も早く、レイヴンを手に入れないと。
熱さが身体を支配していき、衝動だけが俺の身体を突き動かす。
頭の中で謎の声が喚き散らし、俺のことをどうにか支配しようとしているらしい。
ま、この程度喚かれたところでどうってことはねぇが。
「声は邪魔臭いが、せいぜい利用させてもらうとするか。ちょいと刺激が強めだがな」
レイヴンと距離が離れていても、俺には何故かレイヴンの香りが分かる。
そりゃ、そうだろう。今から、俺だけの僕にしてやるつもりだしな。
って、また面白そうな考えに満たされてきてるじゃねぇか。
あー……なるほどな。でも、衝動に抗うよりも乗っかった方がイイな。
暫くは愉しませてもらわねぇと面白くねぇ。
「すぐに行ってやるからな。さて……どれだけ可愛がれるか見ものだな」
俺は自然と身体が欲するモノも理解してきた訳だが、おかげでこの城内で悪さをしているヤツの正体も分かってきたって訳だ。
ヤツの思い通りになるのは少し癪だが、折角のご厚意だ。
流されてやろうじゃねぇか。正直、俺にとっては得なことしかねぇからな。
「問題は……この飢餓状態だよな。うまく手加減できるといいんだが……ま、なんとかなるだろ」
想像しただけで、舌なめずりしちまう。レイヴンの味はさぞかし甘美なんだろうな。
ゆっくりじっくり堪能したいところだが、さて。どこまで遊べることやら。
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