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第十七章 最後の遊戯に挑む魔塔主と弟子と仲間たち
411.反撃の一手は?
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辺りが光に包まれ、身体に暖かな力が流れ込んでくる。
優しい光は女神ミネルファリアの力の根源なんだろうな。
ちまいのに影響はどうかと思って振り返るが、どうやら合成獣は大丈夫みたいだな。
「すごい! ピカピカ!」
「……ふう。油断はできないけれど、辺りの浄化はできたはずよ」
「みたいだな。さて、ヤツは……」
徐々に光が引いてくると、ハーゲンティの姿が見えてくる。
分身体は消え去って、一人に戻ったな。
しかも何やら胸の辺りを押さえてるが、聖女サマの魔法でダメージを受けたのか?
「グッ……」
俯いていた顔がフッと上がった瞬間、ヤツの瞳が紅く輝く。
そして身体が一瞬にしてかき消えた。
「え、一体どこへ……」
俺は勘だけで身体を動かし、聖女サマを突き飛ばす。
瞬間、姿を現したハーゲンティが思い切りサーベルを突き出してくるのが見えた。
「チッ」
「師匠っ!」
レイヴンの焦った声を聞き、側にいたちまいのが無詠唱で反応したらしい。
俺の近くに盾を出してくれたおかげで、サーベルの餌食にならずに済んだ。
「っぶね。やるな、ちまいの」
「ん。テオ。やったよ」
しかし、ヤツはまたフッと姿を消す。
急に攻撃方法を変えてきたってことは、こちらにとって効果的な何かが起こったってことだ。
遊戯と言っていた時の余裕がなくなっているように見える。
「テオドール、ありがとう」
「ただの勘だ。次は……野生の勘が働くヤツの方だ!」
敵がどこから現れるのかを予測するには、今までどれだけ戦ってきたかの差が出てきちまう。
その点、俺とディーは色んなヤツとやりあってきたから殺気や気配には他の奴らより敏感だ。
ディーは慌てることなく大剣を構えて、空間を切り裂くように剣を横なぎに払う。
剣からは剣気も一緒に刃のような形でビュッと飛んでいく。
「一度躱したところで、我の攻撃は止まらぬ」
ヤツは消えたり現れたりを繰り返し、その度に攻撃を仕掛けてくる。
俺とディーでハーゲンティの現れる場所を即時判断してその都度防いではいるが、このままだと埒が明かねぇ。
「聖女サマ、辺りは浄化できたって言ってたよな? じゃあ、この辺りはうろついても大丈夫だな」
「ええ。嫌な感じは消えたわ。テオドール、どうするつもり?」
「ヤツはあんたの攻撃で何か焦った感じがした。俺の攻撃もダメージは与えたが、あんたの広範囲魔法がより効き目がありそうだった。魔法陣もあったし実は玉座の付近に何か隠されてるんじゃねぇかと思ってよ」
「何よ、その雑な推測は。でも……浄化してから急に美学を捨ててる感じはするわね」
俺らが話している間にも、避けたり防いだりしている一方的なやり取りが繰り広げられている。
辺りの散策を誰に任せようかと辺りを素早く見回す。
『ウルガー、俺の声が聞こえたら攻撃を避けながら玉座の付近を探ってこい』
「え……?」
俺が伝音魔法でなるべく小さめに声を飛ばすと、ウルガーは嫌そうな顔をしながらそっと玉座の方へ向かい始める。
それを見たディーも何かを感じたのか、ウルガーへ降りかかりそうになる攻撃を防ぎながらうまいこと玉座へ近づいていく。
「あークソ! やってられっか!」
俺は口で文句を言いながら、レイヴンに目配せする。
そして手の動きで共に唱える呪文を伝えていく。
レイヴンには以前戯れてるときに動きで魔法の種類を伝えていたから、大体属性が伝われば俺に合わせられるはずだ。
「師匠が頼りなんですから! 文句言ってないで攻撃が飛んでくる場所を教えてください!」
「んなこと言っても、防戦一方ってのは好きじゃねぇんだよ」
言いながら、俺は呪文を唱え始める。
ハーゲンティは全員のところへ出没しては攻撃を仕掛けているが、俺たちもうまく動き回ってかき乱しているせいか狙いを定めきれないらしい。
おかげで玉座狙いはまだバレてない。
「雷の鎖」
俺は手のひらから無数の雷の鎖を生み出して、姿を現した瞬間のハーゲンティを絡めとる。
その鎖はすぐに引きちぎられていくが、分割を重ね掛けして嫌がらせのように鎖を生み出し続けていく。
「この鎖に何の意味が……」
「――重力縛り!」
レイヴンが更なる足止めのために、重力魔法で相手を押しつぶす。
レイヴンはかなりの魔力を込めて押さえつけているが、まだ足りねぇか?
「ちまいの!」
「んー……いわっ!」
追撃で大きい岩を生み出し、ちまいのが重力の塊の上から岩で押しつぶす。
さすがのハーゲンティも少し動きが止まる。
「グッ……この程度で……」
俺は動こうとするたびに鎖で絡めとってやり、その隙にディーとウルガーに玉座の付近を捜索させる。
ついでに聖女サマにも目線で合図すると、同じく輝く網を重ね掛けして更にハーゲンティの手足を絡めとっていく。
優しい光は女神ミネルファリアの力の根源なんだろうな。
ちまいのに影響はどうかと思って振り返るが、どうやら合成獣は大丈夫みたいだな。
「すごい! ピカピカ!」
「……ふう。油断はできないけれど、辺りの浄化はできたはずよ」
「みたいだな。さて、ヤツは……」
徐々に光が引いてくると、ハーゲンティの姿が見えてくる。
分身体は消え去って、一人に戻ったな。
しかも何やら胸の辺りを押さえてるが、聖女サマの魔法でダメージを受けたのか?
「グッ……」
俯いていた顔がフッと上がった瞬間、ヤツの瞳が紅く輝く。
そして身体が一瞬にしてかき消えた。
「え、一体どこへ……」
俺は勘だけで身体を動かし、聖女サマを突き飛ばす。
瞬間、姿を現したハーゲンティが思い切りサーベルを突き出してくるのが見えた。
「チッ」
「師匠っ!」
レイヴンの焦った声を聞き、側にいたちまいのが無詠唱で反応したらしい。
俺の近くに盾を出してくれたおかげで、サーベルの餌食にならずに済んだ。
「っぶね。やるな、ちまいの」
「ん。テオ。やったよ」
しかし、ヤツはまたフッと姿を消す。
急に攻撃方法を変えてきたってことは、こちらにとって効果的な何かが起こったってことだ。
遊戯と言っていた時の余裕がなくなっているように見える。
「テオドール、ありがとう」
「ただの勘だ。次は……野生の勘が働くヤツの方だ!」
敵がどこから現れるのかを予測するには、今までどれだけ戦ってきたかの差が出てきちまう。
その点、俺とディーは色んなヤツとやりあってきたから殺気や気配には他の奴らより敏感だ。
ディーは慌てることなく大剣を構えて、空間を切り裂くように剣を横なぎに払う。
剣からは剣気も一緒に刃のような形でビュッと飛んでいく。
「一度躱したところで、我の攻撃は止まらぬ」
ヤツは消えたり現れたりを繰り返し、その度に攻撃を仕掛けてくる。
俺とディーでハーゲンティの現れる場所を即時判断してその都度防いではいるが、このままだと埒が明かねぇ。
「聖女サマ、辺りは浄化できたって言ってたよな? じゃあ、この辺りはうろついても大丈夫だな」
「ええ。嫌な感じは消えたわ。テオドール、どうするつもり?」
「ヤツはあんたの攻撃で何か焦った感じがした。俺の攻撃もダメージは与えたが、あんたの広範囲魔法がより効き目がありそうだった。魔法陣もあったし実は玉座の付近に何か隠されてるんじゃねぇかと思ってよ」
「何よ、その雑な推測は。でも……浄化してから急に美学を捨ててる感じはするわね」
俺らが話している間にも、避けたり防いだりしている一方的なやり取りが繰り広げられている。
辺りの散策を誰に任せようかと辺りを素早く見回す。
『ウルガー、俺の声が聞こえたら攻撃を避けながら玉座の付近を探ってこい』
「え……?」
俺が伝音魔法でなるべく小さめに声を飛ばすと、ウルガーは嫌そうな顔をしながらそっと玉座の方へ向かい始める。
それを見たディーも何かを感じたのか、ウルガーへ降りかかりそうになる攻撃を防ぎながらうまいこと玉座へ近づいていく。
「あークソ! やってられっか!」
俺は口で文句を言いながら、レイヴンに目配せする。
そして手の動きで共に唱える呪文を伝えていく。
レイヴンには以前戯れてるときに動きで魔法の種類を伝えていたから、大体属性が伝われば俺に合わせられるはずだ。
「師匠が頼りなんですから! 文句言ってないで攻撃が飛んでくる場所を教えてください!」
「んなこと言っても、防戦一方ってのは好きじゃねぇんだよ」
言いながら、俺は呪文を唱え始める。
ハーゲンティは全員のところへ出没しては攻撃を仕掛けているが、俺たちもうまく動き回ってかき乱しているせいか狙いを定めきれないらしい。
おかげで玉座狙いはまだバレてない。
「雷の鎖」
俺は手のひらから無数の雷の鎖を生み出して、姿を現した瞬間のハーゲンティを絡めとる。
その鎖はすぐに引きちぎられていくが、分割を重ね掛けして嫌がらせのように鎖を生み出し続けていく。
「この鎖に何の意味が……」
「――重力縛り!」
レイヴンが更なる足止めのために、重力魔法で相手を押しつぶす。
レイヴンはかなりの魔力を込めて押さえつけているが、まだ足りねぇか?
「ちまいの!」
「んー……いわっ!」
追撃で大きい岩を生み出し、ちまいのが重力の塊の上から岩で押しつぶす。
さすがのハーゲンティも少し動きが止まる。
「グッ……この程度で……」
俺は動こうとするたびに鎖で絡めとってやり、その隙にディーとウルガーに玉座の付近を捜索させる。
ついでに聖女サマにも目線で合図すると、同じく輝く網を重ね掛けして更にハーゲンティの手足を絡めとっていく。
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