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第十七章 最後の遊戯に挑む魔塔主と弟子と仲間たち
410.仕切り直し
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さて、これからどう攻めてやるか……とりあえず小賢しい魔法陣系を排除しちまうか。
フールフールが力を捧げたところを見ると、アイツ自体に回復能力はなさそうだしな。
「聖女サマ、この辺りを全て浄化してやれ。あんたの力ならやれるだろ」
「分かったわ。少し時間をちょうだい」
俺の小声に答えてすぐに、聖女サマは杖を握りしめて集中し始めた。
暴れたりなさそうなディーをぶつけるのは、浄化が終わってからだ。
「レイヴン、行くぞ」
「はい、師匠」
ヤツが何かを仕掛けてくる前に、遠くから魔法を撃ちこんでいくしかねぇな。
俺らが詠唱に入ると、ウルガーとディーが俺らの前に立って警戒態勢に入る。
「何を企んでいるか知らないが、更なる遊戯を愉しもうではないか」
ハーゲンティは優雅な動作で両手を広げると、隣にもう一人にハーゲンティが現れる。
アイツ、分身しやがったか。
一人はふわりと飛んでディーのいる方向に向かってくる。
「ほう、俺とやりあうか魔族」
ディーは大剣を構えて、魔族が振りかざしたサーベルを受け止める。
辺りにキィンという高い音が響き、ディーが真っ向から受け止めたことが分かる。
だが、細い癖になかなか力があるらしくディーでもやや押され気味だ。
「団長、大好きな気合で撃ち返さないと……って、コッチもか!」
ウルガーの方にも、もう一人のハーゲンティが笑みを浮かべて飛び掛かってくる。
ウルガーの頭上から覆い被ろうとした瞬間を狙い、俺から魔法を発動させる。
「――炎の牙」
指先から飛び出た炎が、ウルガーに飛び掛かってきたハーゲンティを食い止めるように牙の形を作って噛みつく。
ウルガーは器用に身体を屈めると、剣に剣気を込めて上へ突き出す。
「その程度か?」
ニヤリと笑うハーゲンティは、片手で軽々と剣の切っ先を掴む。
ウルガーは体勢を整えることができず、剣を動かすこともできなくなっちまった。
俺は視線でウンディーネに補助を求めると、ウンディーネに心が通じたのかウルガーを水のヴェールで包み込む。
「――爆ぜろ」
食い込ませておいた牙の片側だけ爆発させ、無理やり距離を取らせる。
ウルガーは尻もちをつく程度で、怪我はしてなさそうだ。
「テオドール様! 助けてくれるならもうちょっと考えてくださいよ! ウンディーネ様が助けてくれなかったら危なかったじゃないですか」
「炎と言えば水だからな。俺の意図を汲んでくれたじゃねぇか」
ハーゲンティの結界は食い破れたみてぇだが、そもそもどっちが本物なのかもまだ分からない。
ウンディーネは水のヴェールを解除して、軽く息を吐く。
「貴方は無茶をしそうですからね。戦い方は何となく理解しました。この程度なら助けられますが……大きな力を行使するとすぐに召喚は解除されます」
「了解。あんたたちの力は温存しねぇとな。ディーには……レイヴンが補助に入ったはずだ」
俺が唱えたのと同時に、レイヴンは風撃でハーゲンティの身体を押し返していた。
「我も行くぞ」
二人のハーゲンティが両手を広げると、黒い炎の塊がいくつも空中に浮かび始める。
その炎は玉座の間を埋めつくすくらいの量だ。
ヤツが手を振るのと同時に、雨のように俺らの頭上に降り注ぐ。
「……っと! ディー!」
「旋風!」
炎を避けながらディーに指示を飛ばすと、言われる前から野生の勘で使うべき剣技を選んでいた。
先ほどの戦いで使った技で大剣からつむじ風を巻き起こし、轟音とともに炎を巻き上げていく。
「聖女様!」
レイヴンは詠唱で動けない聖女の側に駆け寄り、水の盾を生み出し炎を打ち消していく。
ちまいのも同じように盾を出し、精霊王たちもうまいこと避けていく。
「何発あるんだよ、ったく。――爆発」
ヤツにだけ攻撃させておくわけにはいかねぇから、こっちも攻撃に転じる。
余裕の顔をめがけて炎には炎をぶつけ、指を弾いて着弾と同時に爆発させる。
「お前は本当に美しくない。また焦げてしまった」
「戦いに美しいも美しくないもねぇんだよ。やるかやられるかだ」
追撃の突風で炎を更に巻き上げてやると、ハーゲンティからチッという舌打ちが聞こえ少し後退する。
しばらくは降り注ぐ炎を避けながら反撃していたが、聖女様が動く気配がしたところで俺ももう一発魔法を撃ちこんで少し下がる。
「――聖なる救済を!」
聖女サマの魔法が発動し、杖から光が溢れ出す。
一度見たことはあるが、吸血鬼を消し去るくらいの力はあったんだよな。
魔族への効果は未知数だが、悪しき者や悪しき力には効果は抜群なはずだ。
フールフールが力を捧げたところを見ると、アイツ自体に回復能力はなさそうだしな。
「聖女サマ、この辺りを全て浄化してやれ。あんたの力ならやれるだろ」
「分かったわ。少し時間をちょうだい」
俺の小声に答えてすぐに、聖女サマは杖を握りしめて集中し始めた。
暴れたりなさそうなディーをぶつけるのは、浄化が終わってからだ。
「レイヴン、行くぞ」
「はい、師匠」
ヤツが何かを仕掛けてくる前に、遠くから魔法を撃ちこんでいくしかねぇな。
俺らが詠唱に入ると、ウルガーとディーが俺らの前に立って警戒態勢に入る。
「何を企んでいるか知らないが、更なる遊戯を愉しもうではないか」
ハーゲンティは優雅な動作で両手を広げると、隣にもう一人にハーゲンティが現れる。
アイツ、分身しやがったか。
一人はふわりと飛んでディーのいる方向に向かってくる。
「ほう、俺とやりあうか魔族」
ディーは大剣を構えて、魔族が振りかざしたサーベルを受け止める。
辺りにキィンという高い音が響き、ディーが真っ向から受け止めたことが分かる。
だが、細い癖になかなか力があるらしくディーでもやや押され気味だ。
「団長、大好きな気合で撃ち返さないと……って、コッチもか!」
ウルガーの方にも、もう一人のハーゲンティが笑みを浮かべて飛び掛かってくる。
ウルガーの頭上から覆い被ろうとした瞬間を狙い、俺から魔法を発動させる。
「――炎の牙」
指先から飛び出た炎が、ウルガーに飛び掛かってきたハーゲンティを食い止めるように牙の形を作って噛みつく。
ウルガーは器用に身体を屈めると、剣に剣気を込めて上へ突き出す。
「その程度か?」
ニヤリと笑うハーゲンティは、片手で軽々と剣の切っ先を掴む。
ウルガーは体勢を整えることができず、剣を動かすこともできなくなっちまった。
俺は視線でウンディーネに補助を求めると、ウンディーネに心が通じたのかウルガーを水のヴェールで包み込む。
「――爆ぜろ」
食い込ませておいた牙の片側だけ爆発させ、無理やり距離を取らせる。
ウルガーは尻もちをつく程度で、怪我はしてなさそうだ。
「テオドール様! 助けてくれるならもうちょっと考えてくださいよ! ウンディーネ様が助けてくれなかったら危なかったじゃないですか」
「炎と言えば水だからな。俺の意図を汲んでくれたじゃねぇか」
ハーゲンティの結界は食い破れたみてぇだが、そもそもどっちが本物なのかもまだ分からない。
ウンディーネは水のヴェールを解除して、軽く息を吐く。
「貴方は無茶をしそうですからね。戦い方は何となく理解しました。この程度なら助けられますが……大きな力を行使するとすぐに召喚は解除されます」
「了解。あんたたちの力は温存しねぇとな。ディーには……レイヴンが補助に入ったはずだ」
俺が唱えたのと同時に、レイヴンは風撃でハーゲンティの身体を押し返していた。
「我も行くぞ」
二人のハーゲンティが両手を広げると、黒い炎の塊がいくつも空中に浮かび始める。
その炎は玉座の間を埋めつくすくらいの量だ。
ヤツが手を振るのと同時に、雨のように俺らの頭上に降り注ぐ。
「……っと! ディー!」
「旋風!」
炎を避けながらディーに指示を飛ばすと、言われる前から野生の勘で使うべき剣技を選んでいた。
先ほどの戦いで使った技で大剣からつむじ風を巻き起こし、轟音とともに炎を巻き上げていく。
「聖女様!」
レイヴンは詠唱で動けない聖女の側に駆け寄り、水の盾を生み出し炎を打ち消していく。
ちまいのも同じように盾を出し、精霊王たちもうまいこと避けていく。
「何発あるんだよ、ったく。――爆発」
ヤツにだけ攻撃させておくわけにはいかねぇから、こっちも攻撃に転じる。
余裕の顔をめがけて炎には炎をぶつけ、指を弾いて着弾と同時に爆発させる。
「お前は本当に美しくない。また焦げてしまった」
「戦いに美しいも美しくないもねぇんだよ。やるかやられるかだ」
追撃の突風で炎を更に巻き上げてやると、ハーゲンティからチッという舌打ちが聞こえ少し後退する。
しばらくは降り注ぐ炎を避けながら反撃していたが、聖女様が動く気配がしたところで俺ももう一発魔法を撃ちこんで少し下がる。
「――聖なる救済を!」
聖女サマの魔法が発動し、杖から光が溢れ出す。
一度見たことはあるが、吸血鬼を消し去るくらいの力はあったんだよな。
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