【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十二章 準備をする魔塔主と寂しがる弟子

332.国王への謁見

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 翌朝――

 事の次第を告げに王宮へと赴く。
 謁見を求めると宰相のアスシオに渋い顔をされた。
 コイツは俺が何か言うとすぐ嫌そうな顔するんだよなぁ。
 一言、重要な案件だと述べると、最優先事項だと判断されて謁見室へ通された。

「テオドールとレイヴンか。何やら話があるそうだな」
「王国の太陽、国王陛下にご挨拶申し上げます」

 レイヴンが隣で挨拶と最上級の礼を済ませているのを横目に見てから、一応真面目な表情を陛下へ向けた。

「陛下にお伝えすることがございまして……」

 話を切り出すと、国王が緩く首を振る。
 なんだぁ? 粗相もしてねぇはずだが。
 静かに言葉の続きを待つつもりで、一旦話を切る。

「普段通りで良い。テオドール、気楽に話して構わない」

 アスシオは文句でも言うつもりなのか口を開こうとするが、陛下が制して話の先を促してくる。
 左腕に右手を当てて擦るようにしてるじゃねぇか。
 俺が普通にすると寒気がするって? 失礼な話だよな。

「では、お言葉に甘えて。先にディートリッヒから事の経緯は聞いているはずだが――」

 俺はエルフの里へ行った後の話を、詳細に伝えていく。
 最後まで説明してから、手の甲をあげて国王に翳してみせる。
 すると、手の甲に見たことのない文字の羅列と魔法陣のような形のものが現れた。
 おそらく、魔族言語だろうな。

「これは……」
「魔族と誓いを交わした証がココにある。破れば俺は死ぬ、だろうな」
「なんと勝手なことを……!」

 アスシオが両肩を震わせて怒りを顕にしてくるが、また陛下が手で制する。

「陛下!」
「テオドールがその場で判断しなければ、今拘束している男もどうなったか分からず、魔塔主不在の中、本格的に我が国の被害が拡大する可能性があった」
「しかし……」
「テオドールには私からある程度の自由を許している。この男が判断したのだ。何か考えがあってのことなのだろう」

 陛下は双眸を細め、鋭い視線を俺へと投げかけてきた。
 独断に対する勝算があるのか? と、暗に俺に言ってる訳か。
 相変わらず食えない陛下へ、俺も不敵に笑んで見せる。

「まぁ、何とかなるだろう。その代わり、魔族は複数で遊びたいようだからディートリッヒとウルガーも連れて行く。勿論、俺の弟子もな」
「テオドール! もし、何かあれば我が国に取ってどれほどの損失が……」
「言いたいことは分かるけどよ、俺たちも騎士の二人もそんなヘマはしねぇし、聖女様がいるじゃねぇか」

 アスシオはいつもガチガチな考え方しかしねぇんだよな。
 間違ってる訳じゃねぇけど、もっと柔軟に対応すりゃいいのによ。

「騎士団もディーとウルガー以外にも使えるヤツもいるはずだ。魔法使いはまぁ……ぼちぼちな」

 怒り心頭のアスシオにカラリと言い放つと、アスシオが額に手を当てて頭を抱えはじめた。

「あいわかった。テオドールならばやり遂げると信じて送り出そう。これは我が願いでもある。テオドール、レイヴン、頼んだぞ」
「陛下からの勅命、拝命致しました。我が国の名誉にかけて必ずや――」
「あぁ。今回は俺も本気を出さないといけないからな。魔族の遊びに付き合って、面倒ごとはこれで終わりにしてやるよ」

 俺の不遜な言い方に、アスシオは最後まで吊り上げた眉をピクピクとさせたままだった。
 レイヴンが来た時と同じように礼をしたのを見届けて、俺たちは謁見室を後にした。
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