【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

282.圧倒的に不利な弟子

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 顔をレイヴンに近づけると、諦めたように俺をじっと見つめ返してくる。
 俺を睨む瞳は多少妥協へと切り替わり、何がしたいのか、と視線で訴えている。
 顔を近づけるだけで、困った顔してるし、睨むのは照れ隠しって顔に書いてあるんだよなぁ。
 
 柔らかな黒髪に触れながら、戸惑う瞳を遠慮なく更に顔を近づけて覗き込む。
 ここまでくると、俺の吐息すら届く近距離だ。

「ほら、早く白状しねぇと。口塞いじまうぞ?」
「その言い方だと別の意味に捉えられますけど大丈夫ですか? ただでさえ威圧感半端ないのに、俺じゃなかったら悲鳴ですよ、悲鳴」
「レイちゃんだからいいんだよ。な?」
「な? じゃありませんよ、もう……あー……嫌だ、言いたくないー」

 毎回反射的にため息を吐くから、こっちも戯れにレイヴンの着ているシャツを乱していく。
 裾から右手を差しいれると、レイヴンは慌てたように両手を使って、俺の手の動きを止めようとする。
 邪魔される前にさっと両手首を掴み、レイヴンの頭の上でまとめ上げて動きを封じてしまう。
 自由な左手をシャツの中へ遠慮なく差し入れ、ひたひたとお腹を触り、擽るように刺激する。

「も、何して……ひゃっ!」
「何、変な声出してんだよ。ケーキをやたら食べてたわりには相変わらず細いな?」
「今日に限って、なんでちょっかいかけてくるんですか……ぁっ!」

 指が胸の突起を掠めると、分かりやすくピクっと身体を震わせて反応する。
 触れていても強い抵抗をせずに、俺のシャツを掴んで耐えるレイヴンを見ていると、気分も自然と高揚してくる。

 ニィと笑って、口付けた。
 触れた唇はただ触れるだけの優しいもんだ。
 レイヴンはそっと目を開け、困惑したように俺を見上げてくる。
 答えるようにレイヴンの素肌の上で指先を動かすと、唇より指先の動きに反応を返してくる。

「ん……」
「ほら、そろそろ言いたくなっただろ」
「……中途半端に煽るのやめません? どういう、状況……」

 唇は触れるか触れないかの位置で、止めたままだ。
 声色をなるべく優しくして、言うことをきかせるように素肌を撫でる。
 丹念に胸から腹へとゆっくり素肌をなぞると、自然とレイヴンの体温が上がってくる。
 触れるだけでも感じるってのは、敏感でイイところだ。
 
 羞恥心からか、レイヴンは俺から視線を外して息を逃した。

「まだ何もしてねぇんだけど」
「何も、してるでしょう? 触ってるし、近いし……」
「なぁ、レイ……」
「……」

 だんまりを続けるレイヴンの考えてることなんて、丸分かりだ。
 俺に弱みを見せたくないとか、恥ずかしいとか、自分の気持ちを隠そうとしているのは分かってんだよな。
 これだけ好き放題されてるってのに、頑なに言おうとしないのが面白くて、つい虐めたくなる。
 ここまできたら、もう耐えられないって言わせたいしな。
 緩く、優しく、敏感なところはあえて触れずに身体を撫でる。
 
 そこまで快楽を伴う触り方をしてねぇってのに、レイヴンは身体を揺らして無意識で気持ち良い場所へと俺の手を導こうとする。
 一気に追い詰めたくなるのを耐えて、少しずつ、少しずつ。
 シャツを捲って脱がしていく。
 
 レイヴンの両手は、俺に手首を握られているせいでどうしようもできないし、伸し掛かってるから俺から逃れることもできない。

「……はぁ……ここまでしつこいと嫌われますよ?」
「ここまで頑固なのも、どうかと思うがなァ?」
「今更だから、本当に気にしないでください。もう恥ずかしいから」
「俺しか聞いてねぇんだから、言ったほうが楽になれるぞ」
「そんな、尋問みたいに言われましても……」

 意地を張るレイヴンと似たようなやりとりを続けて、どのくらい経ったか分からねぇ。
 だいぶ追い詰めたし、そろそろ諦めて言いそうなもんなのに、まだ粘ってんのがなぁ。
 体勢的にも不利なんだし、素直に言えばいいのによ。
 まともに俺と視線を合わせられねぇってのに、まだ諦めずに必死に言い訳を考えてんだろうな。

 キシ、キシ、とソファーも軋み、レイヴンに今の状況を耳から伝えていく。
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