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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子
315.出発準備
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翌日――
欠伸をしながら部屋を出ると、同じく部屋を出てきたレイヴンと出くわす。
スッキリとした顔をしてるから、良く眠れてるんだろうな。
前にも食事をした部屋で長机を囲んで共に食事を済ませると、クレインの好意で貴重な装備品や魔道具を見せてもらえることになった。
「テオが変なことを言うから。破れてしまったローブは新調してもいいかなとは思いますけど。本当に図々しい」
「別にいいだろ。優しい里長様がくれるって言うんだからよ」
「別に構わない。私たちは装飾品を作るのも好きでな。時々自分たちで作るのだ」
クレイン父ちゃんはケチケチしてねぇからいいよなぁ。
柔和な表情で俺らを案内しながら廊下を歩き、一つの部屋の前で軽く手を翳す。
ブォンという音と共に、結界が外れて扉へと近づけるようになった。
「結界を張るほどすげぇお宝があるのか。コイツは選びがいがありそうだ」
「はぁ……もう、この人は。お父さん、テオは本気ですから。ダメなものはダメだとハッキリ言わないとダメですよ?」
「分かった。だが気にせずとも大丈夫だから、好きなものを選ぶといい」
室内は思ったより広々とした大部屋で、壁や棚にたくさんの武器や道具が置いてある。
なかなか品質の良いモノが揃ってそうだな。
一つ一つ見定めるように目を細め、本気で品定めし始める。
「お、これとか良さそうじゃねぇか。指輪か」
「良い物を手に取ったな。それは精霊王を呼ぶことができる指輪だ。ただ、あの方たちは気まぐれだから呼ぶことはできてもお願いを聞いてくださるかは分からないが。その指輪にはサラマンダー様の力が込められているな」
俺が手に取った指輪は一見シンプルな金の指輪で、中に一粒の赤い宝石が埋め込まれていた。
見る人が見れば、指輪からは神秘的な力を感じることができるだろうな。
俺も一目で強い力を感じたから、手に取ったわけだが。
「それはまた貴重だな。でも流石にエルフ限定だろ、それ」
「どうだろうな? エルフの宝を人間に分けたという文献を目にしたことがないし、精霊たちは精霊自身が相手のことを気に入れば力を貸してくれる存在だ」
この里長様が特別人間との垣根が低いだけで、ほいほい宝をやったりするわけねえよな。
精霊王云々はどうなるかは知らねぇが、もらえるもんはもらっといて損はねぇだろ。
「精霊王もエルフとは基本的に仲が良いが、人間でも気に入れば力を貸すだろう」
「そんなもんか。まぁ見た目が気に入ったし、俺の指でも入りそうだからいただくとするか」
クレインがあっさりとどうぞと言うだけでお宝をくれるもんだから、レイヴンが溜め息を吐いて俺を軽く睨んでくる。
遠慮なんかしてもしょうがねぇんだから、さっさと指輪を頂いてはめちまう。
クレインは俺の行為も気にした様子もなく、レイヴンには別の指輪を差し出した。
「これは?」
「レイヴンはウンディーネ様と仲良くなれるはずだ。持っていきなさい」
微笑しているクレインは、銀色の指輪をレイヴンに手渡した。
横から覗き込むと、その指輪の中には一粒の青い宝石が埋め込まれていた。
「お、いいじゃねぇか。同じ指にはめれば分かりやすいだろ?」
さっとレイヴンの手を取ると、左手の薬指にはめる。
俺の左手には金の指輪があるし、お揃いって感じでいいじゃねぇか。
「本当に仲が良いのだな。何にがあっても私は二人を祝福しよう。何よりも息子の幸せが一番大切なことだ」
「い、いやいやいや。その、なんていうか……あぁ、もう! 全部テオが悪いっ!」
「なんでだよ。良かったじゃねぇか。これくらいで照れるなよ」
「照れてないから!」
レイヴンは少し赤く染まった頬を隠すようにふい、と、顔を逸らす。
俺から距離を取って別の装備を探しに行っちまった。
レイヴンを微笑ましげに見守る俺とクレインで、顔を見合わせて笑い合う。
「辛い経験をしたであろうあの子がこれだけ素直になれているのも、テオドールのおかげなのだろうな」
「おかげってほどでもねぇよ。俺もアイツのおかげで変われたところもある。こうやって自分勝手できるのもレイヴンのおかげみたいなもんだ」
「あまり振り回しすぎないで欲しいというのもあるが、これからも良き間柄でいて欲しい」
「アンタはエルフなのに頭が柔らかくて助かるな。人間の方がよっぽど身勝手で汚ぇヤツらばっかりだ。少しは見習って欲しいもんだよなぁ」
皮肉るように吐き出すと、クレインも苦笑を返して大きく頷く。
欠伸をしながら部屋を出ると、同じく部屋を出てきたレイヴンと出くわす。
スッキリとした顔をしてるから、良く眠れてるんだろうな。
前にも食事をした部屋で長机を囲んで共に食事を済ませると、クレインの好意で貴重な装備品や魔道具を見せてもらえることになった。
「テオが変なことを言うから。破れてしまったローブは新調してもいいかなとは思いますけど。本当に図々しい」
「別にいいだろ。優しい里長様がくれるって言うんだからよ」
「別に構わない。私たちは装飾品を作るのも好きでな。時々自分たちで作るのだ」
クレイン父ちゃんはケチケチしてねぇからいいよなぁ。
柔和な表情で俺らを案内しながら廊下を歩き、一つの部屋の前で軽く手を翳す。
ブォンという音と共に、結界が外れて扉へと近づけるようになった。
「結界を張るほどすげぇお宝があるのか。コイツは選びがいがありそうだ」
「はぁ……もう、この人は。お父さん、テオは本気ですから。ダメなものはダメだとハッキリ言わないとダメですよ?」
「分かった。だが気にせずとも大丈夫だから、好きなものを選ぶといい」
室内は思ったより広々とした大部屋で、壁や棚にたくさんの武器や道具が置いてある。
なかなか品質の良いモノが揃ってそうだな。
一つ一つ見定めるように目を細め、本気で品定めし始める。
「お、これとか良さそうじゃねぇか。指輪か」
「良い物を手に取ったな。それは精霊王を呼ぶことができる指輪だ。ただ、あの方たちは気まぐれだから呼ぶことはできてもお願いを聞いてくださるかは分からないが。その指輪にはサラマンダー様の力が込められているな」
俺が手に取った指輪は一見シンプルな金の指輪で、中に一粒の赤い宝石が埋め込まれていた。
見る人が見れば、指輪からは神秘的な力を感じることができるだろうな。
俺も一目で強い力を感じたから、手に取ったわけだが。
「それはまた貴重だな。でも流石にエルフ限定だろ、それ」
「どうだろうな? エルフの宝を人間に分けたという文献を目にしたことがないし、精霊たちは精霊自身が相手のことを気に入れば力を貸してくれる存在だ」
この里長様が特別人間との垣根が低いだけで、ほいほい宝をやったりするわけねえよな。
精霊王云々はどうなるかは知らねぇが、もらえるもんはもらっといて損はねぇだろ。
「精霊王もエルフとは基本的に仲が良いが、人間でも気に入れば力を貸すだろう」
「そんなもんか。まぁ見た目が気に入ったし、俺の指でも入りそうだからいただくとするか」
クレインがあっさりとどうぞと言うだけでお宝をくれるもんだから、レイヴンが溜め息を吐いて俺を軽く睨んでくる。
遠慮なんかしてもしょうがねぇんだから、さっさと指輪を頂いてはめちまう。
クレインは俺の行為も気にした様子もなく、レイヴンには別の指輪を差し出した。
「これは?」
「レイヴンはウンディーネ様と仲良くなれるはずだ。持っていきなさい」
微笑しているクレインは、銀色の指輪をレイヴンに手渡した。
横から覗き込むと、その指輪の中には一粒の青い宝石が埋め込まれていた。
「お、いいじゃねぇか。同じ指にはめれば分かりやすいだろ?」
さっとレイヴンの手を取ると、左手の薬指にはめる。
俺の左手には金の指輪があるし、お揃いって感じでいいじゃねぇか。
「本当に仲が良いのだな。何にがあっても私は二人を祝福しよう。何よりも息子の幸せが一番大切なことだ」
「い、いやいやいや。その、なんていうか……あぁ、もう! 全部テオが悪いっ!」
「なんでだよ。良かったじゃねぇか。これくらいで照れるなよ」
「照れてないから!」
レイヴンは少し赤く染まった頬を隠すようにふい、と、顔を逸らす。
俺から距離を取って別の装備を探しに行っちまった。
レイヴンを微笑ましげに見守る俺とクレインで、顔を見合わせて笑い合う。
「辛い経験をしたであろうあの子がこれだけ素直になれているのも、テオドールのおかげなのだろうな」
「おかげってほどでもねぇよ。俺もアイツのおかげで変われたところもある。こうやって自分勝手できるのもレイヴンのおかげみたいなもんだ」
「あまり振り回しすぎないで欲しいというのもあるが、これからも良き間柄でいて欲しい」
「アンタはエルフなのに頭が柔らかくて助かるな。人間の方がよっぽど身勝手で汚ぇヤツらばっかりだ。少しは見習って欲しいもんだよなぁ」
皮肉るように吐き出すと、クレインも苦笑を返して大きく頷く。
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