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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
388.愛のために戦う者
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こいつ……愛を語らせることによって勝負を混乱させるのが狙いか?
ごちゃごちゃと考えることが面倒臭ぇな。やっぱり適当に満足させてあとはディーの力押しで何とかするしかねぇ。
「おい、聖女サマ。お前が一番ソレっぽいから協力しろ。いい加減終わらせる」
「テオドール。貴方のことだからまた妙なことを言い出すのでしょう? 私たちが言い争っている間にも、ディーちゃんが頑張っているっていうのに……」
不満そうな聖女サマを納得させるために思い付きの作戦を伝えると、それしかないのと言いながらも渋々納得したらしい。
ウルガーは演技なんて絶対無理だと言ってきたし、レイヴンは嘘でも論外だからな。
「よし、じゃあ作戦を始めるぞ」
「仕方ないわね。分かったわ。ディーちゃん! 私のために頑張って!」
聖女サマは美しく微笑みながら、ディーを応援し始める。
ディーは声援に対してクソ真面目に返そうとするだろうから、ここは先手を打っておく。
伝音魔法を使用し、ディーのみに聞こえるように声を届ける。
『ディー……いいか、聖女サマとお前は今から禁断の恋人同士だ。分かったら彼氏らしく本気を出せ』
「なっ……」
ディーは反論しようとしたが、声の聞こえ方がいつもと違うことを察知したらしい。
珍しく冷静に判断できてるじゃねぇか。
この方法で戦争中に作戦を伝えたこともあったし、戦いのことは脳筋でもうっすら覚えてたんだろうな。
ディーはゼパルに気づかれないように、剣を打ち合いながら右足で地を二度叩く仕草をした。
これは理解したという合図だ。
否定の意味の場合、左足で二度地を叩くはずだ。
「見ていてください。俺は貴方のために目の前の敵を打ち滅ぼして見せましょう!」
ディーは下手な演技をするが、その言葉を聞いて剣を繰り出していたゼパルの動きにブレが生じる。
「コレハ……ソウカ。コレガヒメタルアイ……」
あの魔族、恋愛小説が好きなのか?
それとも魔族にも恋愛を司る魔族がいるのか……表情は分からねぇが喜んでるっぽいな。
「テオドール様……団長は嘘っぽく高らかに言い切っているのに秘めたる愛とか言いませんでした?」
「ああ。よく分からんがゼパルは満足してそうだな。恋愛ごっこが好きなんじゃねぇか?」
「ウルガー……ディートリッヒ様じゃなければ、剣を振るう力なんて残ってないと思う。それに加えて敵を欺く演技ができるだなんて……」
なんでレイヴンは感心してるんだか。
確かに全力とは言わねぇが永遠打ち合ってるもんな、あの二人。
飽きずによく戦い続けてるもんだ。
「貴方ならできるわ、ディーちゃん! 素敵よ」
聖女サマは聖女サマでワザとらしいんだよなァ。
この茶番の何がいいのか知らねぇが、早く終わらねぇかな。
飽きてきちまったし、もう叩き潰した方が早くねぇか?
「イイゾ。オマエノアイヲミセテミロ」
「魔族だというのに、そこまで愛を……敵ながらその考えは悪くない。だが、俺にも果たすべきことがある。これで終わりにさせてもらうぞ」
ディーは剣を押し込んでゼパルとの距離を取ると、両腕を掲げて剣を天へ突き出す。
この形はディーのお得意のアレか。
ディーは魔法が使えない分、剣技は使えるからな。
俺はパチンと指を鳴らして更なる結界を張り巡らせる。
盾よりも広範囲を囲めるが、魔力の消費が少々多いのが難点だ。
とは言っても、この人数なら大したことはねぇが。
あと、防御結界の方が辺りへ張り巡らせるから発動速度も劣るし、場所が発動した位置に固定されちまう。
盾は守る範囲が狭いが、瞬時に発動できて発動している間も動かすことが可能だ。
「師匠、結界を張るほど危ないんですか?」
「ディーは後先考えないからな。何が飛んでくるかも分からねぇし念のためだ」
物理に特化した結界だが、魔法が飛んできそうならレイヴンも補助に入るだろうから問題ない。
ゼパルはおそらく魔法的な力を使う気配はないから、これで十分だろ。
ごちゃごちゃと考えることが面倒臭ぇな。やっぱり適当に満足させてあとはディーの力押しで何とかするしかねぇ。
「おい、聖女サマ。お前が一番ソレっぽいから協力しろ。いい加減終わらせる」
「テオドール。貴方のことだからまた妙なことを言い出すのでしょう? 私たちが言い争っている間にも、ディーちゃんが頑張っているっていうのに……」
不満そうな聖女サマを納得させるために思い付きの作戦を伝えると、それしかないのと言いながらも渋々納得したらしい。
ウルガーは演技なんて絶対無理だと言ってきたし、レイヴンは嘘でも論外だからな。
「よし、じゃあ作戦を始めるぞ」
「仕方ないわね。分かったわ。ディーちゃん! 私のために頑張って!」
聖女サマは美しく微笑みながら、ディーを応援し始める。
ディーは声援に対してクソ真面目に返そうとするだろうから、ここは先手を打っておく。
伝音魔法を使用し、ディーのみに聞こえるように声を届ける。
『ディー……いいか、聖女サマとお前は今から禁断の恋人同士だ。分かったら彼氏らしく本気を出せ』
「なっ……」
ディーは反論しようとしたが、声の聞こえ方がいつもと違うことを察知したらしい。
珍しく冷静に判断できてるじゃねぇか。
この方法で戦争中に作戦を伝えたこともあったし、戦いのことは脳筋でもうっすら覚えてたんだろうな。
ディーはゼパルに気づかれないように、剣を打ち合いながら右足で地を二度叩く仕草をした。
これは理解したという合図だ。
否定の意味の場合、左足で二度地を叩くはずだ。
「見ていてください。俺は貴方のために目の前の敵を打ち滅ぼして見せましょう!」
ディーは下手な演技をするが、その言葉を聞いて剣を繰り出していたゼパルの動きにブレが生じる。
「コレハ……ソウカ。コレガヒメタルアイ……」
あの魔族、恋愛小説が好きなのか?
それとも魔族にも恋愛を司る魔族がいるのか……表情は分からねぇが喜んでるっぽいな。
「テオドール様……団長は嘘っぽく高らかに言い切っているのに秘めたる愛とか言いませんでした?」
「ああ。よく分からんがゼパルは満足してそうだな。恋愛ごっこが好きなんじゃねぇか?」
「ウルガー……ディートリッヒ様じゃなければ、剣を振るう力なんて残ってないと思う。それに加えて敵を欺く演技ができるだなんて……」
なんでレイヴンは感心してるんだか。
確かに全力とは言わねぇが永遠打ち合ってるもんな、あの二人。
飽きずによく戦い続けてるもんだ。
「貴方ならできるわ、ディーちゃん! 素敵よ」
聖女サマは聖女サマでワザとらしいんだよなァ。
この茶番の何がいいのか知らねぇが、早く終わらねぇかな。
飽きてきちまったし、もう叩き潰した方が早くねぇか?
「イイゾ。オマエノアイヲミセテミロ」
「魔族だというのに、そこまで愛を……敵ながらその考えは悪くない。だが、俺にも果たすべきことがある。これで終わりにさせてもらうぞ」
ディーは剣を押し込んでゼパルとの距離を取ると、両腕を掲げて剣を天へ突き出す。
この形はディーのお得意のアレか。
ディーは魔法が使えない分、剣技は使えるからな。
俺はパチンと指を鳴らして更なる結界を張り巡らせる。
盾よりも広範囲を囲めるが、魔力の消費が少々多いのが難点だ。
とは言っても、この人数なら大したことはねぇが。
あと、防御結界の方が辺りへ張り巡らせるから発動速度も劣るし、場所が発動した位置に固定されちまう。
盾は守る範囲が狭いが、瞬時に発動できて発動している間も動かすことが可能だ。
「師匠、結界を張るほど危ないんですか?」
「ディーは後先考えないからな。何が飛んでくるかも分からねぇし念のためだ」
物理に特化した結界だが、魔法が飛んできそうならレイヴンも補助に入るだろうから問題ない。
ゼパルはおそらく魔法的な力を使う気配はないから、これで十分だろ。
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