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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子
301.黒い影
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「――霧よ」
レイヴンが手のひらをかざすと、水が収束する。
限界まで収束されると、一気に霧散して辺りを覆う。
魔法で視界を遮っちまえば、視界を閉ざされた賊は声を上げて戸惑うだけだ。
俺らは霧の中でも相手の姿形は捉えられるように、こっそり追加魔法で援助も忘れない。
騎士様二名は、しっかりと姿と気配を察知して素早く沈黙させていく。
賊は声を上げる暇もなく、気絶していった。
「おーおー。早かったなとりあえず親玉が戻って来ないうちにやることやっちまうか」
探知でも反応がないってことは、まだ別のヤツに気づかれてねぇってことだ。
どれくらいかは分からねぇが、少し時間の猶予があるはずだ。
一旦補助結界を全て解き檻まで近づくと、予想していた通り子どもたちが何人も檻に入れられていた。
服装的に身寄りのない子ども、あとは所謂庶民の子どもらだな。
貴族は出かけるときに誰かしら一緒だから、攫えなかったってことか?
まぁ典型的で汚いお貴族様なら、黒幕と取引をしていて安全を保障されているっていう可能性もある。
庶民の子どもは街中で遊んだりお使いに行っている隙を狙われただろうし、身寄りのない子どもは道で寝起きしてれば簡単にかっさらえる。
理不尽だが、この国でもまだまだ庶民と貴族の身分の格差は根強いもんだ。
俺にできることはするが、こればっかりは陛下にも頑張ってもらわねぇと。
身体を寄せ合って震える子どもを見ながら、鍵解除で鍵を開けていく。
カチャンと音を立て鍵が開くと、レイヴンが静かに檻の中へと入っていき優しく微笑みかける。
子どもたちは戸惑って、固まっちまった。
だからと言って俺じゃあ子どもを泣かせちまうだろうし、ここは優しいお兄ちゃんに任せるしかねぇな。
「怖かったでしょう? もう、大丈夫だから。一緒に帰ろう?」
「お、お兄ちゃんは……」
「魔法使い。そっちのおじ……お兄さんも、怖そうだけどいい人だから。それに、騎士さんがみんなを守ってくれるから大丈夫」
レイヴンは優しい声色で話を続けながら、ふわりと丸い光を出して見せた。
その光はふわふわと浮かび、辺りを照らす。
灯火の光を見ると安心して、子どもも明かりに手を伸ばす。
子どもにとって、魔法は暗い道を照らしたり料理のための火を灯したりするもんだからな。
戦いのためと言うより、生活に密着しているものだ。
騎士も普段から街を巡回してるし、賊より俺らの方が安心できるはずだ。
ディーはデカくて怖いだろうが、ウルガーはごく普通の騎士様に見えるだろうしな。
「お家に帰れる? ホント?」
「うん、だから……」
子どもたちの説得はレイヴンに任せて見守っていたが、探知が反応する。
檻から少し離れて、身体の向きを変え檻を背にし目を凝らして一点を睨みつけた。
左斜め前の空間、奥に続く通路から何者かが近づいてくるのが分かる。
俺は先に魔法の詠唱を始めて、先手を打つ。
ついさっきまで何も感じなかったってことは、外に繋がる別の抜け道があるかもな。
どちらにしても、今はこの場に現れようとしている何者かへの対策が先だ。
レイヴンが手のひらをかざすと、水が収束する。
限界まで収束されると、一気に霧散して辺りを覆う。
魔法で視界を遮っちまえば、視界を閉ざされた賊は声を上げて戸惑うだけだ。
俺らは霧の中でも相手の姿形は捉えられるように、こっそり追加魔法で援助も忘れない。
騎士様二名は、しっかりと姿と気配を察知して素早く沈黙させていく。
賊は声を上げる暇もなく、気絶していった。
「おーおー。早かったなとりあえず親玉が戻って来ないうちにやることやっちまうか」
探知でも反応がないってことは、まだ別のヤツに気づかれてねぇってことだ。
どれくらいかは分からねぇが、少し時間の猶予があるはずだ。
一旦補助結界を全て解き檻まで近づくと、予想していた通り子どもたちが何人も檻に入れられていた。
服装的に身寄りのない子ども、あとは所謂庶民の子どもらだな。
貴族は出かけるときに誰かしら一緒だから、攫えなかったってことか?
まぁ典型的で汚いお貴族様なら、黒幕と取引をしていて安全を保障されているっていう可能性もある。
庶民の子どもは街中で遊んだりお使いに行っている隙を狙われただろうし、身寄りのない子どもは道で寝起きしてれば簡単にかっさらえる。
理不尽だが、この国でもまだまだ庶民と貴族の身分の格差は根強いもんだ。
俺にできることはするが、こればっかりは陛下にも頑張ってもらわねぇと。
身体を寄せ合って震える子どもを見ながら、鍵解除で鍵を開けていく。
カチャンと音を立て鍵が開くと、レイヴンが静かに檻の中へと入っていき優しく微笑みかける。
子どもたちは戸惑って、固まっちまった。
だからと言って俺じゃあ子どもを泣かせちまうだろうし、ここは優しいお兄ちゃんに任せるしかねぇな。
「怖かったでしょう? もう、大丈夫だから。一緒に帰ろう?」
「お、お兄ちゃんは……」
「魔法使い。そっちのおじ……お兄さんも、怖そうだけどいい人だから。それに、騎士さんがみんなを守ってくれるから大丈夫」
レイヴンは優しい声色で話を続けながら、ふわりと丸い光を出して見せた。
その光はふわふわと浮かび、辺りを照らす。
灯火の光を見ると安心して、子どもも明かりに手を伸ばす。
子どもにとって、魔法は暗い道を照らしたり料理のための火を灯したりするもんだからな。
戦いのためと言うより、生活に密着しているものだ。
騎士も普段から街を巡回してるし、賊より俺らの方が安心できるはずだ。
ディーはデカくて怖いだろうが、ウルガーはごく普通の騎士様に見えるだろうしな。
「お家に帰れる? ホント?」
「うん、だから……」
子どもたちの説得はレイヴンに任せて見守っていたが、探知が反応する。
檻から少し離れて、身体の向きを変え檻を背にし目を凝らして一点を睨みつけた。
左斜め前の空間、奥に続く通路から何者かが近づいてくるのが分かる。
俺は先に魔法の詠唱を始めて、先手を打つ。
ついさっきまで何も感じなかったってことは、外に繋がる別の抜け道があるかもな。
どちらにしても、今はこの場に現れようとしている何者かへの対策が先だ。
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