【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十二章 準備をする魔塔主と寂しがる弟子

337.今だけはこのままで

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 レイヴンはじっと、挑戦的な表情で俺を見つめてくる。
 額を離し、返事の代わりに指先でレイヴンの頬を擽ってやる。
 見つめ合ったまま暫く頬の感触を楽しんでると、レイヴンが先に口を開いた。
 
「俺が魅力的すぎて我慢できなくなったんですね? 俺はそんな風に思ってなかったのにな」
「自分で言うな、自分で。ったく、鈍感すぎんだよ。どれだけ俺が特別扱いしてると思ってんだよ」
「今は……一応。分かりますよ? だから、側にいたいって心から思えるようになったんです」

 レイヴンの方から甘えるように頬を擦り寄せてくる。
 俺も自然と笑い、柔らかい頬の感触を手のひら全体で楽しむ。

「ホント、鈍感な弟子を持つ師匠は困るよなァ?」
「だって、テオはふざけたことしか言わないから分かりづらいんです。いつも真剣に言ってくれればいいのに……」
「そういうの柄じゃねぇんだよ。毎回やってたら笑う癖によ」
「それは確かに。病気を疑うかも?」

 レイヴンがおかしそうに酷いことを言い放つ。

「あのなぁ、病気ってなんだよ病気って」

 と、俺は苦笑いのまま言って優しいキスを落とす。

「ん……」
「……なぁ、どうせ色々巻き込まれるんだろうしよ。レイちゃんを今堪能してもいいよな?」
「またすぐそういうことを……って。いつもなら言いますけど。俺も、同じ気持ちだから」

 レイヴンがふわりと微笑んでくるから、俺も優しく微笑み返す。
 レイヴンの綺麗な微笑みなんてもんを見せつけられたら、毒気も抜けちまう。
 
 壊れ物を扱うようにやんわりと、ちゅ、ちゅと繰り返し軽く唇を触れ合わせていく。
 キスを続けながら、レイヴンの身体をスッと横向きに抱き上げる。
 レイヴンは慌てながら俺に身体を預けて、少し顔を起こすと苦笑を向けてきた。

「もう、俺を抱き上げるのも好きですよね? これ、結構恥ずかしいのに」
「そうやって恥ずかしがることも含めて気に入ってるんだよなぁ。こうすると大人しくなるし?」
「……大人しくって……俺、いつも暴れているみたいじゃないですか」
「暴れてはいねぇけど、嫌がるだろ。俺が色々触ると」

 俺がやや不満げに呟いたせいか、レイヴンが困ったように俯きながら俺の服をきゅっと掴んでくる。

「嫌、なんじゃなくて。恥ずかしいんです。でも……もう触れてもらわないと寂しくなってきてというか、なんというか……もう、分かるでしょう?」

 レイヴンは一息で言い切ると、チラと上目遣いで俺を見上げてくる。

 「そうかそうか」

 と答えて、笑う。
 俺に依存してきてるってなら、コッチのもんだからなァ。

「ここまで来るのが長くて、俺はどれだけ冷たい仕打ちに耐えてきたんだか、分かんねぇな」
「冷たいっていうか、それはテオがきちんとしていないからですよね?」
「きちんとってなんだよ。アレか? 今からキスするぞ、とか言えばいいのか?」
「そういうことじゃなくって、って……もう。分かってて言ってるでしょう?」

 軽い身体を抱いたままレイヴンのベッドまで歩き、一旦ベッドの上に腰掛ける。
 レイヴンを膝の上に乗せたまま愛でていると、レイヴンも身体を起こしてきて俺の首に両腕を引っ掛けてきた。
 じぃっと、まるでキスを強請るように見つめてくる。

「随分と大胆に誘ってくるじゃねぇか」
「俺だってそういう気分のときくらい、ありますよ」

 レイヴンはクスリと笑みを零して、俺へ顔を近づけてくる。
 早くキスをしたかったと言わんばかりに、また優しく唇を触れ合わせてきた。
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