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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
385.勝利者の帰還
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暇を持て余しすぎて一服でもしてやろうと思ったのに、レイヴンにあっさり止められちまった。
ウルガーが戻ってくるまでやることねぇっていうのによ。
「師匠……常識がないのは重々承知ですが、この状況でよく煙草を吸おうと思いましたね? 呆れすぎて何も言えません」
「文句言ってるじゃねぇか。それに吸ったからって何される訳でもなし、ここは貴族様のお屋敷でもなんでもねぇんだぞ」
取り出した煙草を仕方なく箱に戻すと、さっきから何か言いたげな顔をしていたディーが俺の煙草を奪おうと手を伸ばしてきやがる。
勿論、そんなことさせねぇが。
煙草に認識妨害をかけて、ディーの視界を遮る。
「なっ……消えた?」
「テオドール……貴方、くだらないことに魔法を使うのやめなさい。だから、魔塔主はって言われるんでしょうが」
「別になんだっていいだろうが。そんなことより、どうやらご帰還みたいだな」
顎で上を指し示すと、扉からちょうどウルガーが出てきたところだった。
相変わらず空気を読むヤツだ。おかげで聖女サマのお説教も回避できたな。
「ウルガー! 無事だったか」
「俺を勝手に亡き者にしないでくださいよ、団長。何とかなりました。ほら、宝石です」
ウルガーが手に持った赤い宝石を見せながらゆっくりと階段を下りてくると同時に、今度はエントランスホール左奥の扉がギィという音を立てて開いていく。
次の目的地へご案内ってか?
「扉が勝手に……つまり、そちらへ向かえということか」
「んなこといちいち言わなくても分かるだろ。いいからさっさと終わらせるぞ」
ウルガーと合流し、自分が先頭で様子見をすると言い張るディーを先頭にして扉の奥を覗き込む。
相手が高度な魔法でも使わない限り罠はないはずだが、ディーを盾にするのが一番いいだろうな。
「ふむ……ここは訓練場か?」
「みたいね。それにとても分かりやすく待っていたみたいだけれど」
聖女サマが杖を指し示す先には、赤い装束と甲冑を着込んだ騎士のような姿のヤツがブンブンと剣を振って訓練していた。
俺たちが入ると同時にバッと振り向き、切っ先をこちらへ向けている。
「……ショウブ、シロ」
「勝負だァ? これまた面倒そうなヤツが……」
俺が言い切らないうちに、出番を待ち構えていたらしいディーが一歩前へ進み出た。
まあ、力に力は悪くないぶつけ方ではあるだろうが勝負はゴリ押しで満足するのか? コイツは。
「俺が相手になろう。構わないか?」
ディーが問うと、赤い甲冑は同意の頷きを返してきた。
コイツはペラペラ喋らないみたいだな。無言で訓練場の中央へ立ってデカイ剣を構える。
ディーも俺らに視線を送ってから、赤い甲冑の正面へ立ち自慢の剣を構えた。
近くにいて戦いの巻き添えを食うのはごめんだからな。
俺らは中心で向かいあう二人を眺めることにしてディーを残してこの場から離れて、訓練場の端で見物することにした。
ディーより一回りくらいデカイが、デカイだけなら問題はなさそうだ。
ただ、相手は魔族だからデカイ魔物とは訳が違う。
それでもディーはいつも通り力のみでいくんだろうがな。
純粋な勝負ってヤツをお望みなら、ディーが適任なのは間違いない。
「カマワヌ。ヤルゾ」
「つまり、勝負とやらに勝てば宝石をよこすんだな?」
ディーの問いかけに反応し、赤い甲冑は頷いたように見えた。
ウルガーが戻ってくるまでやることねぇっていうのによ。
「師匠……常識がないのは重々承知ですが、この状況でよく煙草を吸おうと思いましたね? 呆れすぎて何も言えません」
「文句言ってるじゃねぇか。それに吸ったからって何される訳でもなし、ここは貴族様のお屋敷でもなんでもねぇんだぞ」
取り出した煙草を仕方なく箱に戻すと、さっきから何か言いたげな顔をしていたディーが俺の煙草を奪おうと手を伸ばしてきやがる。
勿論、そんなことさせねぇが。
煙草に認識妨害をかけて、ディーの視界を遮る。
「なっ……消えた?」
「テオドール……貴方、くだらないことに魔法を使うのやめなさい。だから、魔塔主はって言われるんでしょうが」
「別になんだっていいだろうが。そんなことより、どうやらご帰還みたいだな」
顎で上を指し示すと、扉からちょうどウルガーが出てきたところだった。
相変わらず空気を読むヤツだ。おかげで聖女サマのお説教も回避できたな。
「ウルガー! 無事だったか」
「俺を勝手に亡き者にしないでくださいよ、団長。何とかなりました。ほら、宝石です」
ウルガーが手に持った赤い宝石を見せながらゆっくりと階段を下りてくると同時に、今度はエントランスホール左奥の扉がギィという音を立てて開いていく。
次の目的地へご案内ってか?
「扉が勝手に……つまり、そちらへ向かえということか」
「んなこといちいち言わなくても分かるだろ。いいからさっさと終わらせるぞ」
ウルガーと合流し、自分が先頭で様子見をすると言い張るディーを先頭にして扉の奥を覗き込む。
相手が高度な魔法でも使わない限り罠はないはずだが、ディーを盾にするのが一番いいだろうな。
「ふむ……ここは訓練場か?」
「みたいね。それにとても分かりやすく待っていたみたいだけれど」
聖女サマが杖を指し示す先には、赤い装束と甲冑を着込んだ騎士のような姿のヤツがブンブンと剣を振って訓練していた。
俺たちが入ると同時にバッと振り向き、切っ先をこちらへ向けている。
「……ショウブ、シロ」
「勝負だァ? これまた面倒そうなヤツが……」
俺が言い切らないうちに、出番を待ち構えていたらしいディーが一歩前へ進み出た。
まあ、力に力は悪くないぶつけ方ではあるだろうが勝負はゴリ押しで満足するのか? コイツは。
「俺が相手になろう。構わないか?」
ディーが問うと、赤い甲冑は同意の頷きを返してきた。
コイツはペラペラ喋らないみたいだな。無言で訓練場の中央へ立ってデカイ剣を構える。
ディーも俺らに視線を送ってから、赤い甲冑の正面へ立ち自慢の剣を構えた。
近くにいて戦いの巻き添えを食うのはごめんだからな。
俺らは中心で向かいあう二人を眺めることにしてディーを残してこの場から離れて、訓練場の端で見物することにした。
ディーより一回りくらいデカイが、デカイだけなら問題はなさそうだ。
ただ、相手は魔族だからデカイ魔物とは訳が違う。
それでもディーはいつも通り力のみでいくんだろうがな。
純粋な勝負ってヤツをお望みなら、ディーが適任なのは間違いない。
「カマワヌ。ヤルゾ」
「つまり、勝負とやらに勝てば宝石をよこすんだな?」
ディーの問いかけに反応し、赤い甲冑は頷いたように見えた。
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