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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子
324.赤の誓い
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「お前、ハーフエルフだろう。同胞が無惨に殺されるのはさぞかし困るだろうな。あまり野蛮な手段は好まぬが、出来るとだけは言っておこう」
真に受けてしまったレイヴンを庇い腕の中に閉じ込めて、長く息を吐き出す。
俺の可愛い弟子を脅しやがって。
コイツ……俺の動きまで計算してやがるのか。
レイヴンを脅せば、俺が必ず言うことを聞くと思ってんだろうな。
ヤツの手の上で転がされてるのは気に食わねぇが、下手に刺激して万が一エルフの里で暴れられる事態は避けたい。
いくら俺でも、何の対策もなしに魔族とやり合うってのは骨が折れる。
「な? 面倒なんだよ、こういう輩は。気分で何をするか分かるもんじゃねぇ。ムカつくがコイツはまだ物わかりが良さそうだから、妙なことを言う前に手を打った方が早い」
「テオ……」
魔族の言動に振り回されるばかりで今は何もできない歯がゆさと苛立ちを抑え込み、レイヴンを安心させるように背中を撫でる。
動揺し僅かに震えていたレイヴンも、撫で続けていくうちに静かに深呼吸し始めた。
「分かりました」
レイヴンは必死に声を絞り出し、俺に顔を向けて小さく頷いて見せる。
魔族は俺らの様子を微笑しながら眺めていたが、俺らのやり取りが終わったのを確認したのかゆっくりと口を開いた。
「準備が整い次第、使いを出そう。久々の余興だからこちらも愉しみたいのでな。お前の名で誓いを立てよう。名前は?」
「テオドール。テオドール・バダンテールだ」
「テオドールか。分かった」
魔族は微笑すると、得意げな表情で宣言し始める。
誓いなんて面倒なだけだってのに、妙に拘りやがるんだよなぁ。
「――テオドール・バダンテール、お前と誓いを交わそう。我はお前たちを招待するまでにお前たち人間の周辺に一切の手出しをせず、災厄をもたらさない。この二名の人間が余計なことをしないよう、我が見張っていよう。その代わり、お前たちには我らの愉しみに付き合ってもらう。我が名はハーゲンティ。誓いを破れば、互いに命をもって償うことになるだろう。――では、また会おう」
空中で赤い文字がスラスラと踊り、俺の手に吸い込まれる。
驚くレイヴンの目の前で見たこともない赤の文字が明滅し、スッと手の甲へと刻まれていく。
ハーゲンティと名乗った魔族は、俺の手へ文字が吸い込まれて行くのを眺めながら頷く。
全てを見届けたと言わんばかりに満足気に笑みを浮かべると、音もなく地べたの人間ともどもあっという間に姿を消してしまった。
「テオ! 痛くないですか? 大丈夫……」
レイヴンが言葉を言い切る前に、両手で頬を捕まえてそのまま口付ける。
感情が溢れてきて、止まらなくなってきちまった。
突然のことにレイヴンが目をパチパチとしているのを見遣り、更に舌を差し入れた。
真に受けてしまったレイヴンを庇い腕の中に閉じ込めて、長く息を吐き出す。
俺の可愛い弟子を脅しやがって。
コイツ……俺の動きまで計算してやがるのか。
レイヴンを脅せば、俺が必ず言うことを聞くと思ってんだろうな。
ヤツの手の上で転がされてるのは気に食わねぇが、下手に刺激して万が一エルフの里で暴れられる事態は避けたい。
いくら俺でも、何の対策もなしに魔族とやり合うってのは骨が折れる。
「な? 面倒なんだよ、こういう輩は。気分で何をするか分かるもんじゃねぇ。ムカつくがコイツはまだ物わかりが良さそうだから、妙なことを言う前に手を打った方が早い」
「テオ……」
魔族の言動に振り回されるばかりで今は何もできない歯がゆさと苛立ちを抑え込み、レイヴンを安心させるように背中を撫でる。
動揺し僅かに震えていたレイヴンも、撫で続けていくうちに静かに深呼吸し始めた。
「分かりました」
レイヴンは必死に声を絞り出し、俺に顔を向けて小さく頷いて見せる。
魔族は俺らの様子を微笑しながら眺めていたが、俺らのやり取りが終わったのを確認したのかゆっくりと口を開いた。
「準備が整い次第、使いを出そう。久々の余興だからこちらも愉しみたいのでな。お前の名で誓いを立てよう。名前は?」
「テオドール。テオドール・バダンテールだ」
「テオドールか。分かった」
魔族は微笑すると、得意げな表情で宣言し始める。
誓いなんて面倒なだけだってのに、妙に拘りやがるんだよなぁ。
「――テオドール・バダンテール、お前と誓いを交わそう。我はお前たちを招待するまでにお前たち人間の周辺に一切の手出しをせず、災厄をもたらさない。この二名の人間が余計なことをしないよう、我が見張っていよう。その代わり、お前たちには我らの愉しみに付き合ってもらう。我が名はハーゲンティ。誓いを破れば、互いに命をもって償うことになるだろう。――では、また会おう」
空中で赤い文字がスラスラと踊り、俺の手に吸い込まれる。
驚くレイヴンの目の前で見たこともない赤の文字が明滅し、スッと手の甲へと刻まれていく。
ハーゲンティと名乗った魔族は、俺の手へ文字が吸い込まれて行くのを眺めながら頷く。
全てを見届けたと言わんばかりに満足気に笑みを浮かべると、音もなく地べたの人間ともどもあっという間に姿を消してしまった。
「テオ! 痛くないですか? 大丈夫……」
レイヴンが言葉を言い切る前に、両手で頬を捕まえてそのまま口付ける。
感情が溢れてきて、止まらなくなってきちまった。
突然のことにレイヴンが目をパチパチとしているのを見遣り、更に舌を差し入れた。
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