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第十四章 準備万端な魔塔主と常に努力する弟子
363.当てが外れた師匠と優しく励ます弟子
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俺はレイヴンと離れていて寂しくなった師匠を演じながら、レイヴンの手を取って軽く握る。
警戒していないレイヴンは、俺の言葉を静かに待っているようだ。
「俺もレイヴンのことをたくさん褒めてやるから。レイヴンも俺にご褒美をくれないか?」
「ご褒美ですか? 俺ができそうなことであれば。テオは上に立つものとして、いつも俺たちを導いてくれていますから。導き方が多少乱暴でも、尊敬すべき魔塔主様ですよ」
レイヴンが優しく微笑みかけてくれると、さすがに少し罪悪感が湧く気もするが全部嘘って訳でもねぇし。
ここは一気に畳みかけて、優しくしてもらうに限る。
「ありがとな。俺もレイヴンが補佐官だからこそ安心できるってもんだ。それに……レイヴンが俺を褒めながらキスしてくれたら元気が出そうだ」
「俺のことを頼りにしてくれるのは嬉しいんですが……キス?」
「ああ。ダメか?」
あくまで弱っている風を装って、レイヴンに強請るような視線を向ける。
普段なら突っぱねてくるはずだが、どうやら俺が本当に弱気だと思ってくれたみたいだな。
レイヴンは俺から視線を外して逡巡したあと、分かりましたと言ってきた。
「仕方ありませんね。俺だって……いえ、今はテオを励まさないと」
レイヴンは頷いてからカップのコーヒーを手に取ってグッと飲み干すと、俺の方へ改めて身体を向けてきた。
俺が握った手の上に、レイヴンは優しく手を重ねてくる。
「テオ、俺があなたの側で力になります。だから、背負い過ぎないでください。俺にもあなたの重荷を背負わせて欲しいんです」
レイヴンが真剣に俺を励ましてくるせいで、完全に毒気を抜かれちまった。
黒の瞳に捉えられると、逃さない圧迫感ではなくふわりと包み込まれるような気がする。
レイヴンは左手を俺の頬に添えて、優しいキスを唇へ落としてきた。
「テオは凄いです。不可能を可能にしてしまう実力を持っています。でも、それはテオが真摯に魔法と向き合っているからですよね。誰も知らなくても、俺は知ってるんですから。安心してくださいね」
レイヴンが微笑みながら、細い指で俺の頬を撫でる。
労わるような動きは、俺が思っていた展開とは全く違うものだが……たまにはこういうのも悪くない。
ただ、真面目に褒められると妙に気恥ずかしいもんだ。
レイヴンは俺の僅かな表情の変化にもすぐ気づいたのか、クスっと笑って更にちゅっと啄むように口付けてくる。
このままだと、レイヴンの真っ直ぐな優しさに俺の方が押し負けそうだな。
いつもの如くぎゃあぎゃあ言わせてから押し倒した方が分かりやすかったんだろうが、こうも生真面目にこられると正直やりづらい。
「参ったな……レイちゃんには敵わねぇ。俺が悪かった」
「え? 何がですか?」
レイヴンがきょとんとした顔で俺をじっと見つめてくる。
本当は激しく可愛がりたかったってのに、こんな純粋に励まされたんじゃいくら俺でも無下にはできない。
「いや、コッチの話だ。レイ、もう少し頼む」
「よく分かりませんが……分かりました。テオがそういうなら」
俺からレイヴンへ顔を近づけると、レイヴンも俺を引き寄せるように俺の首へ両手を回してきた。
鼻先を掠めるように、時々触れてくる柔らかい唇が擽ったい。
レイヴンも気恥ずかしそうにしながら、俺のためにキスを続けてくれるみたいだ。
警戒していないレイヴンは、俺の言葉を静かに待っているようだ。
「俺もレイヴンのことをたくさん褒めてやるから。レイヴンも俺にご褒美をくれないか?」
「ご褒美ですか? 俺ができそうなことであれば。テオは上に立つものとして、いつも俺たちを導いてくれていますから。導き方が多少乱暴でも、尊敬すべき魔塔主様ですよ」
レイヴンが優しく微笑みかけてくれると、さすがに少し罪悪感が湧く気もするが全部嘘って訳でもねぇし。
ここは一気に畳みかけて、優しくしてもらうに限る。
「ありがとな。俺もレイヴンが補佐官だからこそ安心できるってもんだ。それに……レイヴンが俺を褒めながらキスしてくれたら元気が出そうだ」
「俺のことを頼りにしてくれるのは嬉しいんですが……キス?」
「ああ。ダメか?」
あくまで弱っている風を装って、レイヴンに強請るような視線を向ける。
普段なら突っぱねてくるはずだが、どうやら俺が本当に弱気だと思ってくれたみたいだな。
レイヴンは俺から視線を外して逡巡したあと、分かりましたと言ってきた。
「仕方ありませんね。俺だって……いえ、今はテオを励まさないと」
レイヴンは頷いてからカップのコーヒーを手に取ってグッと飲み干すと、俺の方へ改めて身体を向けてきた。
俺が握った手の上に、レイヴンは優しく手を重ねてくる。
「テオ、俺があなたの側で力になります。だから、背負い過ぎないでください。俺にもあなたの重荷を背負わせて欲しいんです」
レイヴンが真剣に俺を励ましてくるせいで、完全に毒気を抜かれちまった。
黒の瞳に捉えられると、逃さない圧迫感ではなくふわりと包み込まれるような気がする。
レイヴンは左手を俺の頬に添えて、優しいキスを唇へ落としてきた。
「テオは凄いです。不可能を可能にしてしまう実力を持っています。でも、それはテオが真摯に魔法と向き合っているからですよね。誰も知らなくても、俺は知ってるんですから。安心してくださいね」
レイヴンが微笑みながら、細い指で俺の頬を撫でる。
労わるような動きは、俺が思っていた展開とは全く違うものだが……たまにはこういうのも悪くない。
ただ、真面目に褒められると妙に気恥ずかしいもんだ。
レイヴンは俺の僅かな表情の変化にもすぐ気づいたのか、クスっと笑って更にちゅっと啄むように口付けてくる。
このままだと、レイヴンの真っ直ぐな優しさに俺の方が押し負けそうだな。
いつもの如くぎゃあぎゃあ言わせてから押し倒した方が分かりやすかったんだろうが、こうも生真面目にこられると正直やりづらい。
「参ったな……レイちゃんには敵わねぇ。俺が悪かった」
「え? 何がですか?」
レイヴンがきょとんとした顔で俺をじっと見つめてくる。
本当は激しく可愛がりたかったってのに、こんな純粋に励まされたんじゃいくら俺でも無下にはできない。
「いや、コッチの話だ。レイ、もう少し頼む」
「よく分かりませんが……分かりました。テオがそういうなら」
俺からレイヴンへ顔を近づけると、レイヴンも俺を引き寄せるように俺の首へ両手を回してきた。
鼻先を掠めるように、時々触れてくる柔らかい唇が擽ったい。
レイヴンも気恥ずかしそうにしながら、俺のためにキスを続けてくれるみたいだ。
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