【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十七章 最後の遊戯に挑む魔塔主と弟子と仲間たち

403.遊戯の終着点

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 レイヴンをなだめてから、鉄格子を潜って漸く大扉の前に立つ。
 扉は木製だが細工も凝っていて、美しい悪魔と天使が左右に一体ずつ描かれていた。
 ただし、悪魔と天使は互いに絡み合いながら血を流しているよく分からない芸術作品みたいだが。

「何、この悪趣味な扉は。今すぐ燃やしてしまいたいけれど、どうやらここに今まで集めさせられた宝石をはめ込むようね」

 聖女サマの言う通り扉には穴が開いていて、ご丁寧にくぼみが薄く色づいている。
 どうやらこの色と宝石を組み合わせろってことらしいな。
 このくだらない仕掛けに何の意味があるのかも知らねぇが、魔族の考えることなんて知ったこっちゃねぇ。

「さっさと終わらせようぜ。ったく、こういう意味不明なことをさせるのが芸術だとか思ってんのかァ?」
「私に言われても知らないけれど、さっさと終わらせることについては賛成よ」

 答えながら聖女サマが緑の窪みに緑の宝石をはめ込む。
 次は嫌そうな顔をしながら、ウルガーが赤の宝石を手に取って聖女サマの隣に立つ。

「ですね。もう魔族とは関わり合いになりたくありませんから。今回だけですよ」
「国と友の危機ならば、強敵だろうと立ち向かうのは騎士の本分だ。ウルガーも心しておけ」
「あぁ……はい」

 反論を諦めたウルガーと相変わらず暑苦しいディーが揃って宝石をはめようとする。
 が、ディーは黄の宝石を間違ったところにはめようとしてウルガーに直された。
 カッコつけたくせに、周りを全く見てねぇんだよな。
 こんな子供だましですら引っかかるなんてよ。

「きっとこの奥に……行きましょう、師匠」
「さっさと終わらせてやろうぜ。くだらないお遊びに付き合わせやがって」
「おわれー!」

 レイヴンにひっついてるちまいのも楽しそうだしよ。
 コイツのことも考えなくっちゃいけねぇが……それも全部終わってからでいいか。
 今はさっさと終わらせることだけを考えねぇと。
 俺も手に入れた青の宝石をはめこむと、大扉がギギギと音を立てて開いていく。
 中は薄暗いが、赤く長い敷物がある部屋の作りは王宮勤めをしている者にとっては馴染み深いものだろう。

「王様気取りの魔族ねぇ。悪趣味だな」
「演出というのも大事な要素だ。我が愉しむためにはな」

 涼し気な声が室内に響くと同時に、魔法のあかりなのか空中に浮いた炎が順番にボッと音を立てながら左右連なって道を照らしていく。
 灯りは一直線に並んで玉座に座っていた人物に辿り着くと、ぶわりと灯りが広がって辺りが多少見やすくなる。
 想像より広い室内は天井も高く、少しくらい暴れても大丈夫そうな空間だ。

「ここまでくだらねぇ遊戯とやらに付き合ってやった訳だが、ついにご本人登場か。ったく、面倒臭ぇことやらせやがって」
「そう言うな、魔法使い。いや、テオドールだったか。それと周りの者も、悪くなかった」

 相変わらずムカつくほどに恰好付けてやがるが、自分の美貌びぼうに自信があるってことだろ。
 初めて会ったときと変わらぬ上級貴族のような服で、血のような紅い玉座に足を組んで座ってやがる。
 
「お前が……魔族か!」

 血気盛んなディーがいきなり剣を引き抜いて切っ先を向けても、眉の一つも動かしやしねぇ。
 聖女サマも言葉には出さねぇが、随分ピリピリしているみてぇだな。

「……こんな息もしづらい空間でよく普通に会話できますね。正直体の震えが止まりませんよ」
「それが普通だ。精霊ですらあまり深く関わり合いになりたくないものだ」

 これまで沈黙していたサラマンダーが嫌そうな顔で正面を見据える。
 魔族も当然精霊王の存在には気づいていて、フッと楽し気に口を歪ませた。
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