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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
397.水の精霊王<レイヴン視点>
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「あれは……まさか、サラマンダー様?」
「ええ。テオドールのことが気に入ったみたいですね。ふふ。あの人は強い者が好きだから」
空に現れた大きなドラゴンを見て、女の子は大はしゃぎだ。
今度はドラゴンを指さしてぴょんぴょんと跳ねまわる。
「すごいすごい! おっきい!」
「ええそうよ。いいこね? さあ、あなたもこの悪い人よりこっちのお兄さんと仲良くしましょう。大丈夫、この人はもうあなたに意地悪したりしないわ」
ウンディーネ様が優しい声色で話しかけると、女の子は俺が捕まえている男をじっと見つめる。
そして、俺と男を交互に見比べているみたいだ。
「んー……おにいちゃんはつよい?」
「うん。この人よりは強いよ。それに、君に意地悪や痛いこともしない」
「おねえさんも?」
「ええ。だから、あなたもいいこになれるかしら? いいこにしていたら、きっと楽しいことがたくさんあるわ」
「んー……」
女の子はじっと俺とウンディーネ様を見上げて考えているみたいだ。
その仕草はさっきまで恐ろしい魔法を放っていた子とは思えないくらい可愛らしい。
「わかった! いいこにする」
「ありがとう。じゃあ、戦うのはやめて仲良くしよう」
「うん!」
女の子は納得してくれたみたいだな。これも全てウンディーネ様の助言のおかげだ。
空で勇猛に炎を生み出すサラマンダー様のおかげで、合成獣たちがどんどん倒れていく。
急に囲まれて分断されたとは思っていたけど、合成獣たちが生み出され続けていたせいだったんだな。
だからテオの姿も見えなかったのか。
俺は目の前の女の子で手一杯になってしまったから、周りが見えていなかったみたいだ。
「げほっげほっ……あぁ……私の作品たちが……」
「サラマンダー様が全て焼き尽くしてくれているから、お前の思い通りにはならない。それに一対一ならお前には負けない」
ウンディーネ様の水から解放されてやっと息はできたみたいだけど、女の子は俺の側にいるし白髪の男の切り札はなくなったはずだ。
この男はずる賢いだけで戦闘能力はなさそうだし、捕縛魔法も効いたから今なら状態異常魔法も使える。
戦意喪失しているみたいだし、また何か変な動きをしたら黙らせればいい。
「恐ろしい者たちを生み出す悪しき召喚陣も燃やしたみたいですね。ほら、もう大丈夫ですよ」
ウンディーネ様の言葉で顔を上げると、焦げた合成獣たちの隙間を縫って何かがこちらへ近づいてくる。
見慣れた金髪と少し焦ったような赤い瞳が俺をまっすぐに捉えているのが分かり、緊張で固まっていた身体から力が抜けていく。
「レイヴン!」
「あ……テオ?」
テオの顔を見たら安心して、少し気が抜けた返事をしてしまった。
俺のことを信じてくれてはいたんだろうけど、心配してくれてたんだと思うとまだまだだなという気持ちと共に少し嬉しくなる。
でもテオの方に魔物使いがいたはずなのに、テオは魔物使いと合成獣たちを同時に相手していたってことか。
あの数を難なく相手していたとしたら……やっぱりテオは魔塔主で俺にとって超えられない師匠なんだと思い知らされる。
テオはさっと辺りの状況を見回して状況を確認していたので、俺の方から話しかける。
「空高く赤いドラゴンが現れたと思ったら……あちらはもしかして?」
「サラマンダーだとよ。で、そっちは……」
テオにも改めて確認してみたけど、やっぱりサラマンダー様がテオに手を貸していたんだな。
そして、テオも俺の側にいる女の子とウンディーネ様を交互に見ている。
俺はまずウンディーネ様に手のひらを向けた。
「こちらはウンディーネ様です。俺が困っているときに現れて助けてくださいました」
「で、さっきからお前にくっついてる見た目がごちゃついてる子どもは?」
テオもウンディーネ様にはある程度予測がついていたんだろう。
そして、俺にくっついている女の子に意味深な視線を落とす。
女の子について俺も詳しいことは分からないから、目の前で呆然としている白髪の男から聞き出すしかない。
「ええ。テオドールのことが気に入ったみたいですね。ふふ。あの人は強い者が好きだから」
空に現れた大きなドラゴンを見て、女の子は大はしゃぎだ。
今度はドラゴンを指さしてぴょんぴょんと跳ねまわる。
「すごいすごい! おっきい!」
「ええそうよ。いいこね? さあ、あなたもこの悪い人よりこっちのお兄さんと仲良くしましょう。大丈夫、この人はもうあなたに意地悪したりしないわ」
ウンディーネ様が優しい声色で話しかけると、女の子は俺が捕まえている男をじっと見つめる。
そして、俺と男を交互に見比べているみたいだ。
「んー……おにいちゃんはつよい?」
「うん。この人よりは強いよ。それに、君に意地悪や痛いこともしない」
「おねえさんも?」
「ええ。だから、あなたもいいこになれるかしら? いいこにしていたら、きっと楽しいことがたくさんあるわ」
「んー……」
女の子はじっと俺とウンディーネ様を見上げて考えているみたいだ。
その仕草はさっきまで恐ろしい魔法を放っていた子とは思えないくらい可愛らしい。
「わかった! いいこにする」
「ありがとう。じゃあ、戦うのはやめて仲良くしよう」
「うん!」
女の子は納得してくれたみたいだな。これも全てウンディーネ様の助言のおかげだ。
空で勇猛に炎を生み出すサラマンダー様のおかげで、合成獣たちがどんどん倒れていく。
急に囲まれて分断されたとは思っていたけど、合成獣たちが生み出され続けていたせいだったんだな。
だからテオの姿も見えなかったのか。
俺は目の前の女の子で手一杯になってしまったから、周りが見えていなかったみたいだ。
「げほっげほっ……あぁ……私の作品たちが……」
「サラマンダー様が全て焼き尽くしてくれているから、お前の思い通りにはならない。それに一対一ならお前には負けない」
ウンディーネ様の水から解放されてやっと息はできたみたいだけど、女の子は俺の側にいるし白髪の男の切り札はなくなったはずだ。
この男はずる賢いだけで戦闘能力はなさそうだし、捕縛魔法も効いたから今なら状態異常魔法も使える。
戦意喪失しているみたいだし、また何か変な動きをしたら黙らせればいい。
「恐ろしい者たちを生み出す悪しき召喚陣も燃やしたみたいですね。ほら、もう大丈夫ですよ」
ウンディーネ様の言葉で顔を上げると、焦げた合成獣たちの隙間を縫って何かがこちらへ近づいてくる。
見慣れた金髪と少し焦ったような赤い瞳が俺をまっすぐに捉えているのが分かり、緊張で固まっていた身体から力が抜けていく。
「レイヴン!」
「あ……テオ?」
テオの顔を見たら安心して、少し気が抜けた返事をしてしまった。
俺のことを信じてくれてはいたんだろうけど、心配してくれてたんだと思うとまだまだだなという気持ちと共に少し嬉しくなる。
でもテオの方に魔物使いがいたはずなのに、テオは魔物使いと合成獣たちを同時に相手していたってことか。
あの数を難なく相手していたとしたら……やっぱりテオは魔塔主で俺にとって超えられない師匠なんだと思い知らされる。
テオはさっと辺りの状況を見回して状況を確認していたので、俺の方から話しかける。
「空高く赤いドラゴンが現れたと思ったら……あちらはもしかして?」
「サラマンダーだとよ。で、そっちは……」
テオにも改めて確認してみたけど、やっぱりサラマンダー様がテオに手を貸していたんだな。
そして、テオも俺の側にいる女の子とウンディーネ様を交互に見ている。
俺はまずウンディーネ様に手のひらを向けた。
「こちらはウンディーネ様です。俺が困っているときに現れて助けてくださいました」
「で、さっきからお前にくっついてる見た目がごちゃついてる子どもは?」
テオもウンディーネ様にはある程度予測がついていたんだろう。
そして、俺にくっついている女の子に意味深な視線を落とす。
女の子について俺も詳しいことは分からないから、目の前で呆然としている白髪の男から聞き出すしかない。
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