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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女

393.思わぬ助力

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 何かしらの障壁しょうへきで外からの干渉はできねぇようだが、見ることだけはできるってことか。
 音も遮断しゃだんしてそうだが、ディーの声はデカすぎて障壁すら突破するのかもしれねぇな。
 
「召喚陣を壊さねぇことには、この群れは止まらない。数に限界はあるだろうが、付き合ってやる必要もねぇ。現状は速攻で数を減らすように魔法を連打するしかねぇな」

 怒り狂ってナイフを振るい続ける魔物使いの攻撃をかわしながら、ついでに合成獣キメラの数も減らしていくように魔法を放つ。
 魔物使いがあるじとかほざいてやがるし、宝石を所持しているのはおそらく白髪の方だろう。
 魔物使いをさっさと制圧したいところだが、合成獣キメラの数が減らないとどうにもならねぇ。

「簡単に突破させると思うか?」
「簡単に決まってんだろ。そろそろ沈んどけ」

 合成獣キメラたちに雷の雨サンダーレインを降らせつつ、魔物使いの攻撃を見定めて身体をひねる。
 頭の中で魔物使いを一撃で黙らせる魔法を思案しながら、時折風撃ウィンドブロウでヤツの身体を弾き飛ばす。
 そうすることによって、俺と魔物使いの距離はある程度保たれる。

「クソ……お前、魔法使いだろう? なぜこんなに肉弾戦が当たらない……」
「お前の攻撃なんざ、ウチの騎士団長さんに比べれば大したことはねぇんだよ。ヤツのことを褒めたくはねぇが、一撃が重くて速いからな」

 ディーはムカつくが戦闘能力に関しては文句はねぇ。
 ただし頭は使えねぇ戦い方だが、それすらもゴリ押しの強さで相手を圧倒しちまうからな。
 アイツは近距離、俺は少し離れたところから。コレで戦争も勝利してきた。

「にしても、俺も武器はナイフくらいしかねぇからな。合成獣キメラたちを処理しながら魔物使いと戦うってのが面倒だ。さっさと終わらせたいもんだが……」

 さて、どうしたもんか。
 一発で盤面をひっくり返すには、召喚陣を消し去っちまうしかねぇ。
 そこに辿り着くまでの圧倒的火力と場を見渡せる目が欲しいもんだが……周りを大小さまざまな種類の合成獣キメラたちに囲まれちまってるせいで、白髪の男の位置が分からねぇ。

「テオ! 聞こえるか? レイヴンは無事だ! 何かと戦っているようだが……どうも動きが鈍い感じがする」
「全く伝ってこねぇが、レイヴンが何か戸惑ってるってことかァ?」

 戦闘となりゃレイヴンだって腹はくくれるはずだが、何か理由があるってことか。
 あとの情報は辺りに響き渡る轟音と合成獣キメラたちのうめき声でかき消されちまった。
 これじゃらちが明かねぇ。

『……苦戦しているようだな』
「どこから声が……って。クレインからもらった金の指輪か? ということは、噂の精霊王サマか」
『然り。お前の戦いは指輪を通して伝わってきていた。何やらシルフィードも騒いでいるのでな。自分のお気に入りの子が危険だと』
「危険って……それはレイヴンのことか? ならさっさと力を貸せ!」
『全く……礼儀も何もない男だな。だが、私は種族関係なく強い者が好きだ。お前からは強い意志と豊富な魔力マナを感じる。いいだろう、力を貸してやる』

 ごちゃごちゃ言う割には分かりやすい精霊王サマだな。
 まあ、俺もその方がやりやすくていい。

『我が名はサラマンダー。今より少しの間、お前の手となり足となろう』

 金の指輪にはめ込まれていた赤い宝石が輝くと、炎がぶわりと立ちのぼる。
 炎は絶え間なく吹き出して大きな炎となり、火の粉を降らして空を焦がすように大きく広がりながら徐々に何かの形へ収束していく。
 大きな翼と立派な尾。そして、特徴的な角ときたら……ドラゴンか?
 他の精霊王サマに会ったことがないから知らねぇが、強そうな見た目はなかなかいいじゃねぇか。
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