【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十二章 準備をする魔塔主と寂しがる弟子

334.別々の部屋で

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 煙草を吸いたい気持ちを一旦我慢し、指先でレイヴンの髪を梳くように撫でる。
 一気に話したら疲れたな。
 レイヴンは俺の様子が気になったらしく、腕の中でそっと俺を見上げてきた。
 
「師匠?」
「俺らも魔塔に戻って、これからどうするか対策をたてねぇと」

 レイヴンを更にグッと抱き寄せる。
 どっちかっつーと、考えるのも面倒臭ぇからレイヴンを撫で回して寝ちまいたいところなんだが。

「なぁー?」

 と、呟いてニヤリと笑む。
 レイヴンはすぐさま反応して不審な視線を向けてくる。
 返事の代わりに身体ごとすっぽりと腕の中へ埋めてやると、レイヴンが腕をバタバタとし始めた。

「……うわぁ、凄く嘘っぽいですね。さすがテオドール様」
「テオ、本当に頼むぞ。ウルガー、俺たちもできうることは全て対策して来るべき時に備えよう」

 あー……ウルガーのヤツ、やる気満々のディーにしごかれそうだな。
 俺が知ったこっちゃねぇが、嫌そうな顔してディーに訴えても無駄だろうな。
 不憫な副団長様の肩をポンと叩き、俺らはさっさと魔塔に戻るべく指をパチンと鳴らす。
 訓練場は中庭に近いから、魔法で飛べるのが便利なんだよなぁ。
 
 +++

 自室のテラスに降り立ち、レイヴンを腕の中から解放する。
 名残惜しいが仕方ねぇ。

「レイちゃんも疲れてんだろ? 俺はいつもの小部屋にこもってるからよ。たまには部屋でゆっくり休んでこい」
「……分かりました。テオも無理しすぎないようにしてくださいね。ただでさえ、その手の甲が……」

 やっぱ、魔族と契約すんのはレイヴンにとって刺激が強すぎたかもなぁ。
 俺にとっては最善の手だったが、危険っちゃ危険だからな。
 唇に触れるだけのキスをし、レイヴンの身体を扉の方向へと回転させてグッと背を押してやる。

「ほら、俺に食われるのが嫌なら部屋に戻れ」
「食われるって……はぁ。分かりました。でも、すぐには寝付けそうにないので少し調べものをしてから休みます。テオもちゃんと休んでくださいね」

 レイヴンは振り返って、俺に言い聞かせるように伝えてくる。
 手を伸ばしポンと頭を撫でてニッと笑いかけると、レイヴンは諦めたように部屋から出て行った。

 真面目なレイヴンのことだから、魔族のことでも調べるんだろうけどな。
 アイツらの手のひらで転がされたまま暇つぶしに付き合うつもりもねぇし、俺も調べものでもするか。
 レイヴンを見送ってから小部屋へ入り、どかりと椅子に腰を下ろした。

「さぁて、どうしたもんか」

 口寂しいのを思い出し、机の上に転がしてあるの箱の中から煙草を一本手に取って口に咥える。
 マッチで火を付けて吸い、口内で少々煙を溜め込む。
 人差し指と中指で煙草を挟んで少し口から離し、煙をフッと軽く吐き出してから深く息を吸い込みじっくり肺へ落としこんでいく。

 紫煙の行方を目で追いながら、思案して足を組む。
 魔族が面倒なのは間違いねぇんだよな。
 灰を落としてから煙草を咥え直す。

 視線をさ迷わせてから手を伸ばし、一冊の本を棚から取り出して目を落とす。
 普段あまり使わない分厚い辞書だ。
 目的のものが載っているかも覚えてねぇし、適当にめくっていく。

 言語翻訳は管轄外なんだが、仕方ねぇ。
 魔族言語が翻訳できるか調べてみるか。
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