【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

276.魔塔主のお返し

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 俺が仕込んでた間、うまくやってたらしいな。
 レイヴンとウルガー、それともう一人の騎士が辺りを警戒してるのが見える。
 
 俺も念のため捜索サーチをかけるが、魔物の気配は感じられない。
 もう一人の騎士の気配が捜索サーチに引っかかっただけだな。
 少し離れたところで見張りを続けていることが分かる。
 
 警戒を続けていたレイヴンたちの後ろから近づいて、声をかけた。
 
「お、うまくいったみてぇだな」
「師匠!」

 レイヴンの真後ろに立って、安心させるように頭に手を置いた。
 俺の様子を見た騎士も警戒を解いて、剣を鞘に納める。
 
「一体何をしたんですか?」
「魔物を返してやったんだよ。返還、だな。元の召喚主のところに送ってやった」
「送ってやったって……そんなこと可能なんですか?」
「あぁ。魔物そのものっつーか、魔力マナを逆転させたって言えばいいか。流れを変えた。そもそも大元の魔法陣があるのはココじゃねぇからな」
「なんかテオドール様の言ってることがぶっとんでることしか分かんないですけど、でも良かったです。解決したみたいで」

 簡単に説明すると、レイヴンとウルガーは察してただ頷く。
 まあ、俺にかかれば大したことじゃねぇしな。
 得意げに笑ってやると、レイヴンが苦笑して頷いた。

「それで、師匠の仕込みとやらが成功したんですよね?」
「まぁな。とりあえず大元の魔法陣は確実にぶっ壊れただろうな。飛び火してさらに主も焦げればいいんだけどよ」
「なんですかその危ないヤツ……魔法どころじゃないですよ」
「あのなぁ。お前を殺ろうとしたヤツに同情すんじゃねぇよ。こんなんじゃ全然足りねぇ」

 この程度で俺の気が済まないってのは、分かってるはずなんだがなァ?
 ニィと笑っただけだってのに、ウルガーはわざとらしく己の手で両肩を抱いて、俺からスッと距離を取る。
 レイヴンもおとなしく聞いているが、微妙な顔してるしよ。
 俺の弟子にちょっかいかけたヤツの末路なんて、知ったこっちゃねぇってのに。

「それで、こちらに描かれていた魔法陣は……」
「心配しなくても、もう何も起こらねぇよ。全く……転送まで使ってくるとは面倒なヤツ。人間にできるかも怪しいぜ。裏に人外がいるとしか思えねぇな」
「人外って……師匠。それって……」
「まぁ、魔族やら上位の魔物やら。色々いるだろ。そういう輩が絡んでるんじゃねぇか? まぁ、本人が頭おかしいくらいにキレるヤツだっていう可能性もあるけどな。どちらにしても面倒臭ぇな」

 俺が舌打ちすると、ウルガーが、マジですか……、と呟く。
 隣の騎士も事の重大さに血の気が引いたのか、黙り込む。
 
「魔族……」
 
 おいおい、レイちゃんまで固まっちまって。
 魔族と一口で言っても、人間と同じように共闘関係の者と敵対関係の者もいる。
 大半は愉快犯で、退屈を紛らわせるために時々ちょっかいかけてくるんだよな。
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