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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
379.子どもの遊戯
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やたらと楽しそうなガキとイライラを隠してる俺たち。
この状態もガキの戦略の一つかもしれねぇが、待ってるだけの時間は長く感じる。
ガキはしばらく俺らを観察してたが、漸く相手を決めたのかピタリと動きを止めた。
「決めーた! 僕と遊んでもらうのはそこのお姉さんにする!」
「私? 遊ぶって……何をするつもり?」
聖女サマが指さされると、聖女サマは苛立ちを隠しきれない顔でガキを見返す。
ニコニコと楽しそうな顔をしたガキは、急にごめんと謝りペロっと舌を出した。
「最初に自己紹介ってヤツをするんだったよね。忘れちゃった。僕はウァラク。よろしくね! で、お姉さんのお名前は?」
「……クローディアンヌよ。魔族に名前を全て名乗る必要はないし、これだけ名乗れば構わないわよね?」
不服そうに聖女サマが名乗ると、ウァラクは満足げに微笑んで見せた。
「クロ……お名前長いからお姉さんでいいや。僕と遊んでお姉さんが勝ったら宝石を渡してあげる。僕はね、鬼ごっこがしてみたいんだ」
「鬼ごっこですって? つまり、私が鬼で貴方が逃げるという訳?」
聖女サマが聞くと、うん! と楽しそうな声が返ってくる。
心底くだらねぇ遊びに付き合わされるみたいだな。
たかが鬼ごっこだろうが、コイツの言う鬼ごっこが子どものお遊びで済むとは限らねぇ。
命をかけたもんになるかもしれねぇしな。
「ここまで来て、鬼ごっこだと……?」
「団長、静かに。今は聖女様と魔族がやり取りをしてますから、俺たちは聖女様を見守る以外することがないんですよ」
「ウルガーの言う通りだ。コイツがお愉しみってヤツなんだろ? いいから、さっさと始めろ」
一番不服なのはご指名を受けた聖女サマだろうよ。
なのに、ディーがでしゃばったら意味がねえ。
ディーは渋々引き下がって、聖女サマから数歩離れた。
「私だって不本意だけど、やるならさっさと始めましょう。行くわよ」
「聖女様、お気をつけて」
心配そうな声色で言葉をかけるレイヴンに、聖女サマは笑って見せてから改めてウァラクの方へ向き直る。
鬼ごっこだってのに、杖を握りしめてる辺りは腹を括ってるじゃねぇか。
「じゃあ、行くよ! 鬼さん、こーちら!」
ウァラクはふわりと飛び上がり、聖女サマは臨戦態勢を取る。
飛び上がったウァラクがビュンと左の階段の方へ向かうと、聖女も小走りで追いかける。
まんま鬼ごっこをさせられてる訳だが、どう考えても不利なのは聖女サマだ。
「アハハ! ほらほら、捕まえてよ!」
ウァラクは甲高く笑いながら、楽しそうにクルクル飛び回る。
挑発されても落ち着いてるのはいいが、あのローブじゃ走り回るには向いてなさそうだな。
聖女は片手で裾を持ち上げながら、階段をトントンと上っていく。
「遅いよー! ほらほらー!」
「……今行くわよ。待ってなさい」
ケラケラと笑いながらクルクルとエントランスホールを飛び回るウァラクに対して、聖女サマができる手段は追いかけることだけだ。
この様子じゃ捕まえる前に体力がなくなっちまうだろうな。
「このままじゃ、聖女様が……」
「アイツの顔を見てみろ。苛立ってはいるみてぇだが、諦める気はなさそうだ」
レイヴンの頭をポンポンと撫でながら、不毛な鬼ごっこを眺めるしかねぇとはな。
無駄な時間を過ごしているようにしか思えねぇし、あの小生意気な顔に一発お見舞いしたくなってきた。
この状態もガキの戦略の一つかもしれねぇが、待ってるだけの時間は長く感じる。
ガキはしばらく俺らを観察してたが、漸く相手を決めたのかピタリと動きを止めた。
「決めーた! 僕と遊んでもらうのはそこのお姉さんにする!」
「私? 遊ぶって……何をするつもり?」
聖女サマが指さされると、聖女サマは苛立ちを隠しきれない顔でガキを見返す。
ニコニコと楽しそうな顔をしたガキは、急にごめんと謝りペロっと舌を出した。
「最初に自己紹介ってヤツをするんだったよね。忘れちゃった。僕はウァラク。よろしくね! で、お姉さんのお名前は?」
「……クローディアンヌよ。魔族に名前を全て名乗る必要はないし、これだけ名乗れば構わないわよね?」
不服そうに聖女サマが名乗ると、ウァラクは満足げに微笑んで見せた。
「クロ……お名前長いからお姉さんでいいや。僕と遊んでお姉さんが勝ったら宝石を渡してあげる。僕はね、鬼ごっこがしてみたいんだ」
「鬼ごっこですって? つまり、私が鬼で貴方が逃げるという訳?」
聖女サマが聞くと、うん! と楽しそうな声が返ってくる。
心底くだらねぇ遊びに付き合わされるみたいだな。
たかが鬼ごっこだろうが、コイツの言う鬼ごっこが子どものお遊びで済むとは限らねぇ。
命をかけたもんになるかもしれねぇしな。
「ここまで来て、鬼ごっこだと……?」
「団長、静かに。今は聖女様と魔族がやり取りをしてますから、俺たちは聖女様を見守る以外することがないんですよ」
「ウルガーの言う通りだ。コイツがお愉しみってヤツなんだろ? いいから、さっさと始めろ」
一番不服なのはご指名を受けた聖女サマだろうよ。
なのに、ディーがでしゃばったら意味がねえ。
ディーは渋々引き下がって、聖女サマから数歩離れた。
「私だって不本意だけど、やるならさっさと始めましょう。行くわよ」
「聖女様、お気をつけて」
心配そうな声色で言葉をかけるレイヴンに、聖女サマは笑って見せてから改めてウァラクの方へ向き直る。
鬼ごっこだってのに、杖を握りしめてる辺りは腹を括ってるじゃねぇか。
「じゃあ、行くよ! 鬼さん、こーちら!」
ウァラクはふわりと飛び上がり、聖女サマは臨戦態勢を取る。
飛び上がったウァラクがビュンと左の階段の方へ向かうと、聖女も小走りで追いかける。
まんま鬼ごっこをさせられてる訳だが、どう考えても不利なのは聖女サマだ。
「アハハ! ほらほら、捕まえてよ!」
ウァラクは甲高く笑いながら、楽しそうにクルクル飛び回る。
挑発されても落ち着いてるのはいいが、あのローブじゃ走り回るには向いてなさそうだな。
聖女は片手で裾を持ち上げながら、階段をトントンと上っていく。
「遅いよー! ほらほらー!」
「……今行くわよ。待ってなさい」
ケラケラと笑いながらクルクルとエントランスホールを飛び回るウァラクに対して、聖女サマができる手段は追いかけることだけだ。
この様子じゃ捕まえる前に体力がなくなっちまうだろうな。
「このままじゃ、聖女様が……」
「アイツの顔を見てみろ。苛立ってはいるみてぇだが、諦める気はなさそうだ」
レイヴンの頭をポンポンと撫でながら、不毛な鬼ごっこを眺めるしかねぇとはな。
無駄な時間を過ごしているようにしか思えねぇし、あの小生意気な顔に一発お見舞いしたくなってきた。
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