351 / 483
第十三章 魔塔に残った魔塔主と修行する弟子
349.いつも真面目な弟子<レイヴン視点>
しおりを挟む
テオに見送られながら、エルフの里の結界を潜る。
討伐に行く時は一人の時もあるしいつもテオと一緒だという訳じゃなかったはずなのに、離れることを寂しく思うだなんて親離れできていない子どもみたいだ。
テオの存在がより身近になったっていうことなのかな。
これが好きだっていう気持ちそのものなのかもしれないけど、今は恥ずかしいしそれどころじゃないから気持ちに蓋をしておこう。
「レイヴン、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。お父さんこそ、わざわざ迎えにきてくれたんですか?」
少しぼんやりとしてしまったみたいだ。
気づくと目の前に父さんとレクシェルさんがいた。
里長自らだなんて、いいのかなぁ……でも横にいるレクシェルさんもニッコリと微笑んでいるから甘えていいってことなのかな。
「家族なんだから当たり前だろう。それよりも大変なことになったな。テオドールも色々と考えているのだろうが、彼の言う通り精霊魔法に関しては我々の方が詳しいからな」
「ええ。俺もまだまだですから、お父さんにしっかりと教えてもらうつもりです。いつまでも師匠のお世話になってばかりでは弟子として情けないですから」
「レイヴンさんは真面目なんですね。私も、微力ながら手伝わせてください。テオドールさんは私たちの里に被害が及ばないように魔族と交渉してくださったと聞きましたし」
そうだ。
あのハーゲンティと名乗った魔族は、言うことを聞かなければこの里を……って。
だから、テオが無茶をして……。
「また浮かない顔をして。お前の気持ちも分かるが、我々はもっと歯がゆいのだ。直接来られたら私も村の皆を守ることくらいしかできないだろう。攻撃に転じる余裕はないのだから」
「そう、ですね。考える前に行動しなくっちゃ。お父さん、よろしくお願いします」
勢いよく頭を下げると、ふわりと大きな手が頭の上に乗せられる。
優しく撫でてもらうと、少しずつ余計な力が抜けてくる気がした。
「そうと決まれば、移動しようか。里の皆はハーリオンとレクシェルが根気強く説得した成果もあって、すっかりレイヴンのことを気に入っているからな」
「あら、里長も私の自慢の息子だと言いまわっていたじゃありませんか」
レクシェルさんがクスクスと笑いこぼしていると、お父さんは照れたようにコホンと咳払いをしてから俺の背中にポンと手を当ててくる。
「お腹は空いていないか?」
「まだ大丈夫です。テオに移動で送ってもらいましたから、元気ですよ」
「そうか。じゃあ早速、始めるとしよう」
お父さんの言葉に頷きを返して、特訓してくれるという場所まで連れて行ってもらうことになった。
レクシェルさんも手伝わせてくださいと言っていたし、もしかしたら特訓に付き合ってくれるのかもしれない。
大切な人たちの力を借りるのだから、俺もテオの隣でしっかりと戦えるように頑張らないと!
討伐に行く時は一人の時もあるしいつもテオと一緒だという訳じゃなかったはずなのに、離れることを寂しく思うだなんて親離れできていない子どもみたいだ。
テオの存在がより身近になったっていうことなのかな。
これが好きだっていう気持ちそのものなのかもしれないけど、今は恥ずかしいしそれどころじゃないから気持ちに蓋をしておこう。
「レイヴン、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。お父さんこそ、わざわざ迎えにきてくれたんですか?」
少しぼんやりとしてしまったみたいだ。
気づくと目の前に父さんとレクシェルさんがいた。
里長自らだなんて、いいのかなぁ……でも横にいるレクシェルさんもニッコリと微笑んでいるから甘えていいってことなのかな。
「家族なんだから当たり前だろう。それよりも大変なことになったな。テオドールも色々と考えているのだろうが、彼の言う通り精霊魔法に関しては我々の方が詳しいからな」
「ええ。俺もまだまだですから、お父さんにしっかりと教えてもらうつもりです。いつまでも師匠のお世話になってばかりでは弟子として情けないですから」
「レイヴンさんは真面目なんですね。私も、微力ながら手伝わせてください。テオドールさんは私たちの里に被害が及ばないように魔族と交渉してくださったと聞きましたし」
そうだ。
あのハーゲンティと名乗った魔族は、言うことを聞かなければこの里を……って。
だから、テオが無茶をして……。
「また浮かない顔をして。お前の気持ちも分かるが、我々はもっと歯がゆいのだ。直接来られたら私も村の皆を守ることくらいしかできないだろう。攻撃に転じる余裕はないのだから」
「そう、ですね。考える前に行動しなくっちゃ。お父さん、よろしくお願いします」
勢いよく頭を下げると、ふわりと大きな手が頭の上に乗せられる。
優しく撫でてもらうと、少しずつ余計な力が抜けてくる気がした。
「そうと決まれば、移動しようか。里の皆はハーリオンとレクシェルが根気強く説得した成果もあって、すっかりレイヴンのことを気に入っているからな」
「あら、里長も私の自慢の息子だと言いまわっていたじゃありませんか」
レクシェルさんがクスクスと笑いこぼしていると、お父さんは照れたようにコホンと咳払いをしてから俺の背中にポンと手を当ててくる。
「お腹は空いていないか?」
「まだ大丈夫です。テオに移動で送ってもらいましたから、元気ですよ」
「そうか。じゃあ早速、始めるとしよう」
お父さんの言葉に頷きを返して、特訓してくれるという場所まで連れて行ってもらうことになった。
レクシェルさんも手伝わせてくださいと言っていたし、もしかしたら特訓に付き合ってくれるのかもしれない。
大切な人たちの力を借りるのだから、俺もテオの隣でしっかりと戦えるように頑張らないと!
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件
深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。
ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが――
その内容がとても信じられないもので…
bloveさんにも投稿しております。
完結しました。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる