【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

文字の大きさ
上 下
313 / 483
第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子

311.難しい話はこれくらいで

しおりを挟む
「魔の森の近くから魔力マナが流れているということですか?」
「魔の森自体も同じく結界があるだろうから、中からじゃねぇとしたら近くなんだろ。魔物使いの背後にいるヤツが魔族と絡んでたとしたら面倒だな」
「行くにしても十分に注意した方がいいだろう。私たちもできる限りの協力はしよう。助けてもらった恩と我が息子のためだ」

 難しい顔をしたままのレイヴンをクレインが優しく撫でているのを眺める。
 親子感が出てきていいじゃねえか。
 擽ったそうにはにかむレイちゃんの肩を、トントンと叩いて横からちょっかいを出す。

「良かったなァ。今日は父さんと一緒に寝るか?」
「言い方! 全く……この人は」
「私は構わないが、テオドールはそれでいいのか?」
「そういやお父様公認だし、ここで……」

 別に大したことを言おうとした訳でもねぇのにレイヴンが背伸びして俺の口を思いっきり引っ張る。
 追撃で俺の足を煙草をもみ消すように、グリグリと踏みつけてくる。
 ここでヤっても問題はねぇだろって、お父様の許可を取ろうとしただけなんだがなぁ。

「……まさか、妙なことは考えていませんよね? ぶん殴りますよ?」
「いひゃいやろ!」
「本当に仲が良いのだな」

 俺らのやり取りを微笑ましそうに見ているエルフの父ちゃんには、レイヴンも敵わねぇみたいだな。
 恥ずかしそうにしながら、俺の口を引っ張ることと口を抑え込むことはやめねぇのもレイちゃんらしいが。

「……おとなしくしていてくださいね」

 小声で念押ししてくるレイヴンがおかしくて、笑っちまった。
 俺がヤるかヤらねぇかは気分だからな。
 そりゃあ毎日だって触れていたいもんだが、多少は空気ってもんを読んでやるくらいの余裕はある。
 今限定で、仕方なくだけどな。

 だからといって、レイちゃんを揶揄うのをやめる気はねぇけど。
 
 +++

 クレインには、調査をしていて気になる箇所の確認事項だけ簡単に説明してもらう。
 現在も定期的に見回りをし、里のエルフたちには自分たちだけで結界から出ないように強く言ったので攫われそうになる子どももいなくなったらしい。
 未遂で終わったってのは良かったが、エルフが攫われたら人間よりも希少な種族だし何をされるか分かんねぇからな。
 
 今晩は早めに休もうと決めて、一旦解散ってことで客間に案内してもらった。
 クレイン父さんは一緒に眠るか? と真面目な顔してレイヴンに頼んでたから笑っちまうところだったが、息子は少し考えたいこともあるからと一人の部屋を用意してくれと頼んじまった。
 俺は同室で構わないってのによ。
 
 そういや客室ではなく、レイヴンの自室となる部屋も準備中らしい。
 いつでも泊りに来いよっていうことなんだろうな。

 暫く二人部屋がいいとごねてみたが、レイヴンが無理やり背中を押して別の部屋に押し込んでくるから仕方なく言うことを聞いてやるしかなくなっちまった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。 恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。 ※猫と話せる店主等、特殊設定あり

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

処理中です...