【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子

300.発見

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「お前の言う通りの位置に騎士たちを配置した。後は中へ乗り込むだけだが」
「認識妨害と防音結界をかけてるから、俺らが中に入る時は適当でもいいけどよ。人数が増えると他の魔法が唱えられねぇからな。いざとなったら騎士団も突入ってことで」
「じゃあ、誰が先頭でいきます? やっぱり団長ですよね」
「ウルガー……それ、自分が先頭で行きたくないだけだろう?」

 レイヴンはウルガーに苦言を呈するが、ディーは大丈夫だとレイヴンに笑って見せる。
 いつも俺にもこれくらい優しくしてくれりゃあいいのによ。

「いや、その方がいいだろう。最後尾はテオドール、二番手がウルガー、三番手がレイヴン。開けたところに出るまではこの並びで行こう」
「まぁ……しゃあねぇよな。ディーに全力で暴れられたら洞窟自体が崩れる」
「言っておきますけど、師匠が派手な魔法を使った場合も一緒ですからね」
「全く……口調に緊張感ってものがないんだよな、この人達」

 適当な軽口を叩きながら、辺りを警戒し薄暗い洞窟に足を踏み入れた。
 身体を屈めないと通れないくらい、狭い通路が続いている。
 
 こうも狭い場所だと、男だらけで暑苦しいんだよなぁ。
 俺の前にいるのがレイヴンじゃなかったら、息苦しくて嫌になっちまう。
 俺とレイヴンで灯火ライトの光で辺りを照らしながら、四人で慎重に進んでいく。
 
 少し湿った空気と緊張感からか、ディーが軽く額の汗を拭うような仕草をしているのが分かる。
 暫く道なりに歩いていくと少し開けた場所になり、暗がりに人影が見えてきた。

「――あれは」
「一旦防音結界を解く。気配を殺しておけよ? 特にディー。アイツらが不愉快な話をしたとしても、勝手に飛び出たりするんじゃねぇぞ」
「……善処する」

 全員で岩陰に身を潜ませ、ディーに念押しする。
 悪党はガキをどうするだのと心底くだらねぇことをベラベラとしゃべりそうだし、それを聞いた正義感の塊の騎士団長様はすーぐ突進するにきまってる。
 突進癖が身に染みて分かっているウルガーは、大丈夫かな……と小声で漏らしてやがるし。

「見た感じ、見える範囲にいるのは何者かが雇った賊の下っ端だけみたいです。ただ、ある程度の魔法を使える敵がいるのは間違いなさそうだから、用心しておかないと」

 優秀な弟子は状況を把握して、じっと機会を窺う。
 さっきは先走ってたが、今回はさすがにおとなしくしてるみたいで一安心だ。
 
「何にせよ臨戦態勢だな」

 レイヴンが言った通りの方角に、鉄格子が見える。
 おそらく子どもたちは鉄格子の向こう側、檻のような物の中にいるみたいだ。
 その前に見張りらしき賊が二名、こっちは目視で確認できた。

 指をパチンと鳴らす。
 俺の合図で結界は揺らぎ、防音結界のみが一旦解かれる。
 同時に奥から話し声が聞こえてきた。

「なぁ、このガキどもはどうするんだぁ?」
「知らねぇよ。それに知らない方が身のためだって言われただろう? 俺らはあの変なヤツにイイって言われるまで見張ってればいいって」
「だってよおー、こんな薄暗いところで何するってんだよ。ガキでもいいから味見させてくれねぇかな?」
「でも薄汚ぇのばっかじゃ……お、コイツはまぁイケそうだ。最近溜まってるし、処理でもさせるか」

 下世話な話にディーの身体が小刻みに震えだしたのか、カタカタと鎧が擦れる音がする。
 獅子の暴発まで間もない様子に、ウルガーが小さく呻くのが聞こえた。
 今にも剣を抜いて飛び出そうとしているディーの暴走を阻止しながら、助けを求めるようにレイヴンへと視線を流していく。
 その視線は、レイヴンから俺へと流れてきた。

 言わんこっちゃねぇ。
 だからといって、まだ事を大きくしたくねぇんだよな。
 こんなところで派手に戦って、生き埋めになるのはごめんだ。
 顎で奥を指し示し、レイヴンへ合図を送る。
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