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第十七章 最後の遊戯に挑む魔塔主と弟子と仲間たち
409.一旦様子見
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立て続けに小細工はしてみたが、効き目はまあまあってとこか。
多少傷を食らわせてるならいいが、ハーゲンティは普通に立ってやがるからな。
「ハーゲンティ!」
フールフールも聖女サマの雷を何発か食らってよろよろはしてるが、自分よりハーゲンティのことが気になってるみたいだな。
もしかして、好きなのか?
「攻撃が当たっていない訳じゃないけれど、決定打に欠けるかしら」
「いや、聖女サマは属性がいいからな。ダメージは蓄積されてるはずだ。俺の方はまあ、ディーと変わらねぇゴリ押しだからなァ」
次の一手を考えながら、注意深く様子を窺う。
焦げた臭いが辺りに充満してるが、焦がしたのはいっても皮膚くらいだろ。
「う……人間の、くせにぃ……」
「……」
ディーとレイヴンの方はだいぶ消耗させたみたいだから、しばらくは大丈夫そうだ。
しかし、動き出すと厄介だし閉じ込めといた方がいいかもしれねぇ。
「クロード、お前の魔法でコイツらを閉じ込めておけるか?」
「今、その名で呼ばないでくれるかしら? ――聖なる牢獄」
聖女サマは文句を言いながら杖に魔力を溜めると、転がってる魔族二名に対して光を放つ。
光は何本もの棒となって、二人を囲んで閉じ込めていく。
「……はぁ。だから、真面目な戦いなんて嫌いなんだよ。僕が弱いみたいじゃないか」
「……アイノチカラニヤブレタカ」
こいつらはそんなに強くないのか弱く見せてんのかは知らねぇが、大人しくしてもらう方がよさそうだ。
「ちまいの、そこの檻の中の奴らが騒いだら魔法を撃ちこんでおけ」
「まほう? おしおきするの?」
「ああ。おしおきだ」
「わかった!」
無詠唱ならいざという時も反応が早そうだし、自由に動けるのはちまいのくらいだからな。
まだ精霊王も使えるし、突発的な何かが起こったとしても対処は可能だな。
で、肝心のハーゲンティとフールフールは……なんかしゃべってるみてぇだな。
「テオ、追撃は?」
「したいところだが、俺の勘が今は待てって言うんでな。フル姉がべったり……っておいおい」
やる気満々のディーを抑えて様子見を続けてたってのに、フールフールがハーゲンティに口づけるとヤツの焦げてた皮膚がみるみるうちに白い肌へと戻っていくじゃねぇか。
チッ。慎重になりすぎたか?
「あの姉ちゃん、回復が使えるのか」
「だが、女性の方は姿が崩れていったぞ」
ディーの言う通り、フールフールの身体はサラサラと崩れていく。
魔族の構造なんて知らねぇが、どうやら肉体を保てなくなったみたいだな。
「先に帰ってしまったか。しばらくはこちらへは来られそうにないな。しかし、もっと攻め込んでくるかと思ったが大人しく待っていてくれるとは」
「もう一発かましたら、お前に生命力をもっていかれるところだっただろ。その玉座の下に魔法陣があるはずだ」
フールフールはあえて捧げたみたいだが、魂自体は元の場所へ還ったってだけなんだろうな。
ディーが考えなしに突っ込んだら、ディーがサラサラになっちまうところだったから仕方なくな。
「え? 俺、さっき近づいてたじゃないですか! あっぶな!」
「ギリギリ踏んでなかったのは分かってたからな。ウルガーは運がいいじゃねぇか。それにある程度傷を負わせると発動するだろうと思ってな」
「師匠……ウルガーで推測を試さないでくださいよ。でも、これで振り出しです」
ほかの奴らは大人しくなったが、ハーゲンティはまたやり直さなくちゃいけねぇってことか。
まだ魔力に余裕もあるし問題ねぇが、さっさと終わらせねぇとな。
「魔法使いは随分と戦い慣れているようだな。ゼパルとウァラクも大人しくさせるとは……なかなか愉しませてくれる」
「十分愉しんだってなら、遊戯は終わりでいいだろうが。コッチはさっさと帰りたいんだがな」
「そうはいかない。魔法使い、お前との遊戯はこれからだ」
優雅に微笑むハーゲンティを見ていると、おぞましさと寒気がしてきやがる。
聖女サマが腹が立つと本気の声で呟くもんだから、ディーが何故かすみませんと謝り始めた。
「申し訳ございません。すぐに終わらせますゆえ、もう少しの我慢を」
「別にディーちゃんに言った訳じゃないのに、本当に真面目ね」
人数ではコッチが有利とはいえ、もう一度攻め方を考えた方がよさそうだな。
多少傷を食らわせてるならいいが、ハーゲンティは普通に立ってやがるからな。
「ハーゲンティ!」
フールフールも聖女サマの雷を何発か食らってよろよろはしてるが、自分よりハーゲンティのことが気になってるみたいだな。
もしかして、好きなのか?
「攻撃が当たっていない訳じゃないけれど、決定打に欠けるかしら」
「いや、聖女サマは属性がいいからな。ダメージは蓄積されてるはずだ。俺の方はまあ、ディーと変わらねぇゴリ押しだからなァ」
次の一手を考えながら、注意深く様子を窺う。
焦げた臭いが辺りに充満してるが、焦がしたのはいっても皮膚くらいだろ。
「う……人間の、くせにぃ……」
「……」
ディーとレイヴンの方はだいぶ消耗させたみたいだから、しばらくは大丈夫そうだ。
しかし、動き出すと厄介だし閉じ込めといた方がいいかもしれねぇ。
「クロード、お前の魔法でコイツらを閉じ込めておけるか?」
「今、その名で呼ばないでくれるかしら? ――聖なる牢獄」
聖女サマは文句を言いながら杖に魔力を溜めると、転がってる魔族二名に対して光を放つ。
光は何本もの棒となって、二人を囲んで閉じ込めていく。
「……はぁ。だから、真面目な戦いなんて嫌いなんだよ。僕が弱いみたいじゃないか」
「……アイノチカラニヤブレタカ」
こいつらはそんなに強くないのか弱く見せてんのかは知らねぇが、大人しくしてもらう方がよさそうだ。
「ちまいの、そこの檻の中の奴らが騒いだら魔法を撃ちこんでおけ」
「まほう? おしおきするの?」
「ああ。おしおきだ」
「わかった!」
無詠唱ならいざという時も反応が早そうだし、自由に動けるのはちまいのくらいだからな。
まだ精霊王も使えるし、突発的な何かが起こったとしても対処は可能だな。
で、肝心のハーゲンティとフールフールは……なんかしゃべってるみてぇだな。
「テオ、追撃は?」
「したいところだが、俺の勘が今は待てって言うんでな。フル姉がべったり……っておいおい」
やる気満々のディーを抑えて様子見を続けてたってのに、フールフールがハーゲンティに口づけるとヤツの焦げてた皮膚がみるみるうちに白い肌へと戻っていくじゃねぇか。
チッ。慎重になりすぎたか?
「あの姉ちゃん、回復が使えるのか」
「だが、女性の方は姿が崩れていったぞ」
ディーの言う通り、フールフールの身体はサラサラと崩れていく。
魔族の構造なんて知らねぇが、どうやら肉体を保てなくなったみたいだな。
「先に帰ってしまったか。しばらくはこちらへは来られそうにないな。しかし、もっと攻め込んでくるかと思ったが大人しく待っていてくれるとは」
「もう一発かましたら、お前に生命力をもっていかれるところだっただろ。その玉座の下に魔法陣があるはずだ」
フールフールはあえて捧げたみたいだが、魂自体は元の場所へ還ったってだけなんだろうな。
ディーが考えなしに突っ込んだら、ディーがサラサラになっちまうところだったから仕方なくな。
「え? 俺、さっき近づいてたじゃないですか! あっぶな!」
「ギリギリ踏んでなかったのは分かってたからな。ウルガーは運がいいじゃねぇか。それにある程度傷を負わせると発動するだろうと思ってな」
「師匠……ウルガーで推測を試さないでくださいよ。でも、これで振り出しです」
ほかの奴らは大人しくなったが、ハーゲンティはまたやり直さなくちゃいけねぇってことか。
まだ魔力に余裕もあるし問題ねぇが、さっさと終わらせねぇとな。
「魔法使いは随分と戦い慣れているようだな。ゼパルとウァラクも大人しくさせるとは……なかなか愉しませてくれる」
「十分愉しんだってなら、遊戯は終わりでいいだろうが。コッチはさっさと帰りたいんだがな」
「そうはいかない。魔法使い、お前との遊戯はこれからだ」
優雅に微笑むハーゲンティを見ていると、おぞましさと寒気がしてきやがる。
聖女サマが腹が立つと本気の声で呟くもんだから、ディーが何故かすみませんと謝り始めた。
「申し訳ございません。すぐに終わらせますゆえ、もう少しの我慢を」
「別にディーちゃんに言った訳じゃないのに、本当に真面目ね」
人数ではコッチが有利とはいえ、もう一度攻め方を考えた方がよさそうだな。
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