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第十七章 最後の遊戯に挑む魔塔主と弟子と仲間たち
415.溢れ出す闇
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聖女がハーゲンティの胸にある宝石へ攻撃をしかけると、ヤツから声にならない声があがり宝石がビキビキとひび割れていく。
ひび割れと共に耳をつんざくような咆哮が聞こえた瞬間、ハーゲンティを中心に巻き起こった黒い風で騎士二人は吹き飛ばされて地面に突っ伏した。
「……って。うぅ……」
「大したことはない、が。息が……」
二人も何とか動けるみたいだな。剣を使いながら必死に身体を起こそうとしてるな。
俺の魔法も黒い風のせいで解除された。
風の余波で弾き飛ばされて体勢を崩しちまったが、今も噴き出し続けてるのは瘴気か?
チッ。普通に呼吸すると、息苦しくて集中できないはずだ。
聖女サマとちまいのは……ウンディーネとサラマンダーの結界のおかげで守られてるな。
二人の精霊王でもその範囲しか結界を張れない瘴気ってことか。
「っくぅ……止まらないこの瘴気を中和するのに精いっぱいだよ」
シルフィードの言う通り、ヤツの身体からまだ瘴気が噴き出し続けてるな。
瘴気を吸い込み続けたら、俺らは動けなくなっちまうかもしれねぇ。
だが、それでも多少は動けて喋れるってのがシルフィードのおかげなんだろうな。
ただレイヴンもシルフィードを召喚し続けているせいで、かなり消耗している。
精霊魔法を使用できるようになったのは、ここ最近だ。
さすがに精霊王を召喚して持続し続けるのは、厳しいに違いない。
「……はぁっ……俺が、やらないと。みんなが……」
無理をし続けるレイヴンの身体がふらりと傾いたので、すぐに隣に駆け寄る。
腕を伸ばし身体を支えるように、レイヴンの腰を抱き寄せた。
左手でレイヴンを支えたまま、右手でベルトからレイヴン用に調合した精霊力の回復薬の瓶を引き抜く。
「いいから、コレを飲め」
「今は、そんな場合じゃ……」
「そんな場合なんだよ」
レイヴンは意識が朦朧としてきたせいで、冷静な判断力を失っているらしい。
ディーもキツそうだが俺とレイヴンを気にして見てたせいか、俺がやろうとしてることに気づいたみたいだな。
騎士独特の呼吸法に切り替えて、少しでも瘴気を止めようとハーゲンティへ斬りかかっていく。
「ゲホッ! あぁ……分かり、ましたよ!」
ウルガーも息が整ってねぇし身体も辛そうだが、ディーと攻撃を合わせて瘴気の量を少しでも減らそうとふらふらになりながら剣を振るう。
効果があるかは分からねぇが、風の勢いが少しだけ収まった気がする。
「レイヴン、しっかりしろ」
俺はレイヴンの細い腰を更に強く抱いて密着させ、口でコルクの蓋をさっきと同じように引き抜いてから中身を口に含む。
今度はレイヴンの身体を少し倒して調整し、そのまま口づけて口移しで回復薬を流しこむ。
「んっ! ……ケホッ、な、なにを……」
「回復薬だ。さっさと飲み込め」
「や、今そんな場合じゃ……んむぅ!」
レイヴンは俺の唇に自然と反応して唇を開くと、少しむせりながら回復薬を飲み込んでいく。
しっかりと飲ませたところで、瓶を床へ適当に転がす。
「……はぁっ。何で口移しで飲ませ……」
「無駄に叫ぶと瘴気を吸い込むぞ」
「……はぁ。回復薬、ですか。あ……力が。安定してきました」
レイヴンは俺へ怒鳴ろうとするくらいには回復できたらしい。
俺らのやり取りは必死になって斬りつけている騎士二人には見えてないが、他の面々は見ちまってるからな。
今更レイヴンが恥ずかしそうな顔して赤くなり、俺を睨んでくる。
「仲がいいのは分かったけど、後でね」
「自分が思うがまま動くのだな」
「テオドール、あなたという人は……」
精霊王三人から順番に俺だけ文句を言われちまうのは想定外だが、まあいい。
レイヴンが復活したし、シルフィードの力も使って瘴気を吹き飛ばせるだろ。
「このままいくぞ」
「はい」
俺たちにとってこの状況は不利だが、やるしかねぇ。
レイヴンと目配せして、息継ぎなしで一気に呪文を紡いでいく。
レイヴンは精霊魔法、俺は普通の魔法。
属性は同じものを使用する。
ひび割れと共に耳をつんざくような咆哮が聞こえた瞬間、ハーゲンティを中心に巻き起こった黒い風で騎士二人は吹き飛ばされて地面に突っ伏した。
「……って。うぅ……」
「大したことはない、が。息が……」
二人も何とか動けるみたいだな。剣を使いながら必死に身体を起こそうとしてるな。
俺の魔法も黒い風のせいで解除された。
風の余波で弾き飛ばされて体勢を崩しちまったが、今も噴き出し続けてるのは瘴気か?
チッ。普通に呼吸すると、息苦しくて集中できないはずだ。
聖女サマとちまいのは……ウンディーネとサラマンダーの結界のおかげで守られてるな。
二人の精霊王でもその範囲しか結界を張れない瘴気ってことか。
「っくぅ……止まらないこの瘴気を中和するのに精いっぱいだよ」
シルフィードの言う通り、ヤツの身体からまだ瘴気が噴き出し続けてるな。
瘴気を吸い込み続けたら、俺らは動けなくなっちまうかもしれねぇ。
だが、それでも多少は動けて喋れるってのがシルフィードのおかげなんだろうな。
ただレイヴンもシルフィードを召喚し続けているせいで、かなり消耗している。
精霊魔法を使用できるようになったのは、ここ最近だ。
さすがに精霊王を召喚して持続し続けるのは、厳しいに違いない。
「……はぁっ……俺が、やらないと。みんなが……」
無理をし続けるレイヴンの身体がふらりと傾いたので、すぐに隣に駆け寄る。
腕を伸ばし身体を支えるように、レイヴンの腰を抱き寄せた。
左手でレイヴンを支えたまま、右手でベルトからレイヴン用に調合した精霊力の回復薬の瓶を引き抜く。
「いいから、コレを飲め」
「今は、そんな場合じゃ……」
「そんな場合なんだよ」
レイヴンは意識が朦朧としてきたせいで、冷静な判断力を失っているらしい。
ディーもキツそうだが俺とレイヴンを気にして見てたせいか、俺がやろうとしてることに気づいたみたいだな。
騎士独特の呼吸法に切り替えて、少しでも瘴気を止めようとハーゲンティへ斬りかかっていく。
「ゲホッ! あぁ……分かり、ましたよ!」
ウルガーも息が整ってねぇし身体も辛そうだが、ディーと攻撃を合わせて瘴気の量を少しでも減らそうとふらふらになりながら剣を振るう。
効果があるかは分からねぇが、風の勢いが少しだけ収まった気がする。
「レイヴン、しっかりしろ」
俺はレイヴンの細い腰を更に強く抱いて密着させ、口でコルクの蓋をさっきと同じように引き抜いてから中身を口に含む。
今度はレイヴンの身体を少し倒して調整し、そのまま口づけて口移しで回復薬を流しこむ。
「んっ! ……ケホッ、な、なにを……」
「回復薬だ。さっさと飲み込め」
「や、今そんな場合じゃ……んむぅ!」
レイヴンは俺の唇に自然と反応して唇を開くと、少しむせりながら回復薬を飲み込んでいく。
しっかりと飲ませたところで、瓶を床へ適当に転がす。
「……はぁっ。何で口移しで飲ませ……」
「無駄に叫ぶと瘴気を吸い込むぞ」
「……はぁ。回復薬、ですか。あ……力が。安定してきました」
レイヴンは俺へ怒鳴ろうとするくらいには回復できたらしい。
俺らのやり取りは必死になって斬りつけている騎士二人には見えてないが、他の面々は見ちまってるからな。
今更レイヴンが恥ずかしそうな顔して赤くなり、俺を睨んでくる。
「仲がいいのは分かったけど、後でね」
「自分が思うがまま動くのだな」
「テオドール、あなたという人は……」
精霊王三人から順番に俺だけ文句を言われちまうのは想定外だが、まあいい。
レイヴンが復活したし、シルフィードの力も使って瘴気を吹き飛ばせるだろ。
「このままいくぞ」
「はい」
俺たちにとってこの状況は不利だが、やるしかねぇ。
レイヴンと目配せして、息継ぎなしで一気に呪文を紡いでいく。
レイヴンは精霊魔法、俺は普通の魔法。
属性は同じものを使用する。
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