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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
392.魔塔主と魔物使いと他多数
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レイヴンの方に間違いなく何者かが現れたんだが、デカイ合成獣の群れのせいで、そっちの状況が確認できない。
湧いてきた合成獣たちは言葉で表現できないような雄叫びをあげながら、俺の方へ一直線に向かってきてる。
大規模範囲魔法を使いたいが、宝石を手に入れる縛りのせいでやりにくくてしょうがねぇ。
「しかも、お前はこっち側かよ魔物使い!」
「お前も合成獣と俺の相手じゃ、簡単に主の元へは行けまい」
「簡単に行けるが、宝石を壊さないように気遣ってやるせいですぐに決着つけられねぇんだよ。ったく、どこまでもイラつかせてくれる」
何故か魔物使いと接近戦をやる羽目になってるんだよなぁ。
容赦なくコッチへ攻め込んできやがって……腹立つな。
だが、この程度で俺を止められると思われちゃ困る。
「――雷の雨」
右手で雷の雨を降らせ、左手で張った盾で魔物使いが放ってきたキツネの尾の刃を防ぐ。
雷の雨は一斉に合成獣どもの身体を貫いていくが、奥から合成獣が湧き出してくるのは止まらない。
「チィッ! キリがねぇ」
「主は残存勢力を全てつぎ込む張り切りようだ。いくら魔法使いとはいえ、数の暴力の前に一人では無力だ」
「いちいちうるせぇって言ってんだよ。あぁ……ぶっ放してえ。コイツらを一気に消し去る方が楽なんだよ。ちまちまやるのは性に合わねぇ」
一歩後ろに飛びのいて、身体を捻りながら魔物使いから追撃で放たれたナイフを躱す。
ついでに右手を弾いて魔法の軌道を変化させる。
「分割」
上から降らせていた雷の雨のうち一部を横向きへ変化させる。
湧いてくる合成獣にも変わらず刺さり、ついでに魔物使いへも雨は襲い掛かる。
「あぁ! お前……」
キツネが尾で雷の雨を受けようとしたみたいだが、刃から見事に感電してポトリと地へ落下する。
魔物使いは慌ててキツネを拾い上げると、俺を睨みつけてきた。
「よくも、俺の可愛い相棒を……」
「可愛がってるってか? 俺にとってのレイヴンはそんなもんの比じゃねぇんだよ」
ヤツの言い分なんてどうでもいい。今はレイヴンの安全が第一だ。
魔物使いはキツネを懐へ仕舞い、ナイフを構えて俺へ突進してくる。
雷の雨を行使したまま、盾を解除して雷の弾丸を何発か撃ち込んでいく。
「レイヴン! 俺の声が聞こえるか? 聞こえたら返事しろ!」
とは言っても、耳飾りの魔道具も妨害されている可能性が高いか。
合成獣の声が邪魔をするし、詠唱中は返事をすることすら危険だ。
レイヴンの力は信じているが、相手は何をするか分からねぇときてる。
白髪は力を誇示したい野郎だから、何かの隠し種を見せつけてくる可能性が高い。
何とかしてレイヴンの居場所を知りたいところだが、どうする――
「おい、テオ! こちらからじゃ何も見えないがどうなってる? お前らが囲まれてるのは合成獣なのか!」
ギャーギャーうるせえ合成獣たちの鳴き声の合間を縫っても聞こえてくるデカイ声。ディーか?
「俺は何ともねぇが、レイヴンはどうなってる?」
俺の声が聞こえるかどうかは分からねぇが、目いっぱい声を張る。
「残念だが、舞台の上は合成獣だらけだ! 俺たちの方には見えない壁に阻まれて来られないみたいだが、俺たちもお前たちの元へ行けないようだ。レイヴンの姿も見えん!」
ディーは耳も良かったな。俺の声を無事拾えたらしい。
アイツの野生もたまには役に立つじゃねぇか。
「レイヴンの方には雑魚の合成獣じゃねえ、何かがいるはずだ。ディー、レイヴンを探せ!」
「分かった。俺たちが手伝えることは少ないが、回り込めば何かしら見えるかもしれない。待ってろ!」
他のヤツらの声は全く聞こえねぇが、ディーの声だけは何とか拾えそうだ。
湧いてきた合成獣たちは言葉で表現できないような雄叫びをあげながら、俺の方へ一直線に向かってきてる。
大規模範囲魔法を使いたいが、宝石を手に入れる縛りのせいでやりにくくてしょうがねぇ。
「しかも、お前はこっち側かよ魔物使い!」
「お前も合成獣と俺の相手じゃ、簡単に主の元へは行けまい」
「簡単に行けるが、宝石を壊さないように気遣ってやるせいですぐに決着つけられねぇんだよ。ったく、どこまでもイラつかせてくれる」
何故か魔物使いと接近戦をやる羽目になってるんだよなぁ。
容赦なくコッチへ攻め込んできやがって……腹立つな。
だが、この程度で俺を止められると思われちゃ困る。
「――雷の雨」
右手で雷の雨を降らせ、左手で張った盾で魔物使いが放ってきたキツネの尾の刃を防ぐ。
雷の雨は一斉に合成獣どもの身体を貫いていくが、奥から合成獣が湧き出してくるのは止まらない。
「チィッ! キリがねぇ」
「主は残存勢力を全てつぎ込む張り切りようだ。いくら魔法使いとはいえ、数の暴力の前に一人では無力だ」
「いちいちうるせぇって言ってんだよ。あぁ……ぶっ放してえ。コイツらを一気に消し去る方が楽なんだよ。ちまちまやるのは性に合わねぇ」
一歩後ろに飛びのいて、身体を捻りながら魔物使いから追撃で放たれたナイフを躱す。
ついでに右手を弾いて魔法の軌道を変化させる。
「分割」
上から降らせていた雷の雨のうち一部を横向きへ変化させる。
湧いてくる合成獣にも変わらず刺さり、ついでに魔物使いへも雨は襲い掛かる。
「あぁ! お前……」
キツネが尾で雷の雨を受けようとしたみたいだが、刃から見事に感電してポトリと地へ落下する。
魔物使いは慌ててキツネを拾い上げると、俺を睨みつけてきた。
「よくも、俺の可愛い相棒を……」
「可愛がってるってか? 俺にとってのレイヴンはそんなもんの比じゃねぇんだよ」
ヤツの言い分なんてどうでもいい。今はレイヴンの安全が第一だ。
魔物使いはキツネを懐へ仕舞い、ナイフを構えて俺へ突進してくる。
雷の雨を行使したまま、盾を解除して雷の弾丸を何発か撃ち込んでいく。
「レイヴン! 俺の声が聞こえるか? 聞こえたら返事しろ!」
とは言っても、耳飾りの魔道具も妨害されている可能性が高いか。
合成獣の声が邪魔をするし、詠唱中は返事をすることすら危険だ。
レイヴンの力は信じているが、相手は何をするか分からねぇときてる。
白髪は力を誇示したい野郎だから、何かの隠し種を見せつけてくる可能性が高い。
何とかしてレイヴンの居場所を知りたいところだが、どうする――
「おい、テオ! こちらからじゃ何も見えないがどうなってる? お前らが囲まれてるのは合成獣なのか!」
ギャーギャーうるせえ合成獣たちの鳴き声の合間を縫っても聞こえてくるデカイ声。ディーか?
「俺は何ともねぇが、レイヴンはどうなってる?」
俺の声が聞こえるかどうかは分からねぇが、目いっぱい声を張る。
「残念だが、舞台の上は合成獣だらけだ! 俺たちの方には見えない壁に阻まれて来られないみたいだが、俺たちもお前たちの元へ行けないようだ。レイヴンの姿も見えん!」
ディーは耳も良かったな。俺の声を無事拾えたらしい。
アイツの野生もたまには役に立つじゃねぇか。
「レイヴンの方には雑魚の合成獣じゃねえ、何かがいるはずだ。ディー、レイヴンを探せ!」
「分かった。俺たちが手伝えることは少ないが、回り込めば何かしら見えるかもしれない。待ってろ!」
他のヤツらの声は全く聞こえねぇが、ディーの声だけは何とか拾えそうだ。
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