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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子
284.もっと素直になればいい
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レイヴンは諦めたような表情の中に、辛そうな表情を隠してやがる。
そんなに真剣に考えるようなもんでもないってのに。
遠慮に遠慮を重ねた結果、なんで自爆してんだよ。
俺に浮気してるかどうかを聞けないできないくらいに、悶々としてたってことか?
「なぁ、そんなに辛いことか? 普通に言えばいいじゃねぇか。寂しかったって」
「……テオが取り組んでいることが大切なことだって分かっているのに、ですか? そんな子どもじみた感情で邪魔をしたくありませんし……」
「なんだ、浮気してるって思ってたんじゃねぇの? してねぇけどさ」
「それは……テオを見てれば分かります。別にしたところでとやかく言うつもりはありませんけど」
「嘘つけ。誰かと仲良しこよしでいちゃついてんのは嫌だって、言ってた癖によ」
レイヴンの言い分を明るく笑い飛ばしてから、改めて両腕を背中に回して強めに抱きしめる。
可愛くて厄介な弟子は驚いた顔をして、おずおずと俺の背中に自分の両手を回してきた。
ソファーに寝転んだ体勢のまま、暫く安心させるように体温を分けてやる。
本当はこのまま流れでヤっちまおうとしてたのに。
自分で自分を追い詰めるレイヴンを見ていたら揶揄う気持ちより、安心させたい気持ちが勝っちまった。
困惑していたレイヴンの呼吸が安定して規則正しい速度となり、肌越しに伝わってくる。
どうやら安心してくれたみたいだな。
「悪かったな」
不安にさせたい訳じゃねぇのにな。
レイヴンは甘え下手だけじゃなく、迷惑をかけまいと自分の気持ちを抑え込みすぎるところがあるからな。
俺も落ち込んでるレイヴンを無理やり襲う趣味はねぇし。
無理やりするのも嫌いじゃねぇが、今じゃねぇ。
しっかし一応謝ってみたってのに、反応されないと焦れてくるな。
そんなに俺が謝るとおかしいか?
「なんだよ……レイちゃんが色々ヤキモキしてくれるのは可愛いが、別に辛い思いをさせたい訳じゃねぇし。お楽しみを取っておこうと思っただけだったのによ」
「……いえ、俺が変な態度を取ったからいけなかったんですよね。素直になれなくて、ごめんなさい。俺……何かちょっとテオが移ってきてるのかも」
俺が移る? 謎の言葉に少し身体を離して、真意を問おうと声をかける。
「なんだそりゃ?」
俺の言葉を聞いて、レイヴンは少しはにかんだ表情を向けてきた。
「何か頻繁にテオに触れられてないと寂しい、みたいな? 別に毎日その……して欲しいとか、そういう訳じゃないですからね? そこまでじゃないので、がっつかれても困りますけど」
「……そうか。俺も作業に没頭すると時間を忘れることもあるからなァ。レイちゃんを普段より構えてなかったとは、俺らしくねぇ。ダメだな。これは反省してずっと構ってやらねぇといけねぇな」
少々苦い表情を浮かべてみせると、レイヴンが苦笑する。
「だから、そこまでしなくていいんですってば。もう、そんな顔しないでくださいよ。俺がどんどん追い込まれていくから」
レイちゃんが、こんなに寂しがってくれてたとは。
嬉しくてにやついちまうな。
そんなに俺のことが好きってことか?
レイヴンは俺の笑い顔を見上げて、かあっと頬を赤く染める。
「なぁ、もっと素直なレイが見たい」
「またそういうお強請りですか? だいぶ白状したのに……」
「いいだろ? 今日は照れてるレイを可愛がりたい気分なんだよ」
「えぇ……もうだいぶ恥ずかしくて死にそうなのに。まだ言います?」
「素直さはまだまだ足りねぇ。俺にして欲しいこと、あるだろう?」
可愛いレイに甘えるように、耳元で優しく囁く。
レイヴンは返事の代わりに、腕に力を込めて、ぎゅうっと抱きついてきた。
「じゃあ……寂しかった分、俺のことを甘やかしてくれますか?」
「あぁ。たっぷり甘やかして、さっき食ったケーキより甘い時間にしてやるよ」
「うわぁ……甘そう。望むところです」
額と額をコツンと合わせると、二人で笑いあう。
そしてどちらからともなく、自然と唇を合わせた。
そんなに真剣に考えるようなもんでもないってのに。
遠慮に遠慮を重ねた結果、なんで自爆してんだよ。
俺に浮気してるかどうかを聞けないできないくらいに、悶々としてたってことか?
「なぁ、そんなに辛いことか? 普通に言えばいいじゃねぇか。寂しかったって」
「……テオが取り組んでいることが大切なことだって分かっているのに、ですか? そんな子どもじみた感情で邪魔をしたくありませんし……」
「なんだ、浮気してるって思ってたんじゃねぇの? してねぇけどさ」
「それは……テオを見てれば分かります。別にしたところでとやかく言うつもりはありませんけど」
「嘘つけ。誰かと仲良しこよしでいちゃついてんのは嫌だって、言ってた癖によ」
レイヴンの言い分を明るく笑い飛ばしてから、改めて両腕を背中に回して強めに抱きしめる。
可愛くて厄介な弟子は驚いた顔をして、おずおずと俺の背中に自分の両手を回してきた。
ソファーに寝転んだ体勢のまま、暫く安心させるように体温を分けてやる。
本当はこのまま流れでヤっちまおうとしてたのに。
自分で自分を追い詰めるレイヴンを見ていたら揶揄う気持ちより、安心させたい気持ちが勝っちまった。
困惑していたレイヴンの呼吸が安定して規則正しい速度となり、肌越しに伝わってくる。
どうやら安心してくれたみたいだな。
「悪かったな」
不安にさせたい訳じゃねぇのにな。
レイヴンは甘え下手だけじゃなく、迷惑をかけまいと自分の気持ちを抑え込みすぎるところがあるからな。
俺も落ち込んでるレイヴンを無理やり襲う趣味はねぇし。
無理やりするのも嫌いじゃねぇが、今じゃねぇ。
しっかし一応謝ってみたってのに、反応されないと焦れてくるな。
そんなに俺が謝るとおかしいか?
「なんだよ……レイちゃんが色々ヤキモキしてくれるのは可愛いが、別に辛い思いをさせたい訳じゃねぇし。お楽しみを取っておこうと思っただけだったのによ」
「……いえ、俺が変な態度を取ったからいけなかったんですよね。素直になれなくて、ごめんなさい。俺……何かちょっとテオが移ってきてるのかも」
俺が移る? 謎の言葉に少し身体を離して、真意を問おうと声をかける。
「なんだそりゃ?」
俺の言葉を聞いて、レイヴンは少しはにかんだ表情を向けてきた。
「何か頻繁にテオに触れられてないと寂しい、みたいな? 別に毎日その……して欲しいとか、そういう訳じゃないですからね? そこまでじゃないので、がっつかれても困りますけど」
「……そうか。俺も作業に没頭すると時間を忘れることもあるからなァ。レイちゃんを普段より構えてなかったとは、俺らしくねぇ。ダメだな。これは反省してずっと構ってやらねぇといけねぇな」
少々苦い表情を浮かべてみせると、レイヴンが苦笑する。
「だから、そこまでしなくていいんですってば。もう、そんな顔しないでくださいよ。俺がどんどん追い込まれていくから」
レイちゃんが、こんなに寂しがってくれてたとは。
嬉しくてにやついちまうな。
そんなに俺のことが好きってことか?
レイヴンは俺の笑い顔を見上げて、かあっと頬を赤く染める。
「なぁ、もっと素直なレイが見たい」
「またそういうお強請りですか? だいぶ白状したのに……」
「いいだろ? 今日は照れてるレイを可愛がりたい気分なんだよ」
「えぇ……もうだいぶ恥ずかしくて死にそうなのに。まだ言います?」
「素直さはまだまだ足りねぇ。俺にして欲しいこと、あるだろう?」
可愛いレイに甘えるように、耳元で優しく囁く。
レイヴンは返事の代わりに、腕に力を込めて、ぎゅうっと抱きついてきた。
「じゃあ……寂しかった分、俺のことを甘やかしてくれますか?」
「あぁ。たっぷり甘やかして、さっき食ったケーキより甘い時間にしてやるよ」
「うわぁ……甘そう。望むところです」
額と額をコツンと合わせると、二人で笑いあう。
そしてどちらからともなく、自然と唇を合わせた。
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