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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
386.謎の問いかけ
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ディーと赤い甲冑は、お互いに剣の切っ先を触れ合わせる。
ご丁寧にディーから名乗りを上げるみたいだな。
「俺はアレーシュ王国騎士団の騎士団長、ディートリッヒ・アーベラインだ。そなたの名を聞かせてもらおうか」
「……ゼパル」
距離をとってから会話を聞きやすくするために音は魔法で拾ってるが……ディーの名乗りに対してわざわざ名乗り返す魔族がいるとはな。
魔族にも騎士道精神なんてもんがあるのか? まあ、なんでもアリっちゃアリか。
「集音魔法まで駆使して見守ってあげるだなんて、テオドールにも優しいところがあるのね」
「そんなんじゃねぇよ。ゴリ押ししかしねぇ騎士団長さんに指示出しするには、コッチも情報が必要だろうが。勝負っていうのがただの戦いのことを意味するのかまだ分かんねぇだろ」
「団長に駆け引きなんて器用なことはできませんからね。今回ばかりはテオドール様が正しいです」
聖女サマの言うことはどうでもいいが、ウルガーの言うことは正しい。
ディーに戦略なんてものはねぇ。コッチが言えば一応作戦には従うが、何も言わなければ力押しで無理やり押し通すのがディーのやり方だ。
俺らが話している間にもゼパルとディーは互いに出方を見ていたようだが、先に動いたのはゼパルだ。
ディーへ詰め寄って剣をブンと振り下ろす。
ディーも受け止めてるが、なかなか一撃は重そうだな。
珍しくディーが足を踏ん張ってやがる。
「さすがは魔族といったところか。重さと早さが乗った攻撃だ。今度はこちらから行くぞ!」
ディーは剣をはじき、左斜め上から振り下ろす。
ゼパルもすぐに構え直して、ディーの剣を受け止めてるな。
ディーも試しに一撃振り下ろしたみてぇだが、相手も反応が早い。
グッと体重を乗せても、ギリギリという音が聞こえるだけでゼパルって野郎も冷静に力加減を見てるみたいだ。
「ほう? やはり魔族。この程度の一撃ではビクともしないか」
「……オマエハ、ナンノタメニケンヲフルウ?」
ゼパルが急に問いかけたせいで、ディーの集中力が一瞬乱れる。
その隙をつかれて、ディーは剣を弾かれて少し後ずさりしちまった。
「何の為だと? 決まっている。己が背負うものの為だ。今回は王命と友人の命がかかっているのでな」
魔族相手に馬鹿正直に答えてどうするんだっての。
文句を言ってやろうとしたのに、ゼパルの声に遮られる。
「ユウジントハナンダ? ソレハアイスルモノ……?」
ゼパルの言葉が不愉快すぎて、違う意味でゾッとする。
ディーの言った友人って一応俺のことだろ? ディーが愛する者だとか冗談じゃねぇ!
気分は最悪だし、なんかムカムカしてきたな。
「ディー、さっさと否定しろ! ゼパルのせいで吐き気が止まらねぇ。何が愛する者だ!」
「な……おい、テオドール! この戦いはお前のためでもあるというのに、その言い草はなんだ!」
「おい、コッチを振り向くな! 否定しながら攻撃を交わせ、この馬鹿野郎が!」
俺がイラついて叫んじまったせいで、ディーの集中力が途切れちまった。
ゼパルがすかさず距離を詰めて横なぎに剣を振ってくるのが見えた。
「団長!」
「分かってる!」
ディーはウルガーの声にも反応しながら、上から差し込んだ刃で剣を受け止める。
ギリギリ甲冑にも当たらなかったみたいだな。
「ったく、集中しろよ。文句と指示は振り返らずとも魔法で飛ばして聞こえやすくしてやってんだ。ただ、否定はしておけ! 想像だけで鳥肌が止まらねぇ」
「全く、いちいち煩い男だ。という訳だから、愛とは関係ない。しかし、いきなり何の話だ」
ディーは俺の言うことを聞いて、今度は振り返らずに会話を続ける。
このゼパルっていうのは何がしたいんだ?
急に妙なことを語り出すのは困惑させる意図でもあるのかもしれねぇが、今はまだ分からねぇな。
ご丁寧にディーから名乗りを上げるみたいだな。
「俺はアレーシュ王国騎士団の騎士団長、ディートリッヒ・アーベラインだ。そなたの名を聞かせてもらおうか」
「……ゼパル」
距離をとってから会話を聞きやすくするために音は魔法で拾ってるが……ディーの名乗りに対してわざわざ名乗り返す魔族がいるとはな。
魔族にも騎士道精神なんてもんがあるのか? まあ、なんでもアリっちゃアリか。
「集音魔法まで駆使して見守ってあげるだなんて、テオドールにも優しいところがあるのね」
「そんなんじゃねぇよ。ゴリ押ししかしねぇ騎士団長さんに指示出しするには、コッチも情報が必要だろうが。勝負っていうのがただの戦いのことを意味するのかまだ分かんねぇだろ」
「団長に駆け引きなんて器用なことはできませんからね。今回ばかりはテオドール様が正しいです」
聖女サマの言うことはどうでもいいが、ウルガーの言うことは正しい。
ディーに戦略なんてものはねぇ。コッチが言えば一応作戦には従うが、何も言わなければ力押しで無理やり押し通すのがディーのやり方だ。
俺らが話している間にもゼパルとディーは互いに出方を見ていたようだが、先に動いたのはゼパルだ。
ディーへ詰め寄って剣をブンと振り下ろす。
ディーも受け止めてるが、なかなか一撃は重そうだな。
珍しくディーが足を踏ん張ってやがる。
「さすがは魔族といったところか。重さと早さが乗った攻撃だ。今度はこちらから行くぞ!」
ディーは剣をはじき、左斜め上から振り下ろす。
ゼパルもすぐに構え直して、ディーの剣を受け止めてるな。
ディーも試しに一撃振り下ろしたみてぇだが、相手も反応が早い。
グッと体重を乗せても、ギリギリという音が聞こえるだけでゼパルって野郎も冷静に力加減を見てるみたいだ。
「ほう? やはり魔族。この程度の一撃ではビクともしないか」
「……オマエハ、ナンノタメニケンヲフルウ?」
ゼパルが急に問いかけたせいで、ディーの集中力が一瞬乱れる。
その隙をつかれて、ディーは剣を弾かれて少し後ずさりしちまった。
「何の為だと? 決まっている。己が背負うものの為だ。今回は王命と友人の命がかかっているのでな」
魔族相手に馬鹿正直に答えてどうするんだっての。
文句を言ってやろうとしたのに、ゼパルの声に遮られる。
「ユウジントハナンダ? ソレハアイスルモノ……?」
ゼパルの言葉が不愉快すぎて、違う意味でゾッとする。
ディーの言った友人って一応俺のことだろ? ディーが愛する者だとか冗談じゃねぇ!
気分は最悪だし、なんかムカムカしてきたな。
「ディー、さっさと否定しろ! ゼパルのせいで吐き気が止まらねぇ。何が愛する者だ!」
「な……おい、テオドール! この戦いはお前のためでもあるというのに、その言い草はなんだ!」
「おい、コッチを振り向くな! 否定しながら攻撃を交わせ、この馬鹿野郎が!」
俺がイラついて叫んじまったせいで、ディーの集中力が途切れちまった。
ゼパルがすかさず距離を詰めて横なぎに剣を振ってくるのが見えた。
「団長!」
「分かってる!」
ディーはウルガーの声にも反応しながら、上から差し込んだ刃で剣を受け止める。
ギリギリ甲冑にも当たらなかったみたいだな。
「ったく、集中しろよ。文句と指示は振り返らずとも魔法で飛ばして聞こえやすくしてやってんだ。ただ、否定はしておけ! 想像だけで鳥肌が止まらねぇ」
「全く、いちいち煩い男だ。という訳だから、愛とは関係ない。しかし、いきなり何の話だ」
ディーは俺の言うことを聞いて、今度は振り返らずに会話を続ける。
このゼパルっていうのは何がしたいんだ?
急に妙なことを語り出すのは困惑させる意図でもあるのかもしれねぇが、今はまだ分からねぇな。
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