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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子
291.師弟の絆<レイヴン視点>
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「魔法使いは身体を鍛えれば終わりって訳でもねぇ。言ってること、分かるだろ?」
「テオがもがいてるだなんて。でも、俺がその努力の結果を手にしてしまったら……」
真剣な表情で真面目なことを言われると、どうしていいのか分からない。
テオを見つめたまま、固まってしまった。
目の前の魔塔主さまが一生懸命考えた、大切なものなのに。
もがいて、足掻いて生み出した努力の結晶を、未熟な弟子が受け取ったりできない。
俺を窺うように首を傾げられたから、無理な気持ちを伝えようと、ブンブン首を振った。
「いいに決まってるだろ? 格好悪いから、いちいち言うつもりじゃなかったのによ。レイちゃんってば勘違いしてくれるからなァ? 俺がこーんなに真面目に考えてたってのに」
「う……それとこれとは。浮気だなんて思ったことは謝ります」
おどけて言われたので、自分の勘違いで振り回してしまったことは謝罪する。
でも、だとしたら。
大好きな魔法よりも、俺のことを考えてくれているってことで。
申し訳ないと思う気持ちと、嬉しい気持ちが、心の中でせめぎ合う。
「でも、テオの中で。俺は教える価値のある存在だと思われているのなら……凄く、嬉しいです」
言葉で伝えようと思っているのに、別のものがこみ上げてきた。
熱い思いで、瞳が潤んでくるのが分かる。
「ぁ……ど、どうしよう……」
感極まってしまって。
目尻からほろりと、涙が流れた。
俺が急に泣き出してしまったから、テオを困惑させてしまったみたいだ。
苦笑しながら俺の頬に優しくそっと触れて、指先で涙を拭ってくれる。
「なんで泣くんだよ。泣くほど嬉しいか? よくある話じゃねぇの、こんなの」
「こんなのじゃ、済まない話です。弟子としても、俺のことを大切にしてくれて。信用されているのは分かっていましたけど、本当に嬉しくて……」
俺個人のことを気に入ってくれているだけじゃなく、魔法使いとしても信用してくれてるのは、素直に嬉しい。
肩書上だけじゃなくて、心の底から信頼されているんだって思ったら。
未熟だけれど、頑張ろうという気持ちになれる。
「そうか。そりゃあ良かった。じゃあ、完成したらちゃんと受け取れよ?」
「……はい。でも、すぐにじゃなくていいですから。俺ももっと、勉強したいから。テオにもっともっと、認めてもらいたいし。テオが一人前だと認めてくれて、肩を並べてもいいって、思ってくれた時に――」
まだまだだけど、それでもテオが認めてくれるなら。
自信はないけど、今、できる限りテオの気持ちに答えないと、逆に失礼だ。
流れる涙を手の甲で拭って、笑いかけた。
テオは俺をじっと見つめてから、目元をやわらげる。
俺をからかうような笑顔じゃなくって、時々見せてくれる優しい顔だ。
「ありがとう、ございます。俺、もっと頑張りますから……」
「頑張りすぎなくてもいいけどよ。俺の優しさに感謝してくれたなら、ご褒美くれてもいいんだぞ?」
「またそういうことを……」
すぐにいつもの飄々としたテオに戻ってしまったので、少し残念だけど。
俺から目線を外したし、もしかして照れ隠しかな?
たまには気持ちを積極的に伝えてみようと、テオのシャツを掴んで引き寄せる。
目の前の大好きな人への気持ちを込めて、ふわりと唇を合わせた。
「……今はこれで」
「そうか。じゃあ、完成したら何をしてくれるのか楽しみにしておくか」
額と額を合わせて二人で笑い合う。
いつもだったら、このあと強引に迫られたりするのに。
今日のテオは、優しかった。
+++
この後も二人で魔法について話し合ったり、他愛のない話を語り合ったりして過ごした。
テオと一緒にいられる穏やかな時間が、ずっと流れてくれればいいのにな。
師弟として、また絆が深まったんだと。
良い方向へ考えることにした。
「テオがもがいてるだなんて。でも、俺がその努力の結果を手にしてしまったら……」
真剣な表情で真面目なことを言われると、どうしていいのか分からない。
テオを見つめたまま、固まってしまった。
目の前の魔塔主さまが一生懸命考えた、大切なものなのに。
もがいて、足掻いて生み出した努力の結晶を、未熟な弟子が受け取ったりできない。
俺を窺うように首を傾げられたから、無理な気持ちを伝えようと、ブンブン首を振った。
「いいに決まってるだろ? 格好悪いから、いちいち言うつもりじゃなかったのによ。レイちゃんってば勘違いしてくれるからなァ? 俺がこーんなに真面目に考えてたってのに」
「う……それとこれとは。浮気だなんて思ったことは謝ります」
おどけて言われたので、自分の勘違いで振り回してしまったことは謝罪する。
でも、だとしたら。
大好きな魔法よりも、俺のことを考えてくれているってことで。
申し訳ないと思う気持ちと、嬉しい気持ちが、心の中でせめぎ合う。
「でも、テオの中で。俺は教える価値のある存在だと思われているのなら……凄く、嬉しいです」
言葉で伝えようと思っているのに、別のものがこみ上げてきた。
熱い思いで、瞳が潤んでくるのが分かる。
「ぁ……ど、どうしよう……」
感極まってしまって。
目尻からほろりと、涙が流れた。
俺が急に泣き出してしまったから、テオを困惑させてしまったみたいだ。
苦笑しながら俺の頬に優しくそっと触れて、指先で涙を拭ってくれる。
「なんで泣くんだよ。泣くほど嬉しいか? よくある話じゃねぇの、こんなの」
「こんなのじゃ、済まない話です。弟子としても、俺のことを大切にしてくれて。信用されているのは分かっていましたけど、本当に嬉しくて……」
俺個人のことを気に入ってくれているだけじゃなく、魔法使いとしても信用してくれてるのは、素直に嬉しい。
肩書上だけじゃなくて、心の底から信頼されているんだって思ったら。
未熟だけれど、頑張ろうという気持ちになれる。
「そうか。そりゃあ良かった。じゃあ、完成したらちゃんと受け取れよ?」
「……はい。でも、すぐにじゃなくていいですから。俺ももっと、勉強したいから。テオにもっともっと、認めてもらいたいし。テオが一人前だと認めてくれて、肩を並べてもいいって、思ってくれた時に――」
まだまだだけど、それでもテオが認めてくれるなら。
自信はないけど、今、できる限りテオの気持ちに答えないと、逆に失礼だ。
流れる涙を手の甲で拭って、笑いかけた。
テオは俺をじっと見つめてから、目元をやわらげる。
俺をからかうような笑顔じゃなくって、時々見せてくれる優しい顔だ。
「ありがとう、ございます。俺、もっと頑張りますから……」
「頑張りすぎなくてもいいけどよ。俺の優しさに感謝してくれたなら、ご褒美くれてもいいんだぞ?」
「またそういうことを……」
すぐにいつもの飄々としたテオに戻ってしまったので、少し残念だけど。
俺から目線を外したし、もしかして照れ隠しかな?
たまには気持ちを積極的に伝えてみようと、テオのシャツを掴んで引き寄せる。
目の前の大好きな人への気持ちを込めて、ふわりと唇を合わせた。
「……今はこれで」
「そうか。じゃあ、完成したら何をしてくれるのか楽しみにしておくか」
額と額を合わせて二人で笑い合う。
いつもだったら、このあと強引に迫られたりするのに。
今日のテオは、優しかった。
+++
この後も二人で魔法について話し合ったり、他愛のない話を語り合ったりして過ごした。
テオと一緒にいられる穏やかな時間が、ずっと流れてくれればいいのにな。
師弟として、また絆が深まったんだと。
良い方向へ考えることにした。
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