380 / 483
第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
378.遊戯開始
しおりを挟む
レイヴンは俺の気持ちを察してるんだろうな。
今はその時じゃないってか? ここは弟子に免じて落ち着くしかねぇな。
「そんな目で見なくても、この場で魔法をぶっ放したりしねぇよ」
「一応は信用してますよ。でも、師匠がブチ切れると何をするか分かりませんから……」
隣でうんうんと頷いてやがるウルガーの頭上に軽く拳を落として憂さ晴らししてる間に、言いたいことだけいった黒猫は消えちまった。
全員で顔を見合わせ大扉を潜ると、そこは真っ赤な絨毯が敷かれたエントランスホールだった。
城内なんて、そんなもんだろうがな。
正面の奥にはステンドグラスが飾ってあるし、両脇には螺旋階段もある。
もっと気色悪い感じかと思ったが、意外と小綺麗で埃一つもねぇし立派なもんだ。
ディーは早速辺りを警戒してやがるが、ここに一人目がいるのは間違いないだろう。
俺らのことを待ち構えてるってのは本当だったのか、すぐに耳障りな甲高い笑い声が聞こえてきた。
「待ちくたびれちゃったよー! 僕、遊んでほしくて待ってたのにさ」
「一体どこからだ!」
「団長、たぶんあそこ。今更威嚇しても遅いですって。ここは愉しみとやらにのってやらないと」
相変わらずやる気満々のディーと比べて、ウルガーは状況を冷静に受け止めてるみてぇだな。
エントランスの奥の方で不自然に浮かぶ何かを指さしてやがる。
ディーみたいに騒いだところで、どうせ状況は変わらない。
腹は立つが、コッチは魔族たちに付き合ってやるしか選択肢がないからだ。
俺らの方へ声の主が近づいてくる。
赤と青の双頭のドラゴンに乗っかってる、天使みてぇな羽を生やした銀髪のガキだ。
服装も白を基調としたふわりとした布みたいなもんで、見た目だけなら天使に見えなくもない。
新緑のような緑の瞳はくりくりして可愛いもんだが、可愛い見た目と裏腹に自然と寒気がする。
彫刻みたいな完璧な可愛らしさは、異常さも持ち合わせてるってことだな。
「お前が一番手なのか?」
「おじさん、そんな怖い顔しないでよ。こんなに可愛い僕を見て何とも思わないの?」
ガキが愛らしく首をこてんと傾けるが、ディーは眉を吊り上げるだけだ。
話す相手がディーじゃなけりゃここまで反応することもないんだろうが、コイツわざと煽ってきてやがるな。
「団長、この調子で行くとすぐに力みすぎて疲れちゃいますよ。警戒はほどほどに。さっさと済ませましょう」
「そうね。ディーちゃん、気持ちは分かるけれどウルガーちゃんの言う通り。私だって、この姿を見ているだけで腹立たしいけれど今は早く終わらせることだけ考えましょう」
珍しく聖女サマがまともなことを言ってるな。
俺はレイヴンが無言の圧をかけてきてるから、大人しく待つだけだ。
どうせ、相手から指名をしてくるはずだからな。
「聞き分けの良い子は好きだよ。じゃあ、誰に遊んでもらおうかなー? 僕は戦いとか血なまぐさいことはあんまり好きじゃないんだよね」
クスクスと笑いながら、俺らを品定めするようにふわふわと飛び回る。
正直うぜぇしはたき落としてやりてぇが、ここは抑えて様子を見守ってやるか。
今はその時じゃないってか? ここは弟子に免じて落ち着くしかねぇな。
「そんな目で見なくても、この場で魔法をぶっ放したりしねぇよ」
「一応は信用してますよ。でも、師匠がブチ切れると何をするか分かりませんから……」
隣でうんうんと頷いてやがるウルガーの頭上に軽く拳を落として憂さ晴らししてる間に、言いたいことだけいった黒猫は消えちまった。
全員で顔を見合わせ大扉を潜ると、そこは真っ赤な絨毯が敷かれたエントランスホールだった。
城内なんて、そんなもんだろうがな。
正面の奥にはステンドグラスが飾ってあるし、両脇には螺旋階段もある。
もっと気色悪い感じかと思ったが、意外と小綺麗で埃一つもねぇし立派なもんだ。
ディーは早速辺りを警戒してやがるが、ここに一人目がいるのは間違いないだろう。
俺らのことを待ち構えてるってのは本当だったのか、すぐに耳障りな甲高い笑い声が聞こえてきた。
「待ちくたびれちゃったよー! 僕、遊んでほしくて待ってたのにさ」
「一体どこからだ!」
「団長、たぶんあそこ。今更威嚇しても遅いですって。ここは愉しみとやらにのってやらないと」
相変わらずやる気満々のディーと比べて、ウルガーは状況を冷静に受け止めてるみてぇだな。
エントランスの奥の方で不自然に浮かぶ何かを指さしてやがる。
ディーみたいに騒いだところで、どうせ状況は変わらない。
腹は立つが、コッチは魔族たちに付き合ってやるしか選択肢がないからだ。
俺らの方へ声の主が近づいてくる。
赤と青の双頭のドラゴンに乗っかってる、天使みてぇな羽を生やした銀髪のガキだ。
服装も白を基調としたふわりとした布みたいなもんで、見た目だけなら天使に見えなくもない。
新緑のような緑の瞳はくりくりして可愛いもんだが、可愛い見た目と裏腹に自然と寒気がする。
彫刻みたいな完璧な可愛らしさは、異常さも持ち合わせてるってことだな。
「お前が一番手なのか?」
「おじさん、そんな怖い顔しないでよ。こんなに可愛い僕を見て何とも思わないの?」
ガキが愛らしく首をこてんと傾けるが、ディーは眉を吊り上げるだけだ。
話す相手がディーじゃなけりゃここまで反応することもないんだろうが、コイツわざと煽ってきてやがるな。
「団長、この調子で行くとすぐに力みすぎて疲れちゃいますよ。警戒はほどほどに。さっさと済ませましょう」
「そうね。ディーちゃん、気持ちは分かるけれどウルガーちゃんの言う通り。私だって、この姿を見ているだけで腹立たしいけれど今は早く終わらせることだけ考えましょう」
珍しく聖女サマがまともなことを言ってるな。
俺はレイヴンが無言の圧をかけてきてるから、大人しく待つだけだ。
どうせ、相手から指名をしてくるはずだからな。
「聞き分けの良い子は好きだよ。じゃあ、誰に遊んでもらおうかなー? 僕は戦いとか血なまぐさいことはあんまり好きじゃないんだよね」
クスクスと笑いながら、俺らを品定めするようにふわふわと飛び回る。
正直うぜぇしはたき落としてやりてぇが、ここは抑えて様子を見守ってやるか。
10
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件
深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。
ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが――
その内容がとても信じられないもので…
bloveさんにも投稿しております。
完結しました。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる