【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子

320.白髪の男と魔物使い

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 目の前の二人組は辺りを見回しながら、互いに好き勝手にぶつぶつと独り言を言い始めた。
 俺らの姿は、認識妨害のおかげでヤツらからは見えない。
 静かに様子を窺っていると、白髪の男が興奮気味に魔物使いへ話しかけた。

「アイツは嫌味なヤツだが、コッチに興味があるうちに付き合ってもらわねばならない。飽きられてしまえば終わりだ」
「あの方ならば溶けるだろうが、この氷は簡単には溶かせそうにない。兄弟が最後に交信してきた時に言っていた魔法使いの仕業に違いないだろう。アイツがココに来たのならば、ココは捨てて別のところに……」

 やはり魔物使いの方が落ち着いてやがるな。
 あの方とアイツは同一人物だとして、あの方とやらがコイツらの背後にいるヤツで間違いなさそうだ。
 
 しっかし、兄弟が交信って……魔物使いの野郎は一体何人兄弟だ?
 何度倒しても、無限に兄弟が沸いてくるんだったら面倒すぎるだろ。
 この話だけじゃ、イマイチよく分からねぇな。
 魔物使いってだけじゃなく、他にも秘密の能力を持ってる可能性はあるからな。
 
 緊張するレイヴンを柔く抱きしめながら、耳を傾ける。
 白髪の男は興奮しながら、魔物使いへ苛立つように話を続けていく。
 
「何個も魔法陣を壊されて、私の研究成果も破壊されているのにか? なんということだ!」
「あぁ、だからこそ移動した方がいい。次の機会もあるだろう? 一旦冷静になれ。今ならまだ……」

 黒いローブの男が俺らに背を向けたのを確認し、レイヴンに目配せをする。
 十分泳がせてやったし、そろそろ実力行使に出ていいころだ。
 派手な魔法をぶっ放す訳にはいかねぇが、お仕置きくらいはしねぇとな。
 
 レイヴンは俺が仕掛けようとする意思にすぐに気が付き、俺が素早く展開を解いた認識妨害だけ貼り直していく。

「――雷の鎖サンダーチェイン

 言葉を紡ぐと、鎖が男たちへと伸びて有無を言わさず二人を拘束する。
 雷を帯びた鎖が身体の自由を奪い、顔から下だけが動かせない状態になった。

「なっ……何が起きたのだ!」
「チィ。やはり入り込んでいたか、魔法使い。しかし、口だけ動くのならば……」

 冷静な魔物使いと思われる男の方が、口笛らしきものを吹こうとしたのが見えた。
 また魔物を呼び出そうって? 何度も同じ手を食うかよ。
 更に魔力マナを流して、魔物使いの動きを遮る。

「ッグ……」
「そっちのお喋りなヤツに喋らせれば問題ねぇよな?」

 鎖だけを伸ばし、俺とレイヴンの正確な場所を分からせないようにする。
 わざわざ姿を現してやることもねぇしな。
 拘束から抜け出すことはできないだろうが、他に客が来ても面倒だ。
 念には念を入れて、丁寧にいたぶってやろうじゃねぇか。
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